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日本

導入事例

松山笠置記念心臓血管病院 : 愛媛県松山市

導入製品 : Open-Karte AD
病院長 : 笠置 康先生

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

松山笠置記念心臓血管病院(病院長 笠置 康)は、道後温泉本館や松山城など歴史と文化が色濃く残り、「えひめ国体2017」が開催された愛媛県松山市にある急性期病院です。今回は2016年3月から運用開始された電子カルテシステム「Open-Karte AD」について、笠置病院長をはじめスタッフの方々にお話をお聞きしました。

MEDIX Vol.66(2017年4月発行)*1

2020年を見据え院内のICT化を進める松山笠置記念心臓血管病院を訪ねて

  • *1 文中の社名を、現社名に変更し掲載しております。

はじめに病院の概要と電子カルテシステム導入のきっかけについて
笠置病院長および吉田事務長にお話を伺いました。

病院の概要と特長についてお聞かせください。

笠置病院長 当院は明治22年に私の曾祖父である笠置 達道がここ松山市に内科を開業したのが始まりで、今年で128年目を迎えます。平成元年に胸部心臓血管外科手術を行う病院として現在の「松山笠置記念心臓血管病院」へ改称しました。また、私は漏斗胸・胸郭変形の治療に長年取り組んでおり、これまでに数多くの患者様を治療してきました。さらに当院は中予地区の輪番制救急病院として8日に一度救急患者の受け入れも行っております。

差し支えなければ一日の外来患者数と年間の手術件数を教えていただけますでしょうか。

吉田事務長 外来は平均で一日70名ほどで、夜間救急の当番日はさらに40名ほど増えます。救急車は24時間で40台前後受け入れています。手術については全麻の手術を年間約200件ほど行っています。

ありがとうございます。今回電子カルテシステムを導入しようと思われたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

笠置病院長 ご承知のとおり、政府は医療・介護分野のICT(Information and Communication Technology)化を強力に推し進めており、2020年には健康・医療・介護においてICTを本格稼働させる計画を立てています。マイナンバー制度の導入を見ても分かるとおり、政府は一度立てた計画は多少時期の遅れがあったとしても必ず実行するでしょう。その対象は中小病院も例外ではないでしょう。そこで今後いやがおうでも訪れる大きな環境の変化に対処できるよう、当院もまずはオーダリングシステムの導入から検討を始めることにしました。

笠置病院長

当初はオーダリングまでと考えられていた計画を最終的に電子カルテシステムの導入にまで変更されたのはなぜですか。

笠置病院長 いくつかのベンダーに声をかけ、製品の選定をする過程で実際にオーダリングシステムを導入している病院を見学する機会がありました。見学先の先生方とお話をさせていただいた際に『一度に電子カルテまで導入してもよかった』といった感想をお聞きしたのがきっかけです。後で電子カルテ機能を追加するよりもまとめて導入するほうがトータルの費用も抑えられるだろうという思いもあり、カルテまでを一度に電子化する検討を始めました。実際に富士フイルムヘルスケアシステムズには費用面でもがんばっていただきました。

いくつかのベンダーにお声をかけられたとのことですが、その中から弊社に製品を選択いただくまでの経緯を教えていただけますでしょうか。

笠置病院長 はい。当院からは富士フイルムヘルスケアシステムズを含め5社に声をかけました。最初に当院が使用していた医事会計システムのベンダーに声をかけたのですが、稼働が最短でも1年先などの提案内容から当院の希望と合致せず、選定から外すことにしました。院内の選定メンバーの中には富士フイルムヘルスケアシステムズ以外のベンダーを推す声も挙がりましたが、最終的には私の判断で富士フイルムヘルスケアシステムズに決めました。診療所の先生からは『導入した電子カルテが気に入らなかったので別の製品に入れ替えた』という話を耳にすることがありますが、われわれのような中小の病院にそんな体力はありません。電子カルテシステムは非常に大きな買い物ですから、選択のミスが病院の将来を左右するとも考えました。正直なところ富士フイルムヘルスケアシステムズよりも安いベンダーもありましたが、そこは慎重に判断しました。富士フイルムヘルスケアシステムズの提案にはカルテ情報を東西2カ所のデータセンターにバックアップする機能が盛り込まれており、患者様の大切な診療データを安心して預けられると感じましたし、富士フイルムヘルスケアシステムズなら将来にわたってしっかりとサポートいただけると思い、お任せすることにしました。今のところその判断は間違っていなかったと思っています。

ありがとうございます。一昨年の12月末にベンダーを決定され、年明けから導入作業を開始し、3月1日にはシステムの運用を開始されたと伺っておりますが、この短期間での導入はかなり大変だったのではないでしょうか。

笠置病院長 3月の稼働は当院の希望で、富士フイルムヘルスケアシステムズはその要求に応えてくれました。運用開始までの期間を短くする代わりに運用開始後も約1カ月間SEの方に常駐いただき、通常業務をしながら足りない設定や運用方法などについて支援いただきました。ですが、やはりシステムを使用するわれわれが操作に慣れないまま運用を開始したことで、稼働直後は外来の患者様を待たせてしまいご迷惑をかけてしまいました。

吉田事務長

電子カルテでの運用が落ち着くまでにどのくらいの期間がかかりましたでしょうか。

吉田事務長 ちょうど稼働から2カ月を迎える頃にはほぼ全ての業務フローがスムーズにまわるようになりました。

電子カルテの導入前後で大きく変わったことがあれば教えてください。

笠置病院長 一番の変化はやはり患者様のカルテ用紙が大幅に減ったことですね。患者様に署名いただいた同意書などは今でも紙を残しているので完全なペーパーレスにはなっていませんが、指示箋が無くなったことが大きいですね。当院ではすべてのカルテを院内に保管しきれないので、しばらく通院されていない患者様のカルテは院外の保管庫に保存しています。増え続けるカルテの保管場所の確保や費用にはかなり悩まされていたので、今後そういった心配がなくなったことは本当に嬉しいです。

システム全体について新藤技師長にお話を伺いました。

今回導入されたシステムの構成について教えてください。

新藤技師長 電子カルテ用の端末は保守用のものも合わせてデスクトップ型を24台とノート型を16台、さらにタブレット型も5台導入し、院内各所に設置しています(下図)。また部門システムとしてはPACS(Picture Archiving and Communication System)や心電図ビューアのほかに栄養管理システムとも接続しており、電子カルテの各端末上で検査画像や心電図が容易に参照できます。また注射の3点チェック用としてリストバンド用のプリンターとバーコードリーダも導入しました。

新藤技師長

システムの導入期間は1月のキックオフから本稼働まで約2カ月、実質1.5カ月しかなかったと伺っていますが、実際のところいかがでしたでしょうか。

新藤技師長 本当に大変でした。電子カルテはもとよりオーダリングシステムも使ったことがないメンバーばかりでしたから、まずは製品そのものを理解してもらわないといけませんでした。通常業務も行いながらの準備でしたからとにかく時間が足りませんでした。

富士フイルムヘルスケアシステムズのサポートについてはどのような印象をお持ちでしょうか。

新藤技師長 システム稼働前後の期間はSEの方々に運用やシステムの設定について親身に支援いただきました。また現在も急ぎの懸案事項については即時対応いただけており、満足しています。

システム構成図

病棟の様子について看護部の大西師長にお話を伺いました。

電子カルテの運用が始まり、病棟ではどのような変化がありましたでしょうか。

大西師長 今回のシステム導入を機会にドクターの口頭指示を無くしてもらい、本来あるべき姿に戻すことができました。以前は看護師が代筆した内容について後でドクターから指摘を受けることもあり、改善の必要性を感じていました。

逆に電子カルテでの運用になって困っていることはございますか。

大西師長 ドクターによって電子カルテのスキルに差があって、それを看護師がサポートしていることですね。院内のドクターに関しては医療クラーク(医師事務作業補助者)をつけられているので、クラークの方に対応いただいていますが、非常勤の先生方には医療クラークがつかないので、看護師がサポートしている状況です。

非常勤のドクターへの対応はどの病院でもご苦労されているようですね。われわれとしましても、今後製品の使いやすさを向上させることで、お客様のご負担を少しでも軽減できればと思います。
現在看護部で力を入れて取り組まれていることはどのようなことでしょうか。

大西師長 今回の電子化をきっかけに各看護師がより高い意識をもって看護記録を記入するようになりました。現在定型文を増やすなど、内容の充実を図っている最中です。

弊社の電子カルテシステムに対してさまざまなご要望をお持ちだと思いますが、その中でも今一番待ち望まれているのはどのようなものでしょうか。

大西師長 今一番ほしいのは看護勤務表と看護日誌ですね。

ご要望いただきました機能についてはちょうど次のソフトウェアバージョンアップでご提供できる予定です。様式9の形式によるデータ出力にも対応しておりますので、ぜひご活用いただければと思います。

外来診察室での運用について斉藤副院長にお話を伺いました。

診察台にモニタが2台並んでおりますが、どのように使い分けされているのでしょうか。

斉藤副院長 左右のモニタに電子カルテとPACSの画面をそれぞれ表示させています。電子カルテとPACSは接続されているので、カルテ側から患者様の画像を簡単に見られます。

先生とお隣にいらっしゃるクラークの方はそれぞれマウスをお持ちになられていますが、どちらでも操作が可能なのでしょうか。

斉藤副院長 そうです。キーボード入力は主にクラークに任せていますが、私のほうでも操作したい時はこのマウスで操作できるので、結構便利ですよ。

斉藤副院長

電子カルテで気に入ってお使いになられているのはどのような機能でしょうか。

斉藤副院長 過去に出した指示と同じ指示を簡単に出せるのは便利ですね。ほかにも処方のセットをもっと登録しておけばさらに便利になると思うので、今後増やしていきたいと思っています。

笠置病院長と吉田事務長にシステムの感想および今後のシステム展望について伺いました。

今回医事会計システムも入れ替えとなりましたが、医事課の評価はいかがでしょうか。

吉田事務長 思っていたよりもスムーズに切り替えられた印象があります。サポートについても以前のシステムは地元の企業が保守対応をしてくれていたので、リモートによる保守対応については少し心配していましたが、サポートセンターからは遠隔操作でこちらの画面を見られるようなので、同じ画面を見ながら会話もできて特に不満はでていません。

受付

それをお聞きして安心いたしました。弊社の電子カルテについてはどのような印象をお持ちでしょうか。

笠置病院長 稼働から1年が経過しようとしていますが、システムが停止するようなトラブルは起きていません。あとはパス機能が搭載されれば急性期病院でも十分に使える製品だと思います。

栄養科

パス機能につきましてはお待たせして申し訳ございません。ようやくご提供できる準備ができました。本機能を含め、今後のソフトウェアバージョンアップにて機能向上を図ってまいりたいと思います。
貴院で今後計画されていることがありましたらお聞かせください。

笠置病院長 実は近々リハビリ業務を開始する計画で準備を進めている最中です。すでにリハビリ室の準備はできているので、スタッフが集まりしだい運用を開始する予定です。また、システム面では血液ガスなどの迅速オーダの検査結果を電子カルテ上ですぐに確認できるよう将来的に検査システムも接続したいと考えています。

最後に今回の電子カルテの導入をご経験されて、これから導入を検討されている施設へのアドバイスなどございましたらお聞かせください。

笠置病院長 当院では電子カルテの導入にあたりドクターに医療クラークを付ける運用を選択しました。結果的に外来診察室では診療と並行して医療クラークがカルテの入力を行っていますので、ドクターは診療行為に専念でき、外来もスムーズに回せています。当院の場合もそうですが、クラークは新たに雇用するのではなく、電子カルテを導入することで会計業務は省力化ができるので、事務スタッフの一部を医療クラークに配置転換して対応できると思います。

おわりに

現在ドクターがPCの操作に不慣れであることを理由に電子カルテの導入を躊躇されている病院は多いのではないでしょうか。今回の取材を通じて、医療クラークの活用によって急性期病院の外来診療においてもスムーズな運用を実現されている貴重なお話をお伺いすることができました。今後も弊社の製品の提供を通してより多くの施設様をご支援してまいりたいと思いを新たにいたしました。
ご多忙の中、長時間にわたり取材にご協力いただきました笠置病院長はじめ職員の皆様に感謝申し上げます。