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近年注目される新たなデータ基盤、
オブジェクトストレージとは?

近年、肥大化するデータ保管の解決策の一つとして「オブジェクトストレージ」が注目を集めています。背景には、多くのビジネスパーソンが従来使ってきたファイルストレージと比べ、オブジェクトストレージはデータの急増に対応した低コストで柔軟な拡張がしやすいこと、これまでデータとして活用しきれなかった、文章や画像、各種ログなどの非構造化データの利活用に適していることなどがあります。そこで、今後のデータ基盤として期待されるオブジェクトストレージとはどんなものなのか、特徴や主な使い方などを解説します。

「ディレクトリ+ファイル」の考えを使わずデータを管理

オブジェクトストレージはユーザーの立場からはあまりなじみがないと思いますが、実は、普段私たちがSNSや動画・画像共有サービスにアップロードしたデータの保存先として、すでによく使われているストレージ基盤です。オブジェクトストレージは、業務などで使われるファイルストレージとは異なり、データをメタデータと結合した「オブジェクト」の形で管理することからその名前がつけられています。具体的な特徴を見ていきましょう。

まず1つが、データの管理法です。ファイルサーバやNAS(Network Attached Storage)などのファイルストレージでは、階層構造のディレクトリでデータを管理するファイルシステム*1が使用されており、個々のデータは「ディレクトリ+ファイル名」で識別されます。それに対しオブジェクトストレージでは、階層構造を持たずフラットな空間にデータを格納し、個々のデータに固有のIDを付与することで識別するシンプルな管理方法です。

そして、このアーキテクチャの違いにより、ストレージの格納場所にデータが縛られないことも特徴です。数多くあるファイルシステムのいずれも、システム全体でのファイル数の上限が決まっています。しかも、これらの上限を増やすとファイル/ディレクトリ管理のための情報量が増え、実効容量やパフォーマンスに悪影響を及ぼすジレンマもあります。一方オブジェクトストレージでは、各データはIDと紐づいており、ユーザーはどこに保存されているかを意識する必要がなく、格納場所が変わってもデータを呼び出すことができます。そのためデータの分散保存がしやすいのも特徴です。

さらに、検索性の高さも挙げられます。カスタマイズ可能なメタデータをデータに豊富に付与でき、多様な観点でデータを探すことができます。

  • *1 記録装置(HDDなど)上にデータを保存・管理するためにOSが提供する機能

拡張性が高く、容量あたりの価格も安価

「ファイルシステム」や「ディレクトリ」に縛られないため、オブジェクトストレージはデータ管理の制約が少なく、原理上はデータの大きさにもデータの数にも制限はありません。オブジェクトストレージとして市場に提供されている主な製品をみても、優れた拡張性をメリットの1つとして挙げ、ハードウェアを増設することによりストレージ容量を無制限に拡張できるとしています。

オブジェクトストレージは、従来のファイルストレージのようにディレクトリに依存せずデータを管理する

エンタープライズ向けの他のストレージでは、記録媒体がSSDへとシフトしつつありますが、そのような中でオブジェクトストレージには今でもHDDが主流です。容量あたりのコストが比較的安価であるため、大量のデータを消去せずに蓄積し続けることができ、将来にわたり大量データの利活用を、コストを抑制しながら行うことができます。

Webとの親和性に優れ、クラウドにもオンプレにもデータを置ける

オブジェクトストレージのデータを利用する際には、前述のように各データ固有のIDを用います。オブジェクトストレージでは、IDをURI(Uniform Resource Identifier)*2の形で記述し、さらに通常はREST API*3によってHTTP*4でアクセスするため、Webとの親和性が極めて高いことも特徴です。そしてこの特徴から、データがオンプレミス環境にあろうとクラウド上にあろうと、ほとんど変わらず利用できるようになります。

例えば、オブジェクトストレージの市場を作り出した存在とされ、今もオブジェクトストレージの代表格である「Amazon Simple Storage Service(S3)」は、パブリッククラウドサービスとして提供されています。そして、このS3で使われるAPIが事実上の業界標準のような位置付けとなっており、オンプレミス環境向けのオブジェクトストレージ製品にも「S3 API互換」を謳うものが少なくありません(ただし、その互換性が完全とは限らないので注意が必要)。

この互換性があるおかげで、Amazon S3への接続を前提として作られたアプリケーションを、プログラムにほとんど手を加えることなく、オンプレミス環境のオブジェクトストレージでも利用できるというわけです。こうした製品・サービス間の互換性によって、場所を問わずにデータを置くことが可能になり、ビジネス環境の変化などに伴いデータの置き場所をクラウドからオンプレへ、あるいはその逆へ移行することも比較的容易に行えます。

Amazon S3 API互換のオブジェクトストレージでは、Amazon S3用に作成したプログラムを活用してデータアクセスできる
ファイルストレージとオブジェクトストレージの主な違い
  • *2 Web上にあるリソースを識別するための文字列。正確には異なるが、Webサイトを一意に特定するURLと似たようなものと想像するとよい
  • *3 APIの一種。特定のパラメータをつけてURIにアクセスしてデータの取得や更新、削除などを行うことができる
  • *4 Webサーバと通信して情報のやり取りをするためのプロトコル

非構造化データの増加が普及を後押し

オブジェクトストレージが注目されている背景としては、多くの企業における非構造化データの急増が挙げられます。非構造化データ、すなわち文書や画像、各種ログやバックアップ、アーカイブといった各種データは、これまでの技術ではあまり活用できていなかったものです。ところが近年では、ビッグデータ分析、人工知能(AI)などといった技術が急速に発展・普及し、その活用の道が急に開けてきました。さらにはIoTを活用し、より多くのデータを集めることも行われるようになってきています。

こうした流れを受けて、多種多様なデータを分析・活用するためのストレージとして、あるいは将来的な活用に備え保管しておく場所として、容量の制限がなくコストパフォーマンスに優れたオブジェクトストレージへのニーズが高まっているのです。また、近年普及してきた先進的な分析ツールはWebやクラウドなどとの親和性が高いものがほとんどですから、その点も含めて注目が集まっています。

もちろんストレージはデータの器であり、その活用方法はさまざまです。オブジェクトストレージも、前述したように幅広い目的で利用されています。その代表的なユースケースとしては、頻繁にアクセスして活用することを主とした用途と、どちらかというとアクセス頻度が少なめで保管することに主眼を置いた用途に大別できます。この目的次第でストレージの要件にも違いが出てくるので、選定の際には要件に見合った選択が重要です。

データ分析の基盤として

前者の使い方の代表といえるのが、ビッグデータ分析に供するデータ基盤です。分析システムを本格的に立ち上げる前のPoC(Proof of Concept:概念実証)段階では、構築や変更を迅速に行えるよう、クラウドサービスで提供されているツールを組み合わせて作ることが多いでしょう。このとき組み合わせるオブジェクトストレージも、同じクラウドプラットフォーム上のものを選ぶのが効果的です。

ただし、オブジェクトストレージのクラウドサービスでは、データ保管量に応じた課金に加え、データのリクエストや外部へのデータ送信などにも課金が発生することが多く、アクセス頻度や外部への転送が多い場合には割高になりがちです。この課金を避けるため、本格的な分析基盤を立ち上げる際にオンプレミス環境へ全面的に移すケースも少なくありません。

また、とりわけ重要な機密データや個人情報を扱う場合などは、特に厳しいセキュリティポリシーを適用しなければならず、全てを自社保有の基盤で管理するのが主流となります。例えば製薬会社の研究開発データなどは、ビジネス上の重要機密でもあるうえに、患者の治験データなど個人情報に属するデータも含まれることが多く、厳重な管理が不可欠で、クラウドサービスのような社外の環境を利用することは困難といえるでしょう。

長期保管の用途として

一方、長期保管を主目的とする使い方としては、ログやコンテンツなどのアーカイブ、法令などにより長期保存が求められるデータ、別システムのデータバックアップや災害対策(DR)などが考えられます。クラウドとオンプレミスのどちらが有利かは、保管する目的、期間や容量、ユーザー自身のIT環境やセキュリティポリシーなど、さまざまな要因が関係するため、ケースバイケースで検討することになるでしょう。

ちなみに、クラウドとオンプレミスとのハイブリッド環境を構築することも、あまり難しいことではありません。またオンプレミス環境においても、製品やそのオプションの組み合わせにより、コスト効率を重視した構成や、パフォーマンスもある程度重視した構成など、幅を持った選択肢が考えられます。具体的な内容については、知識や経験の豊富なシステムインテグレーターなどと相談するのがよいでしょう。

オブジェクトストレージとLTOテープを連携する活用ソリューション

FUJIFILM オブジェクト アーカイブ

クラウドやオブジェクトストレージとS3互換APIでLTOテープを連携するソフトウエア。