日本

皮膚科医によるポータブルエコーのインタビュー

糖尿病があり足にタコができた40代女性

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

この記事では、超音波診断装置(ポータブルエコー)を活用して診断した症例についてご紹介します。今回は、皮膚科医の倉繁祐太先生が診察した糖尿病の40代女性の、足底の胼胝の症例です。

住まい:群馬県
性別:女性
年齢:40代
病状の概要:足底の胼胝 、糖尿病

40代女性の橋本かおりさん(仮名)は、足底の痛みが強くなったために来院されました。以前も別の皮膚症状で来院されたことがある方でしたが、この症状での受診はこの時が初めてでした。強い痛みがあった部位は、この臨床写真の中央にある、厚く硬い部分です。臨床症状から、胼胝(べんち)と診断しました。俗称でタコと呼ばれる日常疾患です。足型に合わない靴の使用や長時間の歩行、立ち仕事などにより、摩擦や圧迫などの刺激が加わり皮膚の最外層である角質が積み重なることで生じます。

橋本さんは糖尿病の既往がある方でした。糖尿病の患者さんは胼胝に細菌感染を生じやすく、悪化すると糖尿病性壊疽になり、下肢の末端が壊死してしまいます。重症例では下肢の切断を余儀なくされる可能性もあります。そのため、特に糖尿病の既往がある患者さんに対しては、足底の胼胝に炎症や感染が生じているかどうかを評価することが皮膚科医の重要な役割になります。

橋本さんは胼胝に一致して強い痛みを訴えていました。胼胝に痛みがある患者さんでは、病変が硬いことのみが原因である場合と、胼胝下の真皮や皮下組織に炎症や感染、膿瘍を生じている場合があります。感染の早期では、視診のみで炎症の有無を判断することが困難で、診断のためには通常メスを用いて胼胝を削り取る必要がありました。そこで、侵襲を伴う処置を行う前に、ポータブルエコーを活用して観察を行いました。

ポータブルエコーで観察した結果、真皮内に境界不明瞭な低エコー領域と後方エコーの増強がみられ、胼胝下に膿瘍が形成されていることが示唆されました。そこで胼胝を削り取る処置を行うと実際に排膿がみられ、「胼胝下膿瘍」と診断しました。橋本さんの症状は感染の早期であり、糖尿病性壊疽には至っていなかったため、抗生剤の内服と抗菌外用薬で治療し、慎重にフォローを継続する方針となりました。

最後に、今回の症例・ポータブルエコーの活用ポイントについてまとめます。

症状把握:左足底の強い疼痛
 
ポータブルエコーの活用を決断した理由:    患者は既往に糖尿病があり、胼胝周囲に強い疼痛を訴えていたことから、胼胝下に膿瘍を形成している可能性があった。皮下組織内の膿瘍形成の有無を確認するためにポータブルエコーを活用した。
 
活用結果:エコー所見より、膿瘍形成が示唆された。胼胝を削り取ることで排膿を確認した。

活用の効果:視診では炎症や感染の有無の評価が困難であったが、ポータブルエコーを活用することで「左足底胼胝下膿瘍」と診断できた。
 
活用のポイント:糖尿病患者では足底の胼胝に感染を生じ、糖尿病性壊疽に至り、治療が遅れると下肢の切断が必要となる。ポータブルエコーを活用したことで、胼胝下膿瘍の早期発見・早期治療に繋がった。

医師 / 皮膚科
倉繁皮ふ科医院 副院長
倉繁 祐太 先生

出身大学:東海大学医学部卒業、東京医科大学大学院医学研究科修了(博士・医学)

主な経歴:東京医科大学(助教)、東海大学医学部付属病院(講師)、TMGあさか医療センターなど

専門(学会等):日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本褥瘡学会認定褥瘡認定医師、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本臨床皮膚外科学会専門医

皮膚科医を志したきっかけ:医学生時代の臨床実習で、皮膚科学に強い興味を持ったことがきっかけです。皮膚疾患の診断は、熟練した“皮膚科医としての目”を必要とする、まさに“匠の技”であり、皮膚科医として18年経った現在でも、修練を重ねる毎日です。一方で皮膚科学は皮膚外科手術や皮膚病理診断などの幅広い分野を網羅した学問であり、視診・触診による臨床診断にはじまり、エコーなどによる画像診断、手術による病変の摘出・治療、病理組織による確定診断までをすべて網羅しています。そのため一人の患者さんに対して、初診から治療を終えるまで一貫して関わることができる点が大きな魅力です。

これまでは大規模な病院の勤務医として、皮膚がんの手術や薬物治療、褥瘡診療などを含む皮膚疾患全般の臨床業務を行ってきました。近年はポータブルエコーが身近な存在になったこともあり、皮膚疾患に対して、クリニックや在宅においても今まで以上に高度な診療ができるようになりました。そこで、より幅広い患者さんの診療に携わりたいと考え、母が院長を務めるクリニックに入職して地域医療に邁進しています。また、月1回在宅診療に従事しており、今後も皮膚科医として自身が活躍できるフィールドを拡げたいと考えています。