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日本

導入事例

西湘病院 : 神奈川県小田原市

導入製品 : Open-Karte AD
院長 : 原俊介先生

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

医療法人財団報徳会 西湘病院(院長 原 俊介先生)は神奈川県小田原市扇町にあり、西湘地区(神奈川県の相模湾沿岸部の湘南地方より西のエリア)の地域住民に対し、「診断から治療までの完結型医療の提供」を第一の方針として掲げられている地域密着型の病院です。今回は、2015年3月末から運用を開始された電子カルテシステム「Open-Karte AD」について、原院長をはじめスタッフの方々にお話をお聞きしました。

MEDIX Vol.63(2015年9月発行)

ICTの活用により安心・安全な医療の提供をめざす報徳会 西湘病院を訪ねて

はじめに西湘病院の概要についてお話を伺いました。

西湘病院の概要と取り組まれている特長などについてお聞かせください。

原院長 当院は1958(昭和33)年に前院長の原 敬造により原医院として発足しました。その後1966年に病床50床を有する特定医療法人財団報徳会 西湘病院として創設、一貫して地域に密着した医療を実践し発展してきました。1980年に55床の旧病院から現在地へ新規移転するとともに102床へと増床、2005年には健康管理センターを含む新棟を増設し、施設の拡充を図ってきました。2011年からは脳神経外科チームによる24時間体制の救急医療をスタートし、現在では小田原周辺地区における二次救急の指定病院として、幅広い地域から救急患者を受け入れるようになりました。

新たに導入された電子カルテシステムについてお話を伺いました。

原 俊介 院長

今回電子カルテシステムを導入しようと思われたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

原院長 電子カルテシステムというものは大学病院や400床以上の大規模病院で使われているものと、われわれのような100床規模の病院とで使う内容に違いがあるかというと、全くそんなことはありません。病棟があり、検査科があり、リハビリ科がある当院のような施設では、患者さんの数や建屋こそ小さいですが、業務としては大学病院とほぼ同様のことを行っています。ですが、大学病院で使用されているような1床あたり100万と言われる高額なシステムは当院では導入できないと思っていました。しかしながら口頭指示や紙カルテによる運用の中で、誤記や転記ミス等によるインシデントがたび重なり発生したことから、再発防止のため投薬のたびにカルテとの照合作業を行うことになりました。さらに看護必要度の記載を手書きで行っていたのですが、これも看護師にとってかなりの作業負担となっておりました。このように多くの仕事を抱える看護師の負担をどうにか軽減しなければならないと思ったのがシステムの導入を前向きに考え始めたきっかけでした。

そういった中で今回弊社の電子カルテシステムを選択いただきましたが、何が決め手だったのでしょうか。

原院長 システムの検討開始後は各メーカーからいくつもの製品を提案いただきました。その中で富士フイルムヘルスケアシステムズの製品は、ベースにわれわれが日常的に利用しているWebブラウザを使用している点が気に入りました。素人考えかもしれませんが、メーカー独自のものではなく一般的に使用されているものがベースになっている方が一緒に使用するほかのシステムとの相性も良いだろうと感じたのです。また、今回のシステム導入は看護師の負荷軽減が一番の目的でしたので、看護支援の機能が製品パッケージに内包されており、一緒に導入できる点にもメリットを感じました。

今回電子カルテを導入されるにあたり、特にこだわられたことなどございますでしょうか。

原院長 こだわったというわけではありませんが、今回は非常に短期間でシステムを導入しました。12月の中旬にメーカーを決定し、3月末からシステムを本稼働させましたが、準備期間は実質1カ月程度でした。
実は私が大学病院に勤務していた時に電子カルテの導入を経験しました。その時は約1年に及ぶ準備期間が設けられ、各スタッフには事前にIDとパスワードが配布されました。操作訓練用の部屋が用意されていたのですが、私がその部屋へ足を運ぶことはありませんでした。その経験もあって、長期間の準備期間を設けたからといってうまくいくものではないという思いがありました。また、今の若い方達は日頃からスマートフォンなどを使用されているので、システムの動かし方を一とおり教われば短期間でも対応できるだろうと思いました。逆に半年、1年と準備に長い時間をかければかけるほど、基本的なところではなく枝葉末節の部分で細かな要望ばかりが増えてしまいがちなので、むしろ早く物を動かして、その中で出てきた課題を1つ1つ解決していけばいいという思いで短期間での導入を決断しました。

実際に短期間でのシステム導入はいかがでしたでしょうか。

原院長 当院では1日100名ほど外来患者さんがいらっしゃるのですが、やはり稼働直後は患者さんをお待たせしてしまい、お叱りを受ける場面もありました。ですが、私もスタッフも日に日に操作に慣れてきて、運用面についても日々見直しを図ることで5月頃にはほぼ落ち着きを取り戻しました。病棟も特に問題なく運用できています。短期間での導入に起因したもの以外にも初期不良的な問題はいくつかありました。ですが、そういった問題も富士フイルムヘルスケアシステムズが1つずつ改善してくれていますし、システムや業務を全部止めて直さなければいけないという事態もこれまでにありませんでしたので、私としては今回のシステム導入には満足しています。

今回導入されたシステムについて青木事務局次長、人事総務課 小清水さんにお話を伺いました。

人事総務課 小清水さん(左)、
原院長(中央)、青木事務局次長(右)

今回導入されましたシステム構成について教えてください。

青木次長 院内には電子カルテ用の端末としてデスクトップ型を25台とノート型を31台設置しています(下図)。クライアントライセンスにはまだ余裕があるので、端末を増やすことも可能です。また自動再来受付機や画像システム(PACS:Picture Archiving and Communication System)、検査システムとの接続も行っており、電子カルテ側からPACSを起動させて該当患者さんの検査一覧を表示できるようになっています。

今回のシステム導入で一番苦労された点はどのような点でしたでしょうか。

小清水さん 一番大変だったのは予約情報の移行作業でしたね。これまですべての検査の予約管理は紙台帳で行っていましたので、それらの予約情報を電子カルテシステムにオーダー(指示)として登録し直す作業が必要でした。脳外科の患者さんは経過観察のために半年、もしくは1年に1回のペースでMRI検査を受けられますので、予約情報も約1年分を移行する必要がありました。新システムでの運用が始まると、新たな予約が入り始めるので、この作業は後回しにするわけにはいきませんでした。準備期間が非常に短期間でしたが、3月に入ってから医事課と事務課のスタッフとで協力して何とか新システムへの登録を終えることができました。

それはかなり大変だったと思います。やはりそういった面ではある程度の準備期間は必要ですね。システム稼働後の弊社のサポートについてはどのような印象をお持ちでしょうか。

小清水さん 院長からもお話がありましたとおり、稼働後にいくつかシステム上の問題は発生しましたが常に迅速に対応いただいていますし、もしその日に解決できなかった場合でも逐次状況の報告は入れていただけていますので、サポートについては満足しています。

システムの利活用状況について勝間田看護部長にお話を伺いました。

勝間田 弥生 看護部長

今回のシステム導入によって見られた変化がありましたらお聞かせください。

勝間田部長 当院では看護記録をSOAP(Subject、Object、Assessment、Plan)形式で記録しているのですが、以前は1日の記録が途中の0で終わってしまっているものが散見されました。しかしながらシステム導入後はSOAPのすべての項目が入力されるようになってきました。また、電子カルテでは手書きと違って最終的に登録するまでに容易に内容の見直し訂正ができるのもいいですね。

そのほかにも病棟の患者さんの情報を以前は紙のカルテを1つ1つ開いて確認していましたが、今では電子カルテのモニタ上で次々に切り替えて見られるので、情報収集に要する時間は格段に早くなりました。私のところには毎朝申し送りとして、注視が必要な患者さんの報告が来るのですが、患者さんの所へ伺う前に電子カルテの端末で該当患者さんの詳細な情報が確認できますし、そこには担当医師が考えていることも記載されていますので、医師に直接聞かなくても今後の治療方針まで把握できることにメリットを感じています。

システムによる運用を開始されて、病棟の看護師の方々の反応はいかがでしょうか。

勝間田部長 3階病棟のスタッフは、薬剤の確認が楽になったと言っています。当院では勤務帯が変わる際には必ず点滴と服薬の確認を行っているのですが、紙の場合には読みづらい字の場合もままありました。そういった字の読み間違いが薬のトラブルの一番の原因になります。システム化によってそういった読み間違いが無くなったことは本当に大きいと思います。また、先生も院内各所から指示が出せるようになったので、リーダーたちや薬剤師もすぐにそれを受け取って対応できるようになり、運用は格段にスムースになったと思います。新しい指示が届いたことを知らせてくれる新着マークは運用面で非常に役に立っています。

先ほど院長先生が今回のシステム導入の一番の目的が看護師の方々の負荷軽減だとおっしゃっておりましたが、その効果が見られているというのは非常に喜ばしいですね。そのほかに気に入ってお使いいただいている機能などございますか。

勝間田部長 私としては職員とのやりとりにメール機能がとても重宝しています。以前は打ち合わせの開催や時間を一人ひとりに電話で伝えたり、院内各所への連絡は各部署の専用ボックスに紙を投かんしたりしていましたが、紙だと見る人と見ない人がいて、共有すべき情報を周知徹底できているとはとても言えませんでした。そういった連絡もメール機能を使うことで関係者全員に一度に行うことができますし、新着のメールが届けば画面上にそれを知らせるマークも表示されるのでみんな見落とさずに見てくれていて、情報伝達はほぼ確実なものになってきています。

今後のシステム展望についてお話を伺いました。

最後に、弊社や弊社の電子カルテに今後期待されることはございますか。

勝間田部長 看護計画の機能はシステムに搭載されているのですが、未だ紙で運用しており、システム運用に切り替えできていません。現在も各病棟で看護計画の機能をどう活用していくかについて模索中なのですが、他院のものを見る機会もないため当院でどういうふうに作り上げていくかが今後の課題です。また、他院に情報を求めようにも小田原市内に限れば電子カルテを導入されている施設は3割程度ということもあり、聞くに聞けない状況です。しかも内容は個人情報ですので、コピーをいただくこともままなりません。実際にプランを立てるのは現場のスタッフたちなので、経験が豊富なスタッフばかりならばプランもスムースに作り上げることができますが、経験が少ないスタッフだとプランの発想も乏しいものになってしまいます。ですので、できればシステムにあらかじめ急性期の疾患のサンプルなどがある程度登録されていると助かります。こういった悩みは当院に限らずあると思いますし、そういったサンプルがあれば、そのプランをベースに各施設でアレンジして運用を開始できるので、看護計画がもっと組み立てやすくなっていいと思います。

手術室

病棟

病室

リハビリ室

地域医療連携室

貴重なご意見ありがとうございます。実際にご利用いただいている中でいくつかのご指摘・ご要望もいただいておりますので、今いただきましたものも含め、より使いやすい製品をご提供できるよう改善・改良を行ってまいります。

おわりに

電子カルテシステムは大規模病院に比べ中小規模病院ではシステムの導入に対する高額なコストのイメージが先行してしまい、導入を躊躇されている施設が多いのではないでしょうか。今回の取材を通じて、限られた人員でほぼ大病院と同様の業務をされている中小規模病院でこそシステムの導入が待ち望まれていることを実感でき、もっと弊社の製品を通してご支援してまいりたいと決意を新たにいたしました。
ご多忙な業務の中、長時間にわたり取材に応じていただきました原院長をはじめ病院スタッフの皆様に感謝申し上げます。