日本

ポータブルエコーのインタビュー

ICUでPOCUSを使用する3つの利点
ポータブルエコーはこう使った
現場で働く医師が提言

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

医師 / ICU
藤田医科大学病院 救急総合内科
助教 日比野将也 先生

私は愛知県豊明市にある藤田医科大学病院の救命ICU(集中治療室)で働いています。7-9人の医師で構成されるチーム体制で、日々、重症患者さんの受け入れをしています。

患者さんは、重症化しやすい因子を持っている高齢者の方が多い一方、交通事故などの外傷が原因の場合は若い方もいらっしゃいます。年間で約500人の方がICUに入室され、1日だと通常は1〜2人ですね。ICUの患者さんはバイタルサインの異常により搬送が困難な場合が多いです。さらに、人工呼吸器が装着されていたり、血液浄化中であったり、複数の注射ポンプが接続されているといった理由もCT検査へのアクセスを悪くします。そのように、重症で急を要する患者さんに対して、ICU室にいながら、全身の評価や診断ができるエコーは、腹部や胸部、そして血管を見るために少なくとも1日1回は使用し、使用頻度も高いです。

一般病棟よりは広い部屋ですが、複数の生命維持装置が置かれている室内で、機器を慎重にかき分けて、患者さんの元に重たいケーブル付きのエコーをゴロゴロ動かしたり、エコーの電源を探して差し込んだりするのは大変でした。プローブのケーブルを踏んでしまったり、絡まったりしないよう、配慮が必要でした。

今回ポータブルエコーを使用し、「小型軽量」「ワイヤレス」「バッテーリー駆動」という点に利便性を感じました。使う場所を選ばないため、室内に透析機器や人工呼吸器などの医療機器があっても、ベッドサイドにモニターとプローブを持っていくだけでポンと当てて使える、ポータビリティが良かったです。

ICUにおいてポイントオブケア超音波(POCUS)を施す利点は3点あります。それは、「迅速性」、「低侵襲性」、「継続性」です。

まずは1点目の「迅速性」についてですが、「ショック」状態をすぐに確認したいと思ったとします。

もしCT室に行くとしたら、まずはCT室に電話をし、患者さんをお連れする時間を確認。その間にカルテに記入をし、ベッドを用意します。そして、出来るだけ身軽な状態でCTに行くために点滴の種類を減らし、ルートを減らす工夫をします。最後に、5、6人でベッドから乗せ替え、人工呼吸器を繋ぎ変えて、2,3人で搬送します。

そうなると、CTを撮りに行って戻ってくるまでに1時間はかかるんですね。患者さんの負担はもちろん、我々、医療従事者の工数もかかります。そのため、ベッドサイドでポータブルエコーを使えるのは、担当医として非常にありがたいことです。

次に、2点目の「低侵襲性」について。ICUの患者さんは、絶対安静が求められる人が多いです。先ほど、ICU室からCT室までの行き帰りが大変というのをお伝えしましたが、重篤な状態でCT室に行くことは、生命を脅かす行為につながります。また、CTを撮ることは放射被曝のリスクもあります。ポイントオブケアでポータブルエコーを使用する際は、この移動と被曝によるリスクはなくなります。

最後に、「継続性」についてです。CTはどうしても「点」での検査になります。CTは何回も撮りに行けないため、その時点での評価になりますが、エコーは繰り返し評価できる利点があります。「今この時点はどうだった」、「1時間前はこうだった」、「1時間後はこうなった」といった具合に、患者さんの病態を時系列で把握しやすくなります。例えば、胸水や腹水の経時的評価する際にポータブルエコーは使い勝手が良いと感じました。

直近で、ポータブルエコーを使用した事例を紹介します。ER(救急外来)から連絡あり、60〜70代の男性がICUに入室してきました。その男性は、肝臓と腎臓が悪い状態でした。バイタルサインが悪い状態で、腎代替療法を行っていたので、CTを撮りに行くのは難しいと判断。ポータブルエコーで腹水と胸水の量、そして血管内ボリュームの評価を行いました。

藤田医科大学病院では、新型コロナウイルスの陽性患者の受け入れを早い段階からしていました。新型コロナウイルス感染の疑いのある患者さんに対しては、検査結果で陰性と判明するまでは、コロナウイルス感染症患者として対応をしていました。該当患者さんに使ったポータブルエコーは、画面とプローブ両方ともアルコール消毒をし、念入りに拭き上げていました。凹凸が少ないことやワイヤレスでケーブルを拭く必要がないことは、保清の面でも利点を感じました。今はwithコロナの時代のため、コロナの疑いがない患者さんに対しても、使用後はアルコールで拭くようにしています。

エコーを使用する上で、重視する点に画質と汎用性があります。「肝臓と腎臓は見やすいけど、それ以外は見にくい」となると、現場で使用するのは難しいです。ポータブルエコーにおいても、様々な部位を高画質で描出できることと、2点間の距離計測機能は必要だと感じます。

ポータブルエコーが活躍する場は、在宅医療など多岐にわたると思います。ICUでの使用に関しては、やはり「場所を取らない」、「場所を選ばない」ということが大きいですね。その利点については、使用していた他の先生も同様に言っていました。

カートをゴロゴロ動かすのは、エコー検査を実施する閾値が上がるというのが正直なところです。ポケットに入れて持ち運びができることは、患者さんをより頻回にエコーで評価をしようというモチベーションにつながります。その結果、「エコーを使ってより正確に評価をしよう」という動きにつながっていきます。そういった意味で、ポータブルエコーを使用することは、間違いなく患者さんにとってもプラスになると考えます。