設備保全の考え方|設備の見える化、自主メンテナンスの重要性も解説

2021.06.30

設備保全の考え方|設備の見える化、自主メンテナンスの重要性も解説

設備保全の考え方|設備の見える化、自主メンテナンスの重要性も解説

過去の記事(「設備保全とは?保守メンテナンスとの違い、保全の種類、目的、IoT活用を解説」、「計画的な設備保全の進め方と設備管理台帳で管理すべき項目 」)では、設備保全の基礎や目的・台帳管理などについてご紹介しました。今回は、設備保全を難しくしている要因を踏まえながら、弊社がどのような考え方で事後保全から予兆保全へ変える活動を進めてきたのか、弊社のプリント基盤組み立て工程を例にご紹介します。

設備保全を難しくしている要因は、古い設備(※弊社では「高年次設備」と呼称しています)への対応が必要、問題を簡単に早く見つけられない、ソフトウェア制御の進化に落とし穴がある..など、大きく3つあると弊社は考えています。

古い設備への対応が必要

弊社でも、設置から20年から30年以上になる設備を使用しています。理由は言うまでもなく、古い設備で簿価が小さいものを使い続けることでその分、利益も大きくなるため、古い設備を出来るだけ使いこなしていきたいという考え方です。一方で古い設備は新しい設備に比べ、手当も多く必要になります。本コラム記事では、これら高年次設備(=古い設備)への対応を中心にご紹介します。

問題を簡単に早く見つけられない

次に、問題を簡単に早く見つけられないといった点があります。具体的には「対応が遅れて、保全をしようと思った時にはもう手の出しようがない状態だった」といったことがあげられます。

ソフトウェア制御の進化に落とし穴

意外に見落としがちなことですが、新しい設備(加工機)はソフトウェアの制御が非常に進んでいます。一方で、「設備の精度というものは機械的に精度を整えた上で、その補完機能としてソフトウェア制御がある」と弊社は考えています。そのためソフトウェアが進化し特に何も起こっていないように見えても、実は内部で問題が起きているといったことがあるのです。これをどうやって早く知るかが設備保全の課題の一つになっています。

組み立てライン編成と設備導入年の把握

弊社ではまず稼働している設備の実態を把握するため、下図のようにプリント基盤の組み立てライン編成と導入年度を見える形にしました。黒いセルがラインNoを表しており全部で十数ライン、色のついたセルが設備の導入年度になっています。この中で赤塗りになったセルは2000年以前に導入した設備で、20年以上前の設備も、まだかなり多く使っています。これらは古い設備のため、新しい設備に比べると手当て、手を掛けることが非常に多くなっています。

<基盤実装工程のライン編成と製造年>
基盤実装工程のライン編成と製造年

設備のメーカーサポート状況の見える化

そのような中で次に整備したのは、サポートの停止や保守部品の供給停止が一体いつ発生するのか、来年このままラインが存続できるのかといった事も含めて「設備メーカーのサポート状況を見える化」することです。設備メーカーのサポートは一般的にリリース後10年・販売後6年であり、保守部品の供給はサポート停止後に部品が枯渇するまでと言われています。

<ライン別のメーカーサポート状況一覧>
ライン別のメーカーサポート状況一覧

例えば、上図の緑色はいまサポート対応があるところ、黄色はサポートは終了したが保守部品の供給はあるところ、赤色になるともうメーカーサポートは当てに出来ないところ..となっています。上図の青い縦線を現在の位置として、これらを毎月更新することで、いつラインや設備が使えなくなるか、あるいはメーカーサポートが終了した後の対応が社内で出来ているか..といったことを確認するために、このような見える化を行っています。

メーカーサポートが終了した後にやらなければならない事として、予防保全を行って壊れないようにする、そしてメンテナンスの自前化(自主保全)があります。サポート終了後は、まったく設備メーカーに頼ることができないため「故障を起こさない」そして「メンテナンスは自分達で行う」ことが必要になります。

予防保全の充実

<周期別・難易度別の予防保全計画表>
周期別・難易度別の予防保全計画表

従来から設備保全計画は作っていましたが、ここではより具体的に、「いつ」「どのタイミングで」「誰が何をするか」をスケジュール化し、またそのメンテナンスの「難易度」も定義し、難易度に見合った保全員の育成を進めました。

メンテナンスの自前化(自主保全)

<自前の測定による繰り返し実装精度グラフ>
自前の測定による繰り返し実装精度

※CPK = 工程能力指数(Process Capability Index)

サポート終了後は、設備の位置精度が現在どのような状態なのか等、従来メーカーに依頼していた精度測定ができなくなります。そこで弊社では、設備の内部情報から精度を分析できるデータがないか確認し、分析可能な内部情報の取り出しを行った後に、ずれなどを位置精度としてまとめ、下図のように自前で精度測定ができるように変えていきました。

自前メンテナンス効率化のための治具内製

古い設備であることで、従来よりノズル清掃などの頻度が高くなるため、従来の清掃方法では時間がかかり過ぎるといった課題も出てきます。そこで例えばノズル洗浄が一気に自動化できるよう、回転式の台座を自分達で内製し、それを超音波洗浄機と連動させて自動洗浄する、といった仕組みも作りました。

<「メンテナンス効率化」のための治具内製>
「メンテナンス効率化」のための治具内製

※表面拡大スコープ自作(「廃材のハイトゲージ」+「USBカメラ」+「リボルバー回転式治具」)

メンテナンス方法の変更や時間を短くすることはできませんが、このように見逃しがちな「一括で行う」「自動送りにする」といった工夫をすることで、この間に他のメンテナンスを行うといった取り組みも効果的です。

保全技能の知識化(自前メンテナンスの技術伝承)

自前メンテナンスが確立できると、「設備メンテナンスガイド」として手順化し技術伝承を図ります。ただし最近の設備は、従来の匠と言われるベテラン保全員によるメカ的な技能だけでは対応できない事も多いため、例えばソフトウェアの自己診断の見方やログ閲覧画面への入り方など、「匠」という言われる方が苦手とする部分が多いITノウハウも含めて、設備メンテナンスガイドに網羅し、誰でも診断やメンテナンスができる環境を整えました。

<設備メンテナンスガイド(自前メンテナンスの手順書化)>
設備メンテナンスガイド(自前メンテナンスの手順書化)

以上、本コラム記事では設備保全を難しくしている3つの要因の中で、特に古い設備への対応・自前メンテナンスの技術伝承を中心に、弊社がどのような考え方の下に事後保全から予兆保全へ変える活動を進めてきたのかご紹介しました。

「設備保全」や「技術伝承」という分野は、各社独自に試行錯誤をしながら構築していく分野のため、他の会社がどのように保全に取り組んでいるか、ほとんど知る機会がありません。本コラムが貴社の設備保全の効率と効果を高める一助になれば幸いです。

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