日本

POCT検査装置のインタビュー

インフルエンザとCOVID-19の同時流行に備えた医療提供体制整備
〜 かかりつけ医でインフルエンザ等他疾患との識別・重症度判定を 〜

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

東京都医師会 副会長
東京iCDC運営委員会 委員
日本医師会予防接種感染症危機管理委員会 委員
角田外科消化器科医院 院長
角田 徹 先生

角田先生は2020年8月4日の日本感染症学会や、9月17日の東京都医師会の提言策定メンバーでもあり、COVID-19対策の最前線で精力的に活動されている。

日本感染症学会の提言「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて(8月4日)」の策定に参画された経緯は。

日本医師会の常任理事である釜萢敏先生の推薦で、日本感染症学会のインフルエンザ-COVID-19アドホック委員会に参加し、釜萢先生と共にかかりつけ医としての立場から意見を述べさせていただきました。

提言の概要は。

インフルエンザとCOVID-19の同時流行に備えて、全国のかかりつけ医の先生にご使用いただきたい情報をまとめています。

まず、インフルエンザとCOVID-19の臨床症状の比較に加えて、全国、都道府県、二次医療圏単位での感染状況をそれぞれレベル1~4まで定め、診療においては症状だけでなく、周辺の感染レベルにも配慮することを推奨しています。流行している地域において、臨床症状のみでインフルエンザ と診断してしまうと、COVID-19を見逃すおそれがあります。そこで、流行期においては、原則として両方の検究を行うことを推奨するとともに、各流行レベルにおける検査の適応指針を示しました。

そして、検体の採取においては、呼吸器症状を呈する外来患者に対する個人防護具使用の推奨を掲載しています。これまで鼻咽頭ぬぐい液の採取における感染防御について議論がありましたが、2020年6月に国立感染症研究所などが発表したガイドラインにおいて、エアロゾル発生手技に当たらないと明記されました。したがって、今回の提言においては同ガイドラインに準拠し、鼻咽頭ぬぐい液の採取に際してはサージカルマスクを用いた標準予防策を講じることを推奨しています。

さらに、COVID-19およびインフルエンザを想定した外来診療検査のフローについては、臨床症状や感染レベルからインフルエンザもしくはCOVID-19が強く疑われる場合は、該当する検査を行い、鑑別が困難な場合は双方の検査を行うことを推奨しています(表1)。

表1:COVID-19およびインフルエンザを想定した外来診療検査のフローチャート

厚生労働省が公表した事務連絡「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について(9月4日)」の受け止めは。

COVID-19の感染が拡大し始めて以降、東京都では帰国者・接触者センターに電話をしてもなかなかつながらないという状況が続いていました。そこで、東京都医師会では、当初からまずはかかりつけ医に電話することを推奨していました。今回の事務連絡では、そうした東京都医師会として取り組んできたスキームが全国展開されるかたちになりましたので、まったく違和感はありません。

2020年9月17日に東京都医師会が発表した都民向けの「医療機関等へのかかり方の目安」については。

東京都医師会では、昨今の状況を踏まえて、都民の皆さん向けに医療機関等へのかかり方をより分かりやすく再整理しました。そこでは、受診希望者を①症状がある方、②症状はないが不安な方、③医療目的以外のその他の方に分類し、①はかかりつけ医などに電話していただく、②と③は行政が運営する新型コロナコールセンターに電話していただくようにお願いしています。

さらに、かかりつけ医向けに診察を行う際のCOVID-19とインフルエンザの鑑別診断および検査、治療のフローをお示ししました(表2)。東京都医師会では、7月からCOVID-19のPCR検査を実施できる連携先登録医療機関の募集を始め、現在では約1,100カ所まで拡充しました。これらの医療機関においてはPCRのための唾液検体採取のみを行い、検査自体は外注の検壺会社に依頼するケースがほとんどです。診療所でCOVID-19の抗原検在を実施することも考えられますが、実はそこで陽性が出てしまうと、その場でただちに患者さんを隔離して、保健所に連絡する必要があるため、場合によっては外来診療に支障が出て、他の患者さんに影響を及ぼします。したがって、かかりつけ医においては検体採取のみにとどめておく、もしくは新型コロナ外来やPCR検査センターなどの検査協力医療機関へ紹介するというフローになっています。

一方で、救急の現場においては、その場で迅速にCOVID-19の診断を行う必要性が高いため、東京都医師会として都内で二次救急を行う約250施設すべてに、抗原検査もしくはPCR検査が実施できる装置を配置する方針です。

表2:季節性インフルエンザ流行期におけるかかりつけ医対応の目安(成人用)

宿泊・自宅療養の判断基準
無症状・軽症者であって感染防止を遵守でき、重症化リスク(65歳以上、基礎疾患[糖尿病、心・呼吸器疾患、透析中、肥満(BMI>30)等を有す]、免疫抑制状態、妊婦)がなく、医師が必ずしも入院が必要ではないと判断したもの

かかりつけ医が電話で相談を受ける利点は。

かかりつけ医は、患者さんの状況や背景疾患を知っており、信頼関係も構築できているため、より適切な指示が可能です。また、経営面から言えば、普段から診察している糖尿病や高血圧等の患者さんであれば、療養上の指導管理にあたるため、電話再診として保険点数がつきます。これはかかりつけ医の先生方に電話で対応していただくインセンティブになるのではないかと思います。

次のインフルエンザ流行における検査の方向性は。

前回の流行期においては、鼻咽頭ぬぐい液の採取過程でエアロゾルの発生が危惧されたことなどから、インフルエンザの迅速検査が過度に控えられるという状況がありました。すでに述べたように、鼻咽頭ぬぐい液の採取はエアロゾル発生手技には該当しませんので、必要な検査をしっかりと行うべきということは医師会員の皆さんに強調しているところです。一方で、鼻咽頭ぬぐい液を採取する際の、飛沫発生の可能性はゼロではないので、代替法として鼻かみ液の使用を検討していただくのも良いでしょう。

インフルエンザ検査の感度に対する考えは。

インフルエンザとCOVID-19が同時に検査できればもちろん良いのですが、過去の流行期に使用されたインフルエンザの迅速検査キットは、最大で年間3000万件であるのに対し、COVID-19の迅速検査キットは、日本感染症学会で議論していた当時の推計で、その10分の1程度しか準備できないとされていました。今はもう少し数が増えていると考えますが、現実的には先にインフルエンザを否定してからCOVID-19に進むという流れは避けられないと思います。そうした中で、インフルエンザ検査まで偽陰性を意識しながら実施するというのは難しいため、検査精度は非常に重要になりますし、高感度であることで診断精度が上がり、適切な治療につながることは間違いない事実です。さらに言えば、鼻かみ液を使用した迅速検査キットについても、高感度で検出できるのであれば、二次感染予防の観点から非常に有用だと考えています。

今後、進むべき診療の方向性は。

無症状のCOVID-19患者が一定数存在する中で、COVID-19を恐れて発熱患者の診療を行わないというのはナンセンスです。症状のある方は、当然、医療の対象になりますので、インフルエンザおよびCOVID-19の疑いがある患者さんに対しては、かかりつけ医がしっかりと電話トリアージを行った上で、標準的予防策を取りながら適切な医療を提供していくことが重要です。

 

本記事は取材日(2020年9月)時点の情報であり、記事の内容や、施設名、所属、役職などは最新の情報とは異なる場合があります。