日本

ポータブルエコーのインタビュー

「膀胱エコーによる尿量確認と排泄アセスメント」前編

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

この記事では、在宅医療で超音波診断装置(ポータブルエコー)を活用して診断した症例について宮原 光興先生にお話を伺いました。今回は、神奈川県にお住まいの80代女性の症例です。

住まい:神奈川県
性別:女性
年齢:80代前半
家族構成:家族と同居
病状の概要:腎臓がん術後再発

2月の下旬、ある病院の先生から、長らく病院通いをしている患者さんについて相談の連絡がありました。

その患者さんは神奈川県在住の80代女性の佐藤かよこさん(仮名)という方で、腎臓がんを患い、肺と脳までがんの転移が見られ余命は1年ほど、抗がん剤が効かなくなり、痛みが出始め、意識も弱まっているとのことでした。

最近は通院が難しく、介護をされているご家族が「2週間前までトイレに行っていたけど、今は行けていない」と言われていると聞き、連絡をもらった翌日に訪問しました。

訪問診察をしたところ、佐藤さんは腹水がたまり、うまく排尿ができていない状態でした。この時思ったのは、病院の先生から話を聞いていた情報と、実際に診察して感じた情報とに、少し差があったということです。ご家族の方はそこまで差は感じていないようでした。

なぜ病院からの情報と実際に診察して感じた情報とに差が出たかというと、最近通院ができない佐藤さんに代わって、ご家族が先生と面談をして、病状の報告をされていました。実際に先生が診察していないため、現状との差が生まれてしまったのです。

このような中で現状が良くない旨を話さないといけないのですが、初対面の医師から突然、厳しい現状を伝えられたら……。ご本人もご家族も戸惑うことが想像できます。

このように、ご家族が現状を正しく把握されていない中で、私たちが初診で得た「良くない印象」を話さないといけない時、難しさを感じることがあります。

これは「在宅あるある」だと思うのですが、患者の方と病院の先生とは病気が見つかった時からの付き合いのため、信頼関係が結べていることが多い一方、在宅医師の場合は、いよいよ容態が厳しくなった時に紹介いただくことが結果的に非常に多く、初診時には信頼関係が結べていない状態のことがほとんどです。

そのため、いきなりお伺いし、いきなり厳しい話をしても「いやいや、病院の先生はそこまで言ってなかった」と言われがちというのが現状です。

このような時、ポータブルエコーで超音波診断を行い、画像を見せながら説明することで、患者さんとそのご家族に納得してもらえる確率が高くなります。

佐藤さんは腎臓が片方しかない方でした。膀胱のところで尿がせき止められている状態だとしたら、腎臓に悪影響が出る可能性が高くなります。

排尿できない理由について、そもそも尿が作られていないのか、それとも尿は作られているけど排出ができないのか、その原因を早急に把握する必要がありました。

そのため、ポータブルエコーを活用し、腎臓と膀胱の状況を見るという判断をしました。

それでは、次のページで、佐藤さんにポータブルエコーを活用した結果とその効果、活用のポイントについてご紹介します。

医師 / 在宅
一般社団法人medX 神田川訪問診療所 診療部長/悠翔会在宅クリニック川崎 前院長
宮原 光興 先生

出身大学:東京医科大学

主な経歴:東京都済生会中央病院、東京警察病院、東京医科大学病院など

専門(学会等):日本外科学会認定外科専門医、日本外科学会、日本消化器内視鏡学会、日本大腸肛門病学会、日本消化管学会

在宅医療に関わるきっかけ:これまで外科医として手術、化学療法などに携わっていました。そのような中、独居であった祖母が認知症、がんとなり、自宅での療養を開始しました。医師でありながら、自宅療養のリアルなイメージがつかず、また適切なサービスを提案できなかった経験が、在宅医療を始めるきっかけになりました。

患者様の人生に寄り添うには、病院だけでも在宅だけでも十分とはいえず、状況に応じたスムーズな連携が重要だと考えます。私は現在でも在宅医療に加え週1回の病院勤務を通じて、病院・在宅の両面から患者様をサポートする努力をしております。