日本

ポータブルエコーのインタビュー

排尿障害の診療におけるポータブルエコーを用いた残尿測定の重要性 ~簡便かつ正確に尿量を測定

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

上田クリニック
泌尿器科
上田 朋宏 先生

私が診断・治療法を世の中に広めた「間質性膀胱炎」の患者さんに限らず、排尿に関する悩みを抱えている方は全国に多くいらっしゃいます。

そうした方々の診療を行う際は、検尿、残尿測定、膀胱内圧測定の3つがポイントになり、特に残尿測定においては主にエコーを用いて評価を行います。そして、当院では看護師が残尿測定を行う際に、ポータブルエコーの膀胱尿量自動計測機能を活用しており、画像が見えることは精度管理上も有用だと感じています。

私は、1994年に間質性膀胱炎(膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する疾患)に出会い、その診断・治療法を発見しました。その後、2005年に京都市立病院の泌尿器科部長に就任し、間質性膀胱炎だけでなく、あらゆる泌尿器疾患の診療を行っていましたが、日本国中から多くの患者が押し寄せたことから排尿に特化したクリニックの必要性を感じ、「上田クリニック」を開業しました。

また、診療と併行して取り組んでいる活動として、NPO法人「快適な排尿をめざす全国ネットの会」があります。このNPO法人は、2000年に介護保険制度がスタートし、2004年に国立長寿医療センターが開設され、排尿の問題を科学的に解決しようという流れが大きくなる中で、排尿に関する正しい情報を伝え、子どもから大人まで排尿の問題に向き合える社会を作るお手伝いをすることを目的として2005年に設立しました。

排尿に関する悩みを解決するための診療においては、“残尿”が非常に大きな位置を占めることになります。私が残尿測定に取り組み始めたのは1988年頃からで、当時は高齢患者さんの尿道バルーンを外して、排尿自立に導くことが主な業務でした。

その後、間質性膀胱炎と出会い、排尿障害の治療に注力してきたわけですが、排尿自立、排尿障害の治療においては、検尿、残尿測定、膀胱内圧測定の3つがポイントになり、中でも特に残尿が重要になります。

排尿自立では、一定時間ごとにカテーテルで膀胱を空にする“間歇的自己導尿”という手技が重要ですが、その導入にあたっては残尿量の測定や膀胱容量の評価が重要になります。また、排尿障害の治療においても、排尿の悩みの原因がどこにあるのかを見極める上で残尿測定が必須になります。

そして、当院では主に残尿測定でポータブルエコーの膀胱尿量自動計測機能を活用しています。

当院の外来では日常的にエコーを使用しております。例えば、膀胱が少し硬いと膀胱尿管逆流症(VUR:vesicoureteral reflux)といって、尿が腎臓に逆流して水腎症が起きることがあるため、膀胱コンプライアンスを確認する際にもエコーを使用します。

さらに、間質性膀胱炎の患者さんに対しては膀胱に麻酔をして内視鏡検査を行いますが、残尿があると麻酔薬が薄まってしまうため、必ずエコーで残尿がないかをチェックして、残尿があれば導尿して麻酔薬を入れています。残尿がないのに導尿による残尿測定をすると、患者さんがつらいだけですので、処置前に評価する上でエコーは非常に有用です。

臨床検査においては、安価(低コスト)で、簡便で、侵襲が少なく、正確であること、すなわち“プラクティカリティ”が重要になります。超音波検査はプラクティカリティが非常に高く、私自身も幅広く活用しています。

当院では、診察室に1名、ベッドに3名の患者さんがいて、全員の残尿測定を行わなければいけないようなケースもあり、そういった時に軽量・コンパクトで可搬性に優れた、ポータブルエコーがとても役立ちます。

また、往診でも軽量・コンパクトなエコーは有用です。特に、寝たきりの患者さんの場合、プローブ走査の可動域に制約があると、プローブの角度が十分につけられず見たいところが描出しづらいこともあり、プローブ走査の可動域も重要になってきます。

ポータブルエコーの最大のメリットは、実際に体内のどこを見て、評価しているのかが画像上で確認できる点です。間違った場所をスキャンしたまま不正確な数値が出ていないか、正確な尿量測定のためには、膀胱をしっかりと描出できるプローブ、しっかりと判読できる画質が重要です。

また、当院では看護師が尿量測定を行うことが多いのですが、画像が見えることで習熟も早いですし、正確に測定できているかを画像で確認できるので精度管理上も有用だと思います。

横断

縦断

結果

現状の在宅医療・介護では、おむつをしていたら全部漏れていると思われていることが多いですし、頻尿でも膀胱が小さいのか、残尿が多いのかまでは評価されていないケースがほとんどでしょう。そういった中で、むくみがとれなくなったり、有熱性の尿路感染症を起こすようになってきて、ようやく泌尿器科に相談されるのですが、その段階ではかなり腎機能が低下していたり、膀胱機能が廃絶していたり、さまざまな問題を抱えていることが多くあります。

今後、高齢化がさらに進展していく中で、より多くの医療従事者が残尿に目を向け、より早期に下部尿路機能障害に介入していく必要があります。そして、泌尿器科の専門医のサポートを受けながら、エコーを用いて簡便かつ正確な尿量測定を行っていくことで、より適切な排尿管理、排尿ケアにつなげていくことが重要だと考えています。