日本

内視鏡システムのインタビュー

大腸がん検診の受診率向上と内視鏡検診の普及への取り組み

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

京都府立医科大学附属病院
消化器内科 講師
吉田 直久 先生

大腸がん検診の現状は。

2018年9月に国立がん研究センターが発表した「がん統計予測」では、大腸がんの罹患数は1位、死亡数は2位で、罹患数、死亡数ともに増加傾向にあります。他方、大腸がんの死亡数は罹患数の約1/3であり、大腸がんは治る可能性が高い癌でもあります。大腸がんについては地方自治体による検診があり、便潜血検査によって90%以上の進行がんを発見でき、進行がんであっても転移さえしていなければ十分に治る可能性があります。また、内視鏡で検診を行えば、早期がんも発見・治療でき、その多くが根治に導けます。

大腸がんの早期発見に向けた取り組みは、特に欧米で進んでいて、日本とほぼ同時期に大腸がん検診が始まったアメリカでは、行政による積極的な取り組みが功を奏し、国民の大腸がん検診に対する意識が向上しており、数年前に大腸がんの死亡数が減少に転じ、さらに現在受診率は約70%にいたっています。しかし、日本ではまだまだ検診に対する意識が低く、検診受診率は約40%にとどまっています。

がん罹患数予測(2018年)

国立がん研究センターがん情報サービス『2018年のがん統計予測』より一部改変のうえ作成

大腸がん検診の啓発活動を始めた経緯は。

大腸がんにおいても、世界規模で拡大を続けている、乳がん検診を啓発するピンクリボン運動と同様に、国、自治体、企業、各種の団体などが“大腸がんはどのような病気か”“どういう検査が行われるのか”のような基本的なところから啓発を行い、検診の受診率を高めていく必要があると常々考えていました。私はこれまでに多くの大腸内視鏡検査・治療を行ってきましたが、個人の力には限界があり、当然ながら私個人が病院内で行う診療だけでは、国全体の大腸がんの罹患数、死亡数を減少に転じさせることはできません。そのような悩みを抱えていた時に、京都府からの依頼で検診を啓発するウォーキングイベントに参加する機会があり、そこで病院外で健康な方々に検診を勧めていかなければならないと強く思い、啓発活動を始めました。

啓発活動の内容は。

大腸がん検診をより多くの人に伝えるために私個人でもできることはないかと考えて始めたのが“大腸がん検診啓発Tシャツ”を着て、マラソンレースに出場する活動でした。これまでに全国で30以上のレースに参加し、日々の練習でもこのTシャツを着用して街中を走っていますし、国内外のランニングをされているドクターにTシャツをお渡しして、レースなどでご使用いただくようにお願いしています。また、京都府や各種の団体と連携して、府民公開講座を開催したり、野球の試合やショッピングモールなどにブースを出展したり、2018年4月にはNPO法人「京都大腸がん検診啓発ランナーズK-Dr」を設立して、想いを同じくするドクターや患者さんたちと協力し、ホームぺージでの呼びかけやイベント開催などの啓発活動を行っています。

大腸がん検診の今後の展望は。

大腸がん検診の方法は、アメリカでは内視鏡検査が主流ですが、日本では便潜血検査です。便潜血検査は感度が非常に高い反面、偽陽性が多く、早期がんは半分程度しか発見できません。さらに、現状では便潜血検査で陽性が出ると、内視鏡検査に進むという2段構えになっています。迅速性や受診者の利便性を高めるためにも、さまざまな課題はありますが、将来的に検診として内視鏡検査を行う方向に進んでいくべきではないかと考えています。

大腸がん内視鏡検診に求められるものは。

検診においては、痛みが少なく、精度の高い検査が求められると考えています。以前は、大腸内視鏡は“つらい検査”と言われていましたが、近年は内視鏡が細くなって挿入性が高まり、前処置として服用する下剤の量も減っていますので、かなり負担が軽減しています。また、経過観察の方法はポリープの有無、サイズ、良悪性によって大きく変わってきます。したがって、検診であっても最新の内視鏡を用いるのはもちろん、適切に画像強調機能を使用し、ポリープの発見や良悪性の鑑別を正確に行うことが必要になります。今後も、内視鏡や検査方法の進歩もお伝えしながら、皆さんに興味を持っていただき、内視鏡検診の敷居を下げていければと考えています。

内視鏡検診の精度を高めるために工夫していることは。

10年ほど前に、内視鏡のレンズの汚れや曇りを防止するには、コーティング剤を塗布すれば良いのではないかと思いつき、研究を始めました。その後、2015年に内視鏡用くもり止めが製品化されました。現在多くの施設で採用いただき内視鏡用くもり止めの使用により、レンズの水滴付着が低減するので、見落としの可能性が減り、ストレスのない診断が行えると感じています。

今後の目標は。

今後も、大腸がん死亡数の減少を目指して、検診の普及と機器の開発を主軸に、あらゆる活動を行っていきたいと考えています。

直長癌、早期癌(粘膜内癌)、内視鏡治療後の再発病変、5mmと3mmの病変

白色光と比較し、LCIでは病変が見つけやすくなり、BLIでは良悪性の判別がしやすくなった