日本

導入事例

京都府医師会

京都市における対策型胃内視鏡検診への取り組み

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このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

クラウドサービスを活用する事で広域をカバーし、自院で二次読影を実施。
オンライン上で二次読影やピロリ菌感染所見の記録などを実施する画期的なシステムを構築した京都府医師会。

  • * 本記事は取材日時点の情報であり、記事の内容や、施設名、所属、役職などは最新の情報とは異なる場合があります。

京都第二赤十字病院 健診部 部長
京都府医師会消化器がん検診委員会 委員
胃がん内視鏡検診運営小委員会 副委員長
小林 正夫 先生

国立病院機構 京都医療センター
消化器内科 健診センター
京都消化器医会 理事
京都府医師会
消化器がん検診委員会 委員長
前川 髙天 先生

角水医院 院長
京都府医師会 理事
角水 正道 先生

古家医院 院長
京都府医師会 理事
京都消化器医会 会長
古家 敬三 先生

日本国内における胃がん検診の現状は。

前川先生 2013年にピロリ菌感染胃炎に保険適用が拡大されてから、毎年150万人以上が除菌され、胃がんの死亡数も減少傾向にありますが、2018年のがん統計予測を見ると、胃がんの罹患数は12万8,700人、死亡数は4万5,900人。実に3人に1人が亡くなるとされています。一方で、胃がん検診に目を向けますと、2016年に厚生労働省が示す「がん予防重点教育及び検診実施のための指針」に胃内視鏡検査が加わり、対策型胃がん検診に内視鏡検査を導入できるようになりました。

そこで、京都府医師会消化器がん検診委員会では、2016年5月に、京都市における胃内視鏡検診の導入に向けて、胃内視鏡検診準備・検討小委員会を立ち上げました。そして、2014年に「胃炎の京都分類」が発刊され、2015年度からは高校生を対象としたピロリ菌のモデル事業が開始されるなど、ピロリ菌感染胃炎の診断、治療に注力してきた経緯がありますので、より効率的な検診にするために、萎縮度だけでなくピロリ菌感染所見をつけること、さらに二次読影、画像点検をより充実したものとすることなどをポイントにして検討を重ねました。

胃内視鏡検診の体制を整備する上で重視したことは。

Point
  • スピード感を持ってシステム作りを進めること
  • ピロリ菌感染に関する診断をしっかり行うこと
  • 幅広く受診しやすい体制を整備すること

角水先生 我々が考えたポイントは主に3点あります。第一に、京都府医師会としては以前から行政に内視鏡検診を実施するように働きかけを行い、それがついに実現するということになりましたので、スピード感を持ってシステム作りを進めること。第二に、胃がん検診ではありますが、胃がんのリスクを見るために、あるいは予防するために、ピロリ菌感染に関する診断をしっかり行っていきたいということ。そして、第三に、徐々に内視鏡検診の普及が進んではいるものの、まだまだ胃内視鏡検診を受けていない方もいらっしゃるので、より幅広く、受診しやすい体制を整備することを重視しました。

胃内視鏡検診の体制を整備した流れは。

小林先生 京都府医師会では、2016年5月から、日本消化器がん検診学会が発行している「対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル2015年度版」にできるだけ準拠するかたちで検診のシステム作りを始めました。しかし、マニュアルで求められている二次読影のシステムを早急に作り上げるのは難しく、スピード感を大切にしたいという考えもありました。そこで、まずは、マニュアルに従って専門医が複数勤務する医療機関において、当該施設内で二次読影を実施する「施設内二次読影方式」を採用し、2017年6月から胃内視鏡検診をスタートさせました。

その後すぐに、広く開業医の先生方も参加できる仕組み作りを開始し、検討を重ねた結果、ASSISTA Medical checkup-ES(以下、AMCES)を導入。2018年11月から、実施医が読影・記載した検診データをクラウド上で共有する富士フイルム社製の「一般二次読影方式」を開始し、現在は、施設内二次読影方式と同時並行で運用を行っています。

AMCESに魅力を感じた点は。

角水先生 富士フイルムが自社で開発した製品であるため、今後も含めて我々の要望に柔軟に対応していただけるのではないかと思いました。また、AMCESを設置するすべての医療機関で接続確認を行う、あるいは二次読影を行う先生方それぞれに対して、要望に応じて立ち会うなどのサポート体制も安心できると感じました。

AMCESを用いた一般二次読影方式(京都モデル)

検診結果の最終判定を行うのは。

小林先生 各都市の胃内視鏡検診のあり方を調査したところ、最終判定を実施医が行うのか、二次読影医が行うのかは都市によって異なっていました。そこで、委員会で検討したところ、実際にリアルタイムで見ている一次読影の先生が最終判定を行うべきだろうという意見が大勢を占めたため、京都市では、実施医が二次読影医の結果を参考にして最終判定をつけるという流れを採用しています。その際、AMCESを用いた一般二次読影方式では、一次読影、二次読影それぞれの結果がクラウド上で共有されるので、時間が短縮され、スムーズな運用が可能となっています。

2016年 2月

対策型胃がん検診に内視鏡検査の導入が可能に。

2016年 5月

胃内視鏡検診準備・検討委員会の立ち上げ。検診システム作りを開始。

2017年 6月

「施設内二次読影方式」による胃内視鏡検診を開始。

2018年11月

AMCESを用いた「一般二次読影方式」を並行して運用開始。

一般二次読影方式で、クラウドを用いた自院での二次読影を採用した狙いは。

小林先生 他の大都市で参考にされているシステムは、医師会に一定の日、一定の時間に集まり、マンツーマンでダブルチェックを行うもので、執務の費用も発生しますし、何より忙しい先生方の時間を2~3時間程度奪ってしまうわけです。このスタイルは大都市であれば運用できますが、全国に普及させることを考えると、医療資源の限られた自治体ではどうしても無理が生じます。AMCESを用いた自院二次読影のスタイルは、京都府下はもちろん、全国の実施医、読影医が少ない自治体でも運用可能となるようなモデルを作りたいという思いで検討を重ね、設計したものでもあります。

前川先生 「対策型検診のための胃内視鏡検診マニュアル2015年度版」では、ダブルチェックにかかる時間の制約から撮影コマ数は30~40コマが適当とされています。しかし、京都市では画期的なオンラインシステムを採用していますので、そのような制約がなくなり、二次読影に必要かつ十分なコマ数を撮ることができます。また、コマ数の制約がなくなることで、がんが見つかって過去画像を見返す際にも、十分な検討に耐えうる画像が残っているというメリットもあります。

自院での一次読影の課題は。

小林先生 マンツーマンで行うダブルチェックは、実施医と二次読影医がペアになって画像を見るので、その時に撮影の技術や読影のポイントなどについて直接指導できるという大きなメリットがあります。しかし、クラウドを用いた自院読影では、二次読影医が詳細なコメントをつけて実施医に結果を戻すものの、直接指導は行えないため、実施医のスキルアップという点において課題があります。

精度管理、スキルアップのために行っている取り組みは。

古家先生 精度管理においては、見逃しをなくすことと、不必要な精密検査を減らすことの二つが大きな課題となっています。京都では従来からその両方の精度管理で最も重要なことはピロリ菌感染対策だと考え、京都府医師会消化器がん検診委員会が2015年にまとめた「行政とともに医師会が取り組むべき胃がん対策」という提言書などでもその点を強調してきました。そのような流れの中で、AMCESの導入にあたっては、できる限りピロリ菌感染に関する情報を書き込めるような検討をお願いし、現在はダブルチェックの時にAMCESに書き込まれた情報が精度管理で有効となるように検討を行っています。

そして、スキルアップについては、京都府医師会消化器がん検診委員会が中心となって、定期的に画像点検を行ったり、教育的な症例を集めた勉強会を行っています。また、もちろん座学による研修会も定期的に開いていますし、今後は、必要に応じて個別指導を実施することも検討課題になっています。そして、これらのあらゆる場面で教育ツールとしてAMCESが活用できるのではないかと考えています。

蓄積された検診データの活用方法は。

前川先生 現在は、紙媒体を用いた施設内二次読影方式とAMCESを用いた一般二次読影方式の2系統のデータを統合して、受診率や要生検率、がん発見率などの精度管理に関するデータを蓄積している段階です。その中で、AMCESのデータに関しては、まだデータ数が膨大ではないので、小委員会で全例確認して、検討を行っています。今後は、2系統になっているデータを一元化して、データの正確性や検索性を向上させることで効率的な精度管理や、医師を含めた関係者のスキルアップにつなげていきたいと考えています。

小林先生 京都市では、ピロリ菌感染のデータもしっかりと収集する仕組みを作りましたので、今後の胃がん対策を考える上でも非常に参考になるデータが収集・蓄積できるのではないかと期待しています。

角水先生 AMCESは、“内視鏡検査→二次読影→判定”の一連の運営にはとても便利なサービスですが、しっかりとした精度管理を行うには少し工夫が必要になります。今後、精度管理が自ずと行えるようなシステムになればさらに使いやすくなると思いますし、さまざまな自治体でこの方式が活用されていくのではないかと期待しています。

  • * 本記事は取材日時点の情報であり、記事の内容や、施設名、所属、役職などは最新の情報とは異なる場合があります。