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日本

導入事例

整形外科・内科 水谷病院 : 愛知県名古屋市

導入製品 : Open-Karte AD
院長 : 水谷 武彦先生

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

医療法人ミズタニ 水谷病院(院長 水谷 武彦)および水谷整形外科・内科クリニックは、愛知県名古屋市熱田区金山町にあり、整形外科を中心にリハビリテーションの充実した地域密着型の病院です。今回は、2015年11月に導入され、翌年2月より運用を開始された電子カルテシステム「Open-Karte AD 」について、水谷院長をはじめスタッフの方々にお話をお聞きしました。

MEDIX Vol.65(2016年10月発行)*1

電子カルテの導入で複数医療機関の効率的な情報共有を実現する水谷病院を訪ねて

  • *1 文中の社名を、現社名に変更し掲載しております。

はじめに水谷病院の概要とシステムの導入について水谷院長にお話を伺いました。

病院の概要と取り組まれている特長などについてお聞かせください。

水谷院長 父がこの地に道場を開き、柔道を教える傍ら接骨師としてほねつぎを営んでおりました。当時名古屋でも一番広い道場でした。その後1967年に叔父とともに病院を開院したのが始まりです。それから1981年に増築を行い47床へ増床し、2005年には増え続ける外来患者に対応するため外来専用のクリニックを建て施設の拡充を図ってきました。当院は名古屋市立大学とのつながりが深く、スポーツの専門外来を標榜しています。中日ドラゴンズ*2の選手のほか、球場も近いので巨人(読売巨人軍*3)や横浜(横浜DeNAベイスターズ*4)の選手が来院されることもあります。また、夜間の救急外来も行っています。かなり大変ですが、最近は個人診療所の受け入れが減っているので、地域住民のためにも続けていこうと思っています。

今回電子カルテシステムを導入しようと思われたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

水谷院長 もちろん増え続ける紙のカルテの管理を解決したかったということもありますが、一番の理由はクリニックにかかっている患者が救急で病院に来られた時にクリニックでの患者のカルテを簡単に見られるようにしたいと思ったことです。電子カルテを導入する前は、夜中でもクリニックにカルテを取りに行っていました。距離はそれほど離れてはいませんが、結構な手間を感じていました。

水谷 武彦 院長

電子カルテシステムの導入にあたり重要視された点を教えてください。

水谷院長 一番は価格ですが、病院とクリニックで使用するにあたって煩わしさがないシステムであることも重要視しました。最初に当時使用していた医事システムのベンダーに相談したところ、クラウド型の電子カルテを提案されました。クラウド型はサーバがいらないので価格面でも魅力に感じましたが、外部のネットワーク経由で使用するシステムに対して不安がありました。実は当時の医事会計システムも病院とクリニックとを専用回線で結び1台のサーバを共有していたのですが、導入当初は通信速度が出ず、かなり苦労させられました。その印象が強く残っており、不安を拭いきれませんでした。そこでほかのベンダーからの提案を受けることにしたのですが、富士フイルムヘルスケアシステムズの提案は当時のシステムと同様にサーバを病院とクリニックで共有でき、電子カルテも両施設で同じ操作で使用できるという内容で、当院が希望していたものと合致していました。また、価格についてもがんばっていただきました。

電子カルテシステムが稼働してから約5か月が経過しましたが、運用状況はいかがでしょうか。

水谷院長 導入の一番の目的だった両施設間におけるカルテの参照は容易になりましたし、自宅からでも参照できるようになり満足しています。ただ看護師の記録や検査結果など、いろいろな情報は簡単に見られるのですが紙のカルテに比べて全体像が見えにくくなった印象があります。紙の場合には字にも特長があって、過去の所見をすぐに見つけられましたが、電子カルテではそうもいきません。そのため今ではサマリ機能を活用するようにしています。

  • *2 中日ドラゴンズは株式会社中日ドラゴンズの登録商標です。
  • *3 読売巨人軍は株式会社読売巨人軍の登録商標です。
  • *4 横浜DeNA/ヨコハマディーエヌエーは株式会社ディー・エヌ・エー、DeNAベイスターズおよびベイスターズは株式会社横浜DeNAベイスターズの登録商標です。

システム全体について新美事務長にお話を伺いました。

新美 吉伸 事務長

今回導入されたシステム構成について教えてください。

新美事務長 電子カルテ用の端末として病院側にデスクトップ型を7台とノート型を19台、クリニック側にデスクトップ型を4台とノート型を5台設置しています(システム概要図)。当初はクリニック側も15台以内に収める予定でしたが、システム稼働後にリハビリ課から一人一台にしてほしいとの強い要望がありSurface*5を病院で追加購入しました。また自動再来受付機を導入したほか、PACS(Picture Archive and Communication System)や心電図(フクダ電子株式会社製)、血液検査装置、麻酔記録装置のモニタなど接続可能なものはできる限り接続しました。ただ、オムロン株式会社製の体温計との接続についてはまだOpen-Karte ADとの実績がないとのことで金額が折り合わず、今回接続を見送りました。私としては電子カルテ化するにあたって一番人数の多い看護師の業務効率の改善に期待していたので、バイタルの取り込みが実現できなかったことは残念です。

そうでしたか、大変申し訳ございません。外部システムとの接続については今後見直しを図ってまいりますので、改めてご提案させていただきたいと思います。

電子カルテを導入されて雇用面で変わった点などございますか。

新美事務長 そうですね、システム導入後に看護師の雇用の面接を数名行いましたが、その中の一人は『電子カルテじゃなかったらどうしようかと思いました』と言っていました。理由を尋ねるとこれまで紙のカルテでの運用経験がないとのことでした。

最近は病院の求人の条件項目に電子カルテの有無が挙がっているのを見かけたことがあるのですが、若い方の場合はそういった方が増えているのかもしれませんね。

  • *5 Surfaceはマイクロソフトコーポレーションの登録商標です。

医事システムについて医事課の家田さんにお話を伺いました。

医事課 家田さん

更新になった医事会計システムをお使いになってどのような印象をお持ちですか。

家田さん 私は主にクリニックの外来を担当しています。午前中だけで200名ほどの患者さんがいらっしゃるのですが、今回は電子カルテの導入と医事会計システムの更新が同時に行われたので大変でした。更新前に使用していた医事会計システムは市場でのシェアも高く、現場では更新に否定的な意見もありましたが、結果的には更新後も医事部門としてやりたいことは全て問題なく運用できています。

電子カルテが導入されたことで、運用はどのように変わりましたか。

家田さん 以前は紙のカルテを見て医事課が全て医事会計システムに入力していたので時間もかかり、入力内容が間違っていた場合には医事課の責任となっていました。現在は先生が電子カルテで入力されたものがそのまま医事会計システムに送られてくるので、その点では格段に負荷が減りました。ですが、逆に先生からは算定方法や指示の入力内容について問い合わせを受けるので、診察室の先生のそばに医事担当者が1名付いて対応しています。

今回のシステム導入で一番苦労された点はどのような点でしょうか。

家田さん 診療報酬の算定上は同じ「創傷処置」でも、整形の場合は何で固定しているかによって「アップ帯固定」など指示の名称が異なります。これまでは医事課で行っていた指示内容と算定項目の紐付を事前にシステムに登録する作業が一番大変でした。準備に携わっていただける先生が少なかったので、医事課のほうで準備を進めました。これまでの経験から想定しうる指示項目を洗い出し、SEの方に事前に登録してもらいましたが、運用開始後にかなりの数の指示が登録されていないと先生から指摘を受けてしまい、慌てました。やはり先生ごとに指示名称やセットの内容などに違いがあり、それが落ち着くまでには1、2カ月はかかりました。

電子カルテで気に入ってお使いいただいている機能などございますか。

家田さん 医事課内で共有すべき情報の伝達用にメール機能をよく使っています。院内のスタッフから医事課宛てに先生の休診日の問い合わせの電話がよくかかって来るのですが、メールを見れば誰でも応えられるようになり重宝しています。

電子カルテについてリハビリ課の仁木さんおよび石井さんにお話を伺いました。

現場では電子カルテをどのようにお使いでしょうか。

仁木さん 私はクリニックでリハビリを担当しているのですが、スタッフ全員がタブレット型PCを無線LANの環境下で使用し、紙のカルテのときのように患者のそばでカルテの参照や入力を行っています。

タブレット型PCを利用されるようになって、患者さんの反応はいかがですか。

仁木さん 稼働当初は興味本位で画面をのぞく患者さんはいらっしゃいましたが、これまで『パソコンの画面ばかり見ている』といった苦情はありません。その点はわれわれも懸念していたので、運用を開始するときからスタッフ全員で注意するように心掛けてきました。

リハビリ課 仁木さん(左)と石井さん(右)

Open-Karte ADをお使いになられて便利に感じられている点がありましたらお聞かせください。

仁木さん カルテが電子化されたことによって病院からクリニックのカルテが見られるようになり、情報の共有がしやすくなりました。また、先生方全員の予約状況も手元の画面で確認できるのは便利ですね。リハビリは担当制なのですが、ほかの先生に自分の代理をお願いするときにその場で先生の空き状況を確認できるようになりました。以前は台帳を見に行って確認していましたが、クリニックの外来は患者が多く分単位で動いているので、予約にかかる時間もばかになりません。

石井さん 私は病院でリハビリを担当していますが、病院のほうでは先生一人あたりの担当患者が6、7人とクリニックに比べて少ないので、スタッフルームに設置されたノート型の端末を共用しています。電子カルテの端末ではリハビリ記録はもとより、検査画像や検査結果、バイタル情報などが見られますし、担当外の患者の治療を依頼された際にも端末上で患者の情報をすぐに確認できるので、とても便利です。あとは患者のリハビリ計画書の取得日や検査の実施日などを確認するために、診療カレンダーのオーダ検索機能をよく利用しています。病院では本人の署名が必要な書類以外は完全にペーパーレスになり、紙の時に比べて管理はとても楽になりました。

クリニック リハビリ室

今回実際に電子カルテの導入をご経験されて、これから導入を検討されている施設へのアドバイスなどございましたらお聞かせください。

石井さん 電子カルテの導入が決まった時に富士フイルムヘルスケアシステムズから準備委員会の開設や進め方のアドバイスをいただきましたが、本当にあのとおり最初からしっかりやっておくべきだったなと反省しています。提示いただいた時はまだ稼働日まで日があったので、初めて電子カルテを使う者からすると「実際に導入してからでもなんとかなるでしょう」と考える者もいて、「早めに動いておいたほうがいい」と考えるメンバーとの間で結構な温度差がありました。当院の場合は途中から医事課の家田さんが取りまとめてくれたので、なんとか稼働までこぎ着けることができましたが、最初から現場監督的な人をしっかりと立てて組織的に取り組んでおけばもっとスムーズに稼働できた気がしています。

その点についてはわれわれも力不足でしたし、反省すべき点は多々あると思っております。

サポートと今後のシステム展望について伺いました。

弊社のサポートについてはどのような印象をお持ちでしょうか。

新美事務長 富士フイルムヘルスケアシステムズのサポートについては満足しています。システム稼働時には担当のSEの方には親身になって対応いただきましたし、システム稼働後は夜勤の時など院内にシステムを理解している者がいない場合もあるので、土日夜間も問い合わせできるコールセンターは助かっています。ただ、こちらの質問や思いが伝わるのに稼働前に対応してくれたSEの方と比べると少しスピード感に欠けるので、もっと柔軟に対応してもらいたいなと思います。

やはり同じシステムでも施設ごとに構成やお使いの機能も異なるため、お問い合わせの内容を理解するまで時間を要することがあると思いますが、貴重なご意見として今後の改善に努めたいと思います。

システム導入によって病院、クリニック両施設間の情報共有など、業務効率の向上をめざしておられますが、今後さらに改善したいとお考えのことがございましたらお聞かせください。

水谷院長 外注検査の結果取り込みをもう少し簡便化したいと思っています。検査会社側の対応も必要なことなのでこちら側だけで実現することは難しいのですが、USBメモリ経由で行っているデータ取り込みをオンライン化できればと思っています。

今回のシステム導入を終えられて、今後富士フイルムヘルスケアシステムズに対してどのようなことを期待されておりますでしょうか。

新美事務長 富士フイルムヘルスケアシステムズのユーザ数が増えて、いろいろと機能アップが図られていくことが一番の希望です。また、以前の医事会計システムの時は同じシステムを使っている施設と事務長レベルで連絡をとりあっていたので、電子カルテでも情報交換ができるユーザさんができるといいなと思っています。

コールセンターを通して各施設からも日々さまざまなご意見・ご要望をいただいておりますので、可能なものからできるだけ早いタイミングで各施設にご提供してまいりたいと思います。

おわりに

今回の取材先のご施設様のように、病院とは別に外来専用のクリニックを建てて運用されている施設は多いのではないでしょうか。今回の取材を通じて、システムの活用によって地理的に離れた施設間の情報共有やスタッフの業務効率の改善を実現されている様子を拝見でき、弊社の製品の提供を通してより多くのご施設様をご支援してまいりたいとの思いを新たにいたしました。
ご多忙の中、長時間にわたり取材にご協力いただきました水谷院長はじめ職員の皆様に感謝申し上げます。