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国家公務員共済組合連合会新小倉病院(福岡県北九州市小倉北区金田1-3-1、渋谷恒文院長、病床数310床、12診療科、4センター)は、昭和40年の開設以来、地域医療と高度で効率的な医療の両立を目指し、職員が一丸となって安全で質の高い医療の提供に努めています。同院では、平成24年1月から、レセプトチェックシステム『べてらん君』を稼働させ、査定率の低下や残業時間の短縮等を実現しています。そこで、同院で医事課長を務める服部進氏に『べてらん君』導入の理由や導入後の効果等について話を聞きました。
- * 本ページは「病院新聞 2013年3月7日 掲載」の内容を、現社名に変更して掲載しております。(2021年3月31日より社名変更)
服部 : 『べてらん君』を導入する以前に、他社メーカーのレセプトチェックソフトを5年間ほど使用していましたが、カスタマイズがあまりできませんでした。バージョンアップもほとんどなく、また、サポートセンターが無いため連絡を取っても、意思の疎通が図れないことなどがあり、ソフトを上手く育てることができませんでした。こうした状況で毎月かなりの量の査定が来ていました。
当院の渋谷院長が、色々な病院の情報を集められ、他院では『べてらん君』を使用されていることを聞き、比較検討された結果、院長の一押しで『べてらん君』の導入が決定しました。
『べてらん君』の導入時期はいつですか。
服部 : 平成23年11月にデモンストレーションに来ていただき、正式に稼働したのは24年1月からです。1月から医事システムが更新されたため、同時に変更することになりました。
導入後の状況をお聞かせください。
服部 : 我々が操作に慣れるまで時間がかかることもあり、最初の1ヵ月は以前使っていたソフトとの差はあまり感じられませんでした。ただし『べてらん君』では、チェックが入った紙レセプト形式で表示ができる点など、見た目が分かりやすいのが非常に良いと思います。導入前は、医事課のみでチェックを行っていましたが、『べてらん君』を導入して、院内の点検ルールも若干変更しました。べてらん君チェック済紙レセプトを先生方にも目を通していただき、医事課チェックから病院全体チェックヘと変わりました。導入当初の1~3月頃までは医事課チェックだけで以前とあまり査定率も変わりませんでした。5月頃から紙レセプト形式で出力するようになり、その頃から徐々に査定率の数値が下がってきました。
具体的なチェックの流れは。
服部 : 前ソフトでは、病名落ち等のエラー一覧表を紙媒体で出していました。医事課ではエラーー覧表とレセプトを別々に出していたため、時間的になかなか2つを両立して最後まで見る事が難しい状況でした。現在は、『べてらん君』がチェックしたチェック済レセプトの形で1本化して出せるため、レセプトを見ながら最終確認チェックもでき、非常に効率的になりました。作業量も減少でき残業も減りました。さらに、先生方と同じ『べてらん君』チェック済紙レセプトを見るため、共通認識が持てるようになりました。
導入前は、医事課職員が修正のない紙レセプトに対し、修正箇所を付箋に手書きし先生方へ渡し、先生方が病名追加や訂正を記入されていました。先生方の読めない文字などはみんなで考えたり、薬名から判断して自分たちで解読しなくてはいけないなど、時間がかかっていました。また、薬名の適応などまではなかなか手が回らないこともありましたが、現在は参考病名や薬名がしっかりと表記されており、先生方もその記載された参考病名から選択するだけで終わるため、確認が楽になったと思います。
査定率に変化は見られましたか?
服部 : 『べてらん君』を導入した頃に、丁度、突合点検や縦覧点検が実施されたこともあり、平成24年度前半の査定率は0.2~0.4%とやや高めで推移していました。後半からは、0.2%を切るようになり、現在は0.1%台を維持しています。
月あたりのレセプト件数と、『べてらん君』の運用状況を教えてください。
服部 : 当院のレセプト件数は入院が約520件。外来が約4500件です。
運用方法については、入院に関しては毎月20~25日の間にそれまでに退院した患者さんのレセプトを『べてらん君』を介して出します。これを医事課と各先生がチェックしています。さらに月末に、それ以降に退院した人と入院中の人のレセプトを出して、チェックを行っています。電送する前に、最後にレセプトは出さずにエラーのあるデータだけを紙出力して、点数の高そうな手術や検査などを担当者がチェックしています。入院は約3回『べてらん君』でチェックを行っています。外来も同様の流れで行っていますが、チェックは2回です。
服部 : 以前は、月40~50時間は残業を行っていました。現在は、残業は月30時間を目標にしていますが、なんとかクリアできています。一概には言えませんが、レセプト請求時期の点検時間は短くなっています。月初めでも早く帰れる日が多くなっています。以前なら保険請求の時期は夜の9~10時まで残業をしていましたが、今は7~8時くらいまでで終わります。
医事課のスタッフは何名ですか?
服部 : 17名です。入院担当が4名、外来担当は、委託が10名、当院の後方処理担当が3名です。入院の4名と外来の10名のうち7名が保険請求業務を行っています。残業時間がしばしば40時間を超えていましたが、現在は30時間を切るようになったことで、残業代も減ってきています。最近、庶務課から全部門の昨年と今年の残業時間が数字で出されるようになりました。そこで医事課全体で残業時間がかなり減っていることがわかりました。
スタッフの方の感想は。
服部 : 『べてらん君』ですでに点検したレセプトが出てくることが以前のシステムと比べても一番の違いです。細かい薬や検査の一つひとつも出してくれて、参考病名も表記されるため、先生方のチェックもマルで囲むだけで終わります。以前は、先生方の書かれた病名の文字が読みにくい場合など、解読する時間がかかっていました。参考病名が出てくるところがとても楽だと思います。
『べてらん君』導入のメリットをお聞かせください。
服部 : 残業と査定率の減少による経済効果が非常に大きいと実感しています。
サポート体制についてはいかがですか?
服部 : ソフトの使用中にわからない点があると、メーカーにはメールや電話で即答していただけます。担当の方が不在の場合でも、すぐに折り返し電話をいただけるなど非常に助かりました。当院の要望に対しても、今まで、病名の追加設定や薬に対する病名の追加設定、放射線系の部位のチェックのやり方を教えてもらいました。また、要望が叶わない場合でも対応策を示していただけます。さらに、毎月更新データを送っていただけるため非常に安心できます。
今後はどのように『べてらん君』を使っていきたいとお考えですか。
服部 : 査定に対しての追いかけをして、育てていきたいです。また、福岡県独自の査定内容など、地道に加えていきたいです。
院長からは?
服部 : もっときめ細かく内容をチェックして、可能な限り査定減を目指すように指示されます。院長から注意点や傾向を教えていただけるため、非常に心強いですね。
また、毎月、医事課から医師別の査定率が出るため、他の先生は匿名化されていますが、先生方は各自の立ち位置がわかり、個人的に査定の傾向をつかむことができます。病院全体の取り組みとしては、毎月『保険診療委員会』を開き、支払基金や国保連から送られてきた一覧表をチェックして、査定理由を議論しています。今後は、『べてらん君』を使いこなして、毎月同じ様な内容で査定されることなどを無くしていきたいです。
今後の抱負をお聞かせください。
服部 : 『べてらん君』を少しずつでも育てていって、より精度を高めていき、院長の喜ぶ顔が見たいです。