工場の見える化とは?目的、見せる化との違い、経営に与える影響、課題、方法・手法を解説

2021.01.12

工場の見える化とは?目的、見せる化との違い、経営に与える影響、課題、方法・手法を解説

工場の見える化とは?目的、見せる化との違い、経営に与える影響、課題、方法・手法を解説

さまざまな定義がなされている工場の「見える化」。ここでは「見せる化」との違いや、見える化の問題点・課題、工場を見える化したその先・次にあるものまで詳しくご紹介します。

工場の見える化とは、複数の書籍・WEBサイトで様々な定義がなされていますが、弊社では、遠藤功氏の著書「みえる化」を参考に、下記4つの見える化をまとめて、工場の「みえる化」や「可視化」と呼称しています。

図:見える化の定義

観える化とは、経営層・部門長を対象にした工場の「みえる化」のことで、個別ではなく、全体を俯瞰して把握することをいいます。
見える化とは、チーム長・課長を対象にした工場の「みえる化」のことで、見る側の意向にかかわらず「目に飛び込んでくる状態」 の「みえる化」です。
視える化とは、ラインリーダーを対象にした工場の「みえる化」のことで、現場で掴んだ事実や数値をさらに突っ込んで解析しながら、より本質や真因を注意深く見ようとする状態の「みえる化」です。

診える化とは、現場エンジニアを対象にした工場の「みえる化」のことで、具体的な問題を特定するためにさらに細部を見ようとする「みえる化」です。

この4つのみえる化のことを、一般的に「見える化」と言われることが多いようですが、弊社ではみえる化(可視化)、観える化、見える化、視える化、診える化という具合に、言葉を使い分けて定義しています。なお、今回のこのコラムでは、混乱を避けるために、4つのみえる化(観える化、見える化、視える化、診える化)のことを「工場の見える化」と表記します。

見せる化とは?

見せる化とは、見たい数値を見ようとするのではなく、目に飛び込んでくるような状態の「工場の見える化」のことです。常に目に飛び込んでくるため、アラートになったり、新しい気づきを得ることができます。

見える化と見せる化の違い

見える化と見せる化の違いは、見える化は「見たい数値を見ようとする意思がある中で、見えるようにすること」が見える化です。対して、見せる化は「見たい数値が常に目に飛び込んでくるようにすること」が見せる化です。見にいく意思があるかないかというのが最大の違いと言えるでしょう。

工場の見える化の目的は、工場内で何かしらの不具合やトラブルが発生した際に、生産を止めるかどうかや今後の対応策をどうするか?の判断をスピードアップすることです。これにより迅速な工場運営、生産体制の構築が可能となります。
さらに、判断・決断が早くなり、ものづくりの改善スピードが早くなり、成功体験を積み重ねることで作業員のモチベーションアップにもつながっていきます。

工場の見える化の目的

工場を見える化することで、企業経営に大きな影響を与えます。その最大の影響が、経営判断のスピードアップ、効率化、正確性の向上です。

工場の見える化により、工場の業績がタイムリーに把握できます。今までは月1回や半年に1回の状況把握だったのが、常時わかるようになり、経営判断がよりやりやすく、かつ、確実になります。今工場で何が起きているかをすぐに確認でき、今後の方針決定に生かすことができます。例えば営業やマーケティングなどの戦略の方針決定にも生かすことができます。

工場の見える化は実現できれば大きなメリット・価値を生み出しますが、当然、そう簡単にできることではありません。工場の見える化でよく発生する問題点や課題を整理してみましょう。

課題1:古い設備からのデータ取得

工場の見える化でよく発生する課題の1つ目は、古い設備からのデータ取得です。古い設備の場合、その設備の様々なデータがデジタル化されていません。そのため、設備にIoTセンサーなどを取り付けてデジタル化する、カメラを設置して画像認識するといったデジタル化のための補強が必要になります。場合によっては設備そのものをデジタル対応している最新の設備に入れ替えるといったことも必要になるでしょう。費用や時間のかかることですので、工場の見える化の大きなネックになります。

課題2:欲しいデータをどう取得するか?

工場の見える化でよく発生する課題の2つ目は、欲しいデータをどう取得するか?です。この課題は場合によっては根深い課題になるケースもあります。

例えば、ある設備の温度が100°Cかどうか?を見える化する場合を考えてみましょう。まずそもそも、本当に温度のデータでいいのか?という問題があります。さらに、温度で良くても100°Cでいいのか?という問題があります。加えて、その100°Cもどの部分が100°Cだったらいいのか?という問題にまで発展します。ある1箇所(ある1点)が100°Cだったらいいのか、複数箇所が100°Cでなければならないのか・・

このように、欲しいデータをどう取得するか?を考えれば考えるほど、そのデータの本質部分(根拠・確証部分)に行き着きます。そのため、「欲しいデータをどう取得するか?」が課題化し、工場の見える化が進まないことが見受けられます。

課題3:各部門でKPIの計算方法が異なる

工場の見える化では、様々な数値(KPI)を見える化しますが。同じKPIを見えるようにしても、その計算方法(数値の根拠)が異なるケースがあります。例えば、ロスコスト(不良発生時のコスト)の場合、部門Aは材料費だけでロスコストを計算し、部門Bは材料費と加工費ででロスコストを計算している、といった場合です。

この場合、同じKPI(ロスコスト)ですが、計算方法が異なります。その結果数値が異なるため、何が正しいのか判断できなくなります。

課題4:見える化したときにいろんな人がいろんなことをいい収集がつかない

工場の見える化を推進する場合、様々な部門の様々な立場の方から、様々な意見や要望がでてきます。その結果、何を見える化してどうしたいのかがわからなくなります。そして、せっかく見える化したKPIも、なぜこのKPIが必要だったのか?などが分からなくなり、誰も見なくなるというような結果になってしまいます。

だからこそ、弊社では、工場の見える化を「4つ」に分解し、要望や意見を整理できるようにしています。

工場の見える化の方法・手法は様々ありますが、大きく分けると「工場の生産設備を見える化する方法」と「工場の人の作業を見える化する方法」の2つに区別できます。

工場の生産設備を見える化する方法

工場の生産設備を見える化するには、既に稼働している様々な設備の数値を取得できるようにしなければなりません。その具体的な手法・方法としては、(1)生産設備にセンサーを取り付けて数値化する、(2)生産設備にカメラを取り付けてカメラの画像を自動認識し数値化する、(3)生産設備から出されるログから数値を取得するといった、3つの方法が主流となっています。

人の作業を見える化する方法

工場の人の作業を見える化するには、工場で働いている人の作業時間や作業内容を見える化しなければなりません。その具体的な手法・方法としては、製造日報や各種チェックリストの紙データを電子化する(タブレットの活用、音声入力システムの活用など)といった方法があります。これにより、人がどれだけ効率よく働いているかを見える化する(作業時間の見える化)ことができます。

ただし、効率よく働いけばいいというわけでもありません。やはり効率よく働いた上で、製品の出来ばえ・出来高を高める必要もあります。そのため、人の作業効率の見える化と製品の出来高・出来栄えの見える化が必要になります。

工場の見える化には、ご紹介した通り「4つのみえる化」があり、さらに設備や人の見える化をしなければなりません。非常に困難な業務になりますが、成功するためのポイントが3つありますのでご紹介しましょう。

良品条件からKPIを決める

工場の見える化の成功ポイントの1つ目は、「良品条件からKPIを決める」です。工場の見える化は見たい数値(KPI)を決めなければなりません。そのKPIは「良品条件」から考えて決めることが重要です。良品条件とは、「この数値さえチェックしておけば不良品ができるはずがない」という条件のことです。この良品条件をベースにKPIを決めることで工場の見える化の効果は飛躍的に高まります。

数値の取得方法を何度も確認する

良品条件から工場の見える化のKPIを策定しても、その数値の取得方法がおざなりでは意味がありません。何度も何度もデータの取得方法を確認し、確証を得ながらデータの取得方法を検証しましょう。そうしなければ、良品条件はクリアしているのに不良品が減らないというような事態に陥ってしまいます。

工場の今が見えるようにタイムリーに取得できるようにする

工場の見える化は、判断を効率化し正確性を高めることになります。そのため、工場の「今」を見えるようにする必要があります。そのためには、タイムリーであることが最低条件となります。だからこそ、人による集計作業ではなく、IoTを駆使した集計が重要になります。

それでは、工場の見える化について実際に成功している事例をご紹介しましょう。富士フイルムマニュファクチャリングの成功事例です。この成功事例では、“良品条件”を探求し続ける取り組みについて詳しく解説しています。

工場の見える化について詳しく解説しましたが、工場を見える化すると、その先・その次にあるものは何でしょうか?弊社では(1)従業員のモチベーションが高くなる、(2)仕事に対するやりがいが高くなる、(3)経営判断が早くなり会社の行政が上がるといった未来があると考えています。

見える化が現場で回るようになる仕組み

工場を見える化することで、新しい気付き(新しい課題)が生まれます。その結果、課題を解決するための思考・対話・知恵が生まれ、改善の行動につながっていきます。そして実際に課題が解決すると成功体験につながり、現場力が向上します。仕事に対してのやりがいが生まれ、モチベーションアップにもつながっていきます。

さらに、やればやるほど、経営判断も早くなり、会社の業績や利益が向上することも想定できます。このように、工場の見える化は、様々な課題や初期投資も必要ですが、中長期的に見れば大きな価値を生み出す工場の改善業務の1つであると言えます。

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