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ポータブルエコーのインタビュー

「便秘評価におけるエコーの活用とポリファーマシーへの取り組み」後編

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

前編にて、患者である佐々木さん(仮名)の状態についてご紹介しました。後編では、ポータブルエコーを活用した結果とその効果、活用のポイントについてご紹介します。

佐々木さんは胃がんの手術経験がありました。術後にお腹が痛く、お通じが出なくなった場合、緊急性を疑うのは腸閉塞です。そこで、判断のためにポータブルエコーを活用した結果、腸閉塞ではないことが確認できました。

緊急性を除外できたので、今度は便秘の詳細を確認するためポータブルエコーを当てたところ、便秘を確認できました。佐々木さんは高血圧、高コレステロール血症、認知症と不眠症を患っていて、薬の処方が多く、その薬の副作用で便秘になっている節がありました。そこで、服用している薬を見直すことを提案しました。最低限の適切な薬に調整したところ、便秘が解消されました。

腹痛や便秘などの訴えが減った結果、佐々木さんは体の動きがよくなり、介護度が下がるまでに至りました。実は以前、看護師がご自宅に行く度に摘便や浣腸をしていました。摘便や浣腸は、身体的にも心理的にも負担が大きいです。それらを回避できたことも、ポータブルエコーを活用した効果だと考えています。

佐々木さんは薬の変更を受け入れてくれましたが、中には長年服用している薬の変更に抵抗がある患者さまもいます。「この薬でいいんだから」や「これをずっと飲んでいるから変えるのが心配」と言った声を聞くことがあります。

そのような際、ポータブルエコーで撮った画像を示すことで、お通じの硬さなどを視覚的に説明することができます。例えば、「このお通じの状態だと、こういう薬が必要ですが、今飲んでいる下剤だけだとあまり効果が期待できません。違う薬に変えましょう」といった具合に、根拠を持って伝えることができます。そうすることで患者さまの納得感が高まり、その結果、薬の変更の受け入れにつながります。

お通じは基本的に毎日あるものです。ある日便秘が治ったとしても、それは一過性に過ぎないことがあります。医師が便秘と診断した場合、便秘の症状を確認するポータブルエコーは看護師も活用できます。

一概に便秘と言っても色々な要因があり、治し方も様々です。ポータブルエコーを活用することで、お通じが硬いか柔らかいか、直腸に降りてきているか否かなどを把握することができます。その後の便秘の処置の方法を医師だけでなく看護師に任せていくことで、より多くの患者さまを診ることができると考えています。

最後に、今回の症例・ポータブルエコーの活用ポイントについてまとめておきます。

症状把握:常にお腹の張りと痛みを感じていて、常習的な便秘を患っている。

ポータブルエコーの活用を決断した理由:    患者は胃がんの手術をしており、手術後に腹痛を訴えた。手術後の便秘は腸閉塞の可能性もあるため、その有無を確認するためにエコーを活用した

活用結果:腸閉塞ではないことが判明。便秘の状態も確認できたため、処方する薬の調整をした。
 
活用の効果:便秘を副作用にもつ薬の量が減ったことで、便秘をはじめ体が以前より動くようになり、介護度が下がった。これまで看護師が訪問のたびに摘便または浣腸をしていたが、それを回避できるようになった。

活用のポイント: これまで慣れ親しんでいる薬を変更または中断することに抵抗のある患者は多いが、エコーの画像で現状を説明することで、患者本人が納得して変更を受け入れることができた。

医師 / 在宅
一般社団法人medX 神田川訪問診療所 診療部長/悠翔会在宅クリニック川崎 前院長
宮原 光興 先生

出身大学:東京医科大学

主な経歴:東京都済生会中央病院、東京警察病院、東京医科大学病院など

専門(学会等):日本外科学会認定外科専門医、日本外科学会、日本消化器内視鏡学会、日本大腸肛門病学会、日本消化管学会

在宅医療に関わるきっかけ:これまで外科医として手術、化学療法などに携わっていました。そのような中、独居であった祖母が認知症、がんとなり、自宅での療養を開始しました。医師でありながら、自宅療養のリアルなイメージがつかず、また適切なサービスを提案できなかった経験が、在宅医療を始めるきっかけになりました。

患者さまの人生に寄り添うには、病院だけでも在宅だけでも十分とはいえず、状況に応じたスムーズな連携が重要だと考えます。私は現在でも在宅医療に加え週1回の病院勤務を通じて、病院・在宅の両面から患者さまをサポートする努力をしております。