違いを作って業容拡大を図る 東洋印刷の成長戦略

「経営セミナー2019」を東京で開催

〜 印刷業から、顧客支援業への業態転換を目指して 〜

2020年1月14日

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主催者挨拶を行なうFFGS藤嶋常務

富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社(社長:辻󠄀重紀、以下FFGS)は、「違いを作って業容拡大を図る 東洋印刷の成長戦略 ~印刷業から、顧客支援業への業態変換を目指して~」をテーマに、「経営セミナー2019」を11月21日富士フイルム東京ミッドタウン本社にて開催した。セミナーは2部構成で、当日は約200名が参加した。
FFGSでは、印刷業経営の参考にしていただきたいとの思いから、印刷業の経営者様に自ら取り組まれた経験に基づいてお話いただくセミナーを2010年より毎年開催しており、今年は、東洋印刷株式会社 代表取締役社長 角高紀(すみ たかき)氏を講師に迎えて実施した。
角氏は他の印刷会社にSEとして勤務後、東洋印刷株式会社(北海道・帯広市)に入社。東洋印刷は昭和29年創立、昭和39年に4社の印刷会社が合併して設立され、チラシを主力商品としている。帯広本社および札幌支社・釧路支店・旭川支店・東京営業所の計5つの営業拠点を持ち、売上高は32億円(2019年3月期)、社員数は184名である。

第1部:角社長様ご講演

現在の6主要事業

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東洋印刷株式会社 角社長

最初に、6つの主要事業が紹介された。東洋印刷はスーパーマーケットなど流通小売業を主要顧客としていることから「セールス・プロモーション事業」、中でもMD(マーチャンダイジング)計画、チラシの紙面分析・提案・効果測定分析、セールの検証結果、商圏分析などを含む顧客の社内会議用資料を作成・提出する「販売促進支援サービス」に長年注力してきており、帯広市や札幌市で行われるイベントの企画・運営、看板・店舗デザイン、ノベルティ・グッズ企画などのサービスも提供している。
また、「ビジネスインテリジェンス(BI)事業」にも力を入れている。BIとはデータに基づいてビジネス上の判断をすることで、この事業ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やビッグデータ分析、AIプロモーションなどに関わるサービスを開発・提供している。
「TONxTON事業」では、帯広・釧路・旭川・札幌の4エリアで展開する地域ポータルサイト「TONxTON」を運営している。「TONxTON」を通じて各地域のお店や観光地、イベントなどお出かけ情報や、スーパーなどのチラシ情報を発信している。現在、「TONxTONマーケット」(十勝の名産品物販サイト)、「TONxTON JOB」(求人マッチングサイト)など派生サービスにも取り組んでいる。
また、スマートフォンアプリの開発などを行なう「システム開発事業」、Webサイトやドローンを使って映像などを制作する「デジタルメディア事業」、チラシや会社案内、オンデマンド印刷などを提供する「印刷事業」などが現在の主要事業である。

新規事業を通じた変革と成長

東洋印刷の、印刷を除く新規事業の売上高(2018年度)は3億円であった。また、新規事業のお陰で守ることができた・増えた印刷事業の売上(=新規事業による上乗せ効果)は10億円であった。もし新規事業に取り組んでいなければ、現在の売上は半分以下(約12〜13億円)だと推測される。
変革の取り組みは、角氏入社以前の1995年からスタートしていた。そのきっかけは、当時会社で一番の売上(年商の12%)を占める顧客を失ったことであった。競合の提案に対し、当時の東洋印刷では対抗できなかったためである。
しかし、同社専務取締役 営業統括本部長 札幌支社長 井上雅之氏(当時は一般社員)が担当となり、「アウトソーシング」(外注)によるデザイン品質向上、工場部門の現状認識力を高めて営業との一体感を醸成する「顧客志向」、顧客に深く入り込み競合の提案に一つ一つ対抗する「ミート戦略」という3つの施策を通じ、2年ほど掛けてその顧客を取り返した。
角氏が2001年に入社した当時、東洋印刷は印刷売上100%、役員10名の部門間に高い壁のある会社であった。角氏はCS(カスタマー・ソリューション)室を自ら社長に提言し立ち上げることで、会社の変革をスタートした。
CS室は「デジタル技術を活用した業務改革」、Webサイトなど「紙媒体に捉われない新商品・サービスの開発」、主要顧客である「流通小売業向けの販促提案強化」といった取り組みを通じて変革を牽引した。また自社独自商品(自社開発媒体)の開発も行なった。2003年、50周年事業として「帯広の病院」(10万部)を発行。これは、帯広市とその近郊にある約140件の病院情報が掲載された冊子で、印刷費ではない新しい方法で収入を得るための初めての試みであった。発行に当たっては、医療広告の規制や医師会の反対など様々な障壁にぶつかった。しかし、部門を越えて全社一丸となって障壁に立ち向かいそして乗り越えたことで、社内の風土改革や営業の意識改革、冊子を全戸に配布するためのポスティング網構築など、多くのことを成し遂げることができた。この冊子は地元の方々にも好評で、現在は第5版が出ており電子ブックでも閲覧可能である。
2007年には地域ポータルサイト「TONxTON」のプロジェクトをスタート。「TONxTON」は、大手競合による電子チラシサービスの地元への侵食を食い止める役割も果たした。また、2009年、札幌の商業施設で週末のイベントを手がけたことをきっかけに総合イベント企画・実行企業への展開も進めている。

東洋印刷の特徴と強み、社内改善、次の成長戦略

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東洋印刷の特徴・強みとして、先に触れた地域ポータルサイト「TONxTON」や販売促進支援サービス、十勝エリア全戸に配布できるポスティング網などに加えて、「印刷物を取りに行かない、自分たちで仕事をつくる風土」も挙げられる。
営業は、新規顧客に最初は印刷の話はしない。信頼関係ができてから印刷の話をすることで、価格競争を回避している。また、主要顧客から信用を得るために、社長・専務が先頭に立って積極的に顧客に入り込み関係を構築する。また、営業・企画・制作が連携する「チーム制」を通じて、現場レベルでも関係の構築・強化そして仕事作りを行っている。
社内の業務改善も行なっており、3年ほど前に基幹システムを更新することで、販売価格・見積もり価格を標準化することができた。また、工程進捗状況の共有と省力化、実際原価との連動による利益管理も実現できた。
印刷物の制作環境では、富士フイルムのWebポータルシステムXMF Remoteを『TOS(Toyo Online System)』という独自名称で運用・提供している。全ジョブ運用することで校正紙・移動時間・待ち時間などのロスが減少し、社員の働き方改革・収益改善につながっている。また、校了前の印刷用PDFをアップロードすることで校了後のトラブルが減少するなど、品質向上も実現した。
『TOS』は顧客への提案における差別化ポイントのひとつでもある。例えば、顧客に担当者が複数いる場合、校正の進捗状況などを一元的に管理するのが難しい。『TOS』がこの課題を解決し担当者の業務効率を向上できることを、提案書に盛り込んでいる。
東洋印刷では、将来に向けて『3本の事業の柱作り』を進めている。1本目の柱は「既存事業」、2本目は「人材ビジネス」、そして3本目はデータ解析など「販促に関わるサービス」である。あわせて、「考え方の見える化」や「経営の状態の見える化」を通じて、「見える化浸透による全員参加型経営」にも取り組んでいる。

第2部:経営戦略実践編「東洋印刷の強さを探る」

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第2部では、FFGS営業本部 部長 中林鉄治を進行役として、井上氏や社員のインタビュー動画を交えながら「東洋印刷の強みを探る」というテーマで引き続き角氏に話を伺った。強みのひとつに「顧客との強い信頼関係」が挙げられる。東洋印刷では、顧客に入り込んで競合の提案状況なども調査、そこに新たな視点を加える「ミート戦略」で信頼関係を構築している。その後、チーム制でイベントやアプリ開発、店内改装・装飾、基幹システムの構築など様々なサービスを提供することで、さらに信頼関係を深めている。

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東洋印刷株式会社 井上専務

また、「違いを作る 高い戦略性」も強みである。井上氏によれば、戦略とはできるだけ多くの違いを作ること、その際、競合が真似できない「面白い要素」、東洋印刷の場合は「TONxTON」などを意識的に加えることである。また、戦略立案・実践の上で一番重視することは、ライバルよりも早く新しい情報をキャッチすることである。
他にも、「新規事業を開発する力」「社員の力を生かす経営」といった観点からも東洋印刷の強さが示された。最後に、セミナー会場に来場されていた井上氏から「またこうした形で取り組みや成果を披露することを励みに頑張りたい」との挨拶があり、セミナーを終了した。

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