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ポータブルエコーのインタビュー

新型コロナウイルス感染症対応下でポータブルエコーを活用
不穏状態で尿路感染症疑いのある患者さんをその場で診断

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

この記事では、超音波画像診断装置(ポータブルエコー)を活用した事例についてご紹介します。今回は、泌尿器科医の黄(こう)先生に尿路感染症の疑いがある不穏状態の患者さんへのポータブルエコー活用についてお伺いしました。

住まい:東京都
性別:男性
年齢:80代
病状の概要:圧迫骨折

病棟から泌尿器科に、認知症がある80代男性についてのコンサルトがありました。
その患者さんは圧迫骨折で入院されており、安静にしている必要があり、疼痛も強かったため、尿道カテーテル(バルーン)が入っていました。ある日、朝から尿がまったく出なくなり、熱が出始めました。そこで私はポータブルエコーを持ち、病棟に向かいました。

ポータブルエコーで患者さんの膀胱の中を確認すると、バルーンが入っているにもかかわらず、残尿が500cc以上溜まっていました。
認知症で不穏状態の患者さんは、バルーンを自己抜去するリスクが高く、男性の場合は尿道が長いためバルーンがすべて抜けるのではなく途中で引っかかって止まるケースが多くあります。
そこで、膀胱の中をエコーで観察すると、本来膀胱の中に見えるはずのバルーン先端のカフが見えませんでした。プローブを傾けてさらに観察を続けると、前立腺の中央部あたりでカフが膨らんでいる様子が見えました。
バルーンのカフが前立腺部尿道に落ち込むと前立腺が傷つき、急性前立腺炎を発症しやすいため、エコーで前立腺部にカフが見えたことで、バルーン自己抜去による尿路損傷、および急性前立腺炎(尿路感染)という病態が迅速に確認できました。

その後血液検査を行ったところ、炎症反応の数値が非常に高くなっていたため、おそらく尿路感染(急性前立腺炎)だろうと考え、臨床的診断で抗生剤の投与を開始しました。その時は患者さんが不穏状態だったため、CT室への移動、撮影中の安静が困難と判断しました。

バルーンもその場で入れ直すことができ、膀胱内の正しい位置にバルーンが入っていることもエコーで確認でき、その画像を主治医の整形外科のドクターと看護師さんに見せることで安心していただけました。

不穏状態の患者さんはCT検査に行く間も検査中も安静を保てないので、病棟から移動せずエコーで病態が確認できたことは非常に大きかったですね。

厚生中央病院と医療従事者の方々に対する感謝飛行

この症例を経験した当時は、新型コロナウイルス感染症の流行が拡大していた時期で、外来および病棟での患者さんの移動が一部で制限されていました。

ポータブルエコーを活用することで、患者を病棟から移動する手間を極力減らすことができ、消毒も簡便に行えるため、感染症対策に大きく貢献できました。

外来やCTなどになるべく移動させることなく、患者さんとの接触人数を最小限にし、病棟内でおおまかな診断をつけるための有効なツールの一つとして、重宝されるものと考えております。

病棟の患者さんにエコーを行う場合は、外来の診察室まで来てもらう必要がありました。
しかし外来が終わらず、病棟患者の診察が夕方になることもあります。
そのため、朝に病棟からコンサルトがあったとしても、夕方になると病状が悪化していることもありました。
     
ポータブルエコーの導入後は、早ければ外来の前に、遅くとも外来の合間にはエコーを持って病棟に行けるので、タイムロスがなくなり、早期の診断・治療にもつながっていると実感しています。

最後に、今回の症例・ポータブルエコーの活用ポイントについてまとめます。

症状把握

尿道カテーテルが入っている認知症の入院患者さんについて「朝から尿が出ず、熱発している」とコンサルトを受ける。

ポータブルエコーの活用を決断した理由

認知症で不穏状態の患者さんは、バルーンを自己抜去するリスクが高いため、エコーで膀胱内を確認する必要があると思った。

活用結果

膀胱に尿が約500cc溜まっていて、排尿できていないことが判明。さらに、前立腺部尿道にカフが引っかかっており、急性前立腺炎と尿路損傷の病態が確認できた。

活用の効果

抗生剤の投与を開始するとともに、その場でバルーンを入れ直すことができた。

活用のポイント

病棟からのコンサルトに対して、迅速に診断、治療が行えた。また、その場でバルーンを入れ直したことで、主治医のドクターと看護師さんに安心してもらえた。

医師 / 泌尿器科
総合病院厚生中央病院 泌尿器科 医長
黄 和吉 氏

主な経歴
東京医科大学病院、船橋市立医療センター、新百合ヶ丘総合病院など

専門(学会等)
日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医・指導医
日本泌尿器科内視鏡学会

泌尿器科医になったきっかけ
私が泌尿器科医になったきっかけは、ロボット手術や腹腔鏡手術に興味を持ち、手術の技術を磨きたいと思ったことでした。
悪性腫瘍に対するロボット手術をメインに行う大学病院や基幹病院などで、長く働いておりましたが、数年前に今の厚生中央病院に転勤となり、前立腺肥大症や結石などの良性疾患の治療を主に携わることになりました。
そこで排尿自立支援に関わるようになってから、排尿ケアの問題の難しさや、それをクリアした時の患者の姿にやりがいを感じ、排尿ケアに達成感を強く覚えるようになりました。