日本

ポータブルエコーのインタビュー

エコー穿刺で難しい結果でも迅速・確実に穿刺
透析エコーで患者との信頼関係を構築

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

臨床工学技士
わかやま透析クリニック中野南台
共同代表 若山 功治 先生

私たちのクリニックは2019年9月に開院し、主に慢性腎不全により血液透析が必要な患者さんの治療を行っております。全国的に糖尿病を患って腎不全になってしまう方が多い中、当院でもやはり糖尿病を原因として透析をされる方が多くなっています。患者さんの年齢層は、65歳以上の患者さんが7割以上を占めています。最高年齢は90歳の患者さんがいらっしゃいます。現在は40名程度の患者さんが通院されており、日々平均すると、5〜6名の患者さんに対してバスキュラーアクセスの観察やエコーガイド下穿刺にエコーを使用している状況です。

わかやま透析クリニック中野南台 共同代表 若山 功治 先生

血液透析というのは、一般的に週3回通院し、4時間の治療を行います。1回の治療で、腕の血管に針を2本刺し、毎回「傷」を作ることになります。同じ箇所への穿刺を反復すると、血管が荒廃し、狭窄や瘤の原因となってしまいます。そのため、穿刺は広範囲の血管に行い、なるべくいい状態の血管を維持したいと考えています。

しかし、実際に穿刺の位置を治療のたびに毎回変えるとなると、穿刺が難しい血管にも穿刺を行わなければならない場合もあります。

穿刺というのは、血管の形態や走行をいかに忠実に認識できるかどうかにかかっています。そのために、皮膚の上から血管を見る「視診」と、指先で血管を触って認識する「触診」で行います。

その二つの方法で、皮下の血管の状態を頭の中で3D化し、そのイメージに沿って針を刺していきます。血管が深い患者さんの場合、視診や触診で血管を認識することが難しい場合があります。そうすると広範囲に穿刺をすることが極めて難しく、刺しやすい場所に限局して針を刺すことが続いてしまいます。その結果、穿刺している部分が瘤化してしまったり、止血困難になったり、また、感染なども起こし易くなってしまいます。このような難しい血管の場合、エコーを使用することで、穿刺部を広範囲に選択できるようになるため良好な血管の維持に有効と考えています。

エコー穿刺中先端観察

現在の透析患者さんは、年々高齢の患者さんが増えているように感じます。ADLの低下した患者さんも多く、多くの患者さんは当院まで送迎サービスを利用しています。基本的に送迎の時間は患者さんごとに決まっており、治療の延長や離床の遅れは送迎スケジュールに影響を与えるため、我々、現場のスタッフには治療を予定通り進めることが求められます。もし治療開始時に穿刺トラブルが起こると、治療終了時間を遅らせてしまいます。よって、穿刺を行う際には「迅速性」と「確実性」が求められることも少なくはありません。

穿刺がうまくいかなかった場合、一度針を抜き、いったん止血をし、再度穿刺をすることもあります。そうなると、当初の予定より治療終了が10〜15分程度遅れることになります。また、スタッフも止血や再穿刺など、その場に拘束されてしまいます。また、次の患者さんの入室時間にも影響を与える可能性もあります。予定通りの治療が行えないということは、様々な業務に影響を与える可能性があります。

穿刺において、迅速性と確実性が必要な場面は必ずあります。当院において穿刺へのエコー使用は、迅速かつ確実な穿刺を可能とし、また、円滑な透析スケジュール管理に大いに役立っています。今後もエコーは透析現場において重要な役割を担うと思っています。

先述の「難しい血管」の穿刺以外でも、エコーを使用する機会はあります。まずは、定期のシャントエコー検査で使用しますが、それ以外でも穿刺前の理学的所見でシャントに異常を感じた時にその場でエコーを使用し、観察を行います。

他には、治療開始後、血液が上手く脱血できなかったり、治療中に静脈圧上昇などの圧力上昇が起きてしまったりする場合もエコーを用いることがあります。治療中にエコーを常備しておき、何かトラブルが生じた時、その場で原因を検索する手法の一つとしてエコーは活躍します。

まとめると、透析現場でエコーを使用するケースは基本的にはこの4パターンです。①「難しい血管」への穿刺時、②定期的な検査時、③穿刺前の理学的所見にて何か異常を感じた時、④治療中にシャントに関連するトラブル時、となります。

ポータブルエコーは、最初からもしくはブラインド穿刺をしてからの修正、あとは治療中の針の位置調整に使っています。
使用するプローブは、基本的にはリニアプローブのみしか使用していません。

穿刺中

穿刺後

当院で穿刺時にエコーを使用する事例をご紹介します。当院では基本的に血管が深い患者さんや、表在化動脈の患者さんを中心にエコーを使用しています。

その他に、「(穿刺を)失敗しないでほしい」という患者さんにも使用しています。特に、これから透析を始める導入患者さんにとっては、痛みのある穿刺は怖いですし、ストレスになります。なるべく痛みは少なく毎回スムーズに穿刺してほしいという思いを持って、当院に見学に来られる方もいらっしゃいます。特に、当院で治療を開始したばかりの患者さんの場合、我々との関係性も薄く、そんな中でいきなり穿刺ミスをされてしまうと患者さんと信頼関係を構築が困難になる場合があります。また、エコーを使用することで、初めて来院された患者さんから「こんな(穿刺が)スムーズにいくの?良かった、青あざになることもあったから。」と驚きの感想をいただくことも少なくありません。スムーズな穿刺を提供することは、患者さんの不安やストレスの緩和にもつながりますし、私たちへの信頼も深まると思います。

ラップトップ型エコーとポータブルエコーの使い分けですが、しっかりと検査をする必要がある時はラップトップ型エコーを、穿刺をスムーズに行うために手軽に迅速に使用する際はポータブルエコーを、と使い分けています。

血流量を測定ができるラップトップ型エコーの使用は、定期的な検査や異常があった時のシャントの確認に使います。ラップトップ型エコーはノートパソコン型のため、ベッドサイドで使用する場合には置き位置を考える必要があります。

一方、ポータブルエコーの場合は、穿刺前にちょっと血管を観察したい時や穿刺トラブル時に使います。ポータブルエコーを使用した際に「ちょっとここの血管が狭い」とか、「血栓が出来ている」などで、もう一段階しっかりと観察・評価を行いたい場合に、ラップトップ型エコーに変更します。

狭窄評価

ワイヤレスのポータブルエコーは、ケーブルの取り回しに対する配慮が不要でプローブの走査がとてもしやすく、ある程度離れていても見えるモニタは、場所を選ばずに好きなところに自由に配置できることがワイヤレスの利点です。

現在のポータブルエコーは、画質も鮮明で内膜肥厚や偽腔、金属針の内筒だけでなく留置した後の外筒もきれいに描出出来ます。エコーの性能において、やはり画質は良いに越したことはありません。最初の治療開始時刻から最終の治療終了時刻までポータブルエコーは必要時にすぐ使えるように待機させています。

エコーを導入する前後で、大きく変化したことの一つは、再穿刺の回数が減ったことです。以前は、視診や触診にて血管をイメージしていましたが、実際の血管はそのイメージとは異なり、穿刺ミスからの再穿刺を行う事が少なからず発生していました。特に、穿刺経験の多いベテランと経験値が少ない若い方とでは、その実際の血管とイメージに乖離が出やすくなります。そうなると、針が上手く血管に入らないことも多くなります。

私が新人だった頃、4回、5回穿刺をしても針が刺さらない患者さんや、「今日は治療をやめて明日仕切り直しましょう」と、もう一度治療に来ないといけなくなってしまった患者さんもいました。穿刺ミスはある程度つきものだという文言をスタッフが患者さんに説明することも少なからずありました。しかし、本来、穿刺は医療行為であり、ミスはあってはならない訳ですから、エコーの使用など、常に極力ミスを回避できる技術の習得に努める必要があると思います。

穿刺へのエコー導入で起こった一つの変化は、穿刺をする側もされる側も、ストレスが減ったことです。穿刺が難しい患者さんの穿刺をする場合、「穿刺がうまくできなかったらどうしよう…」など、穿刺に悩みを持つスタッフも少なくありません。実際に、穿刺が上手くいかない時には、冷や汗が背中を滴ることもよくあります。穿刺に関して苦い経験が重なると、トラウマになる人もいて「穿刺はしたくない」というスタッフも実際にはいました。

患者さんにとっても、穿刺がうまくいかず痛い思いをすることは大きなストレスになります。透析治療が嫌になったり、特定のスタッフを嫌うようになってしまったりすることもあります。「穿刺に失敗はつきものだ」、「自分の血管が悪い」などと、諦めや卑屈になってしまう患者さんもいます。

エコー穿刺を用いることで、自分は「うまく刺さないと」「失敗できない」などのストレスから解放されました。患者さんにおいても、穿刺に対するイメージも変わり、今まで以上に円滑なコミュニケーションを取れるようになってきたと思います。穿刺において、患者さんとの関係性作りは想像以上に大切です。その一つの手段として、エコーはとても役立っていると感じています。

初めて透析室内でエコーを触ったとき、知りたかった皮下の状態が目に見てわかることがとても新鮮で、様々な発見がありました。一方で、エコーといったら高価で大きいコンソール型の物が一般的で、簡単に購入・設置できませんでした。また、間隔が1メートルもない透析室のベッドサイドで、大きいコンソール型のエコーを使用するのは困難で、一部の医師以外のスタッフは「高価な機械だ」、「むやみに触って壊してはいけない」と思って使っていませんでした。

ポータブルエコーを導入することにより、手軽に持ち運びができ、誰でもどこでも迅速にエコーが使えるようになったため、使用頻度はかなり増えました。それにより、穿刺をする様々なスタッフたちの意識も高まり、積極的にエコーで血管を観察するようになりました。多くのスタッフがシャントへ関心を持つようになったことで、よりよいバスキュラーアクセス管理が実現でき、質の高い透析治療の提供につながると考えています。

エコーを導入することで再穿刺の回数は間違いなく減ります。ただし、「穿刺ミス」となると、定義が難しいです。穿刺が上手くいかないために何度も刺して戻してを繰り返し、でもなんとか針を刺せたらそれはミスではないと言っていいのでしょうか(青あざが出来ても)。血管内に穿刺が出来たとしても、うまく血液を取り出せなかったり、血液を返す圧力が高かったりして治療が継続できない場合、ミスではないと言っていいのでしょうか。一つ言えるのは、そういった穿刺行為におけるトラブルも再穿刺の回数と同じように減っているように感じています。

長期的に良好な血管を痛ませず、なるべく温存するためには、穿刺ミスはあってはいけないでしょう。また、穿刺部位を広範囲に何か所も刺せる場所を確保することも必要となるので、それをポータブルエコーが体現する形になります。

エコーの導入は、新規患者さんの集客や患者さん・スタッフのトラブル軽減、円滑な業務の遂行など、簡単には換算できないですがメリットは大いにあると思っています。