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プライマリ・ケア医のインタビュー

ポータブルエコーによる前立腺の検査と、服薬アドヒアランスへの影響

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

この記事では、超音波画像診断装置(ポータブルエコー)の活用法をご紹介します。今回は、総合診療科医の上松東宏先生です。

愛知県豊田市の豊田地域医療センターで総合診療科部長を務めています。私たちの病院はコミュニティホスピタルといって、総合診療医師が多く在籍し、地域との関わりを重視した医療機関です。老若男女、さまざまな主訴を持った患者さんが来られるのが特徴的で、在宅診療にも力をいれています。

私は外来に加え、在宅診療も担当しています。「幅広く診ることが求められる環境」という点で、両者は共通点がありますね。

例えば、定期通院されている患者さんには、何でも相談できる雰囲気づくりを心掛け、「その他、最近気になることはありませんか」と直接尋ねるようにしています。その中で、ポロッと出てくる話から、その患者さんの真の“困りごと”を知ることにつながるからです。

患者さんが話してくれたことに対して深掘りをすると、具体的な話へとつながります。そこで「それは大変ですね。お力になれるかもしれないので、もう少しお話いただけますか?」という具合に、診察をすることがあります。しばしば、患者の困りごとは相互に影響し合い、全体に影響していることがありますので、一人の医師が全体を見渡しながら診療することは医療の質にも関わるのではないでしょうか。プライマリ・ケア医にとっては腕の見せどころではないかと思います。

ついでの相談で、男性の夜間頻尿はしばしば経験します。例えば、夜中に2~3回起きるとなると、寝不足になりますし、1回起きると寝付きにくくなるという話も聞きます。足が不自由だったり、合併症があったりする人の場合は、途中で失敗してしまう可能性もあるでしょう。患者のQOLは落ちますよね。

膀胱の横断・縦断像

男性の夜間頻尿で、尿の切れが悪いなどの情報があれば、プライマリ・ケアの現場で疑うのは頻度からすると前立腺疾患です。問診だけではわからない前立腺の評価や排尿後の残尿量を、ポータブルエコーを使うことで効率よく情報収集することができます。

実際どれくらい尿が残っているかの画像を患者さんに見せることで、説得力が増し、その後の服薬アドヒアランスにも影響が出ると考えます。

ただ単に「薬を出すので飲んでくださいね」と言われるのと、実際に診察室で画像を見せられて「こんなにおしっこが溜まっているので、この薬が症状を和らげると思います」と言われた上で薬をもらうのでは、患者さんの納得感は変わってくるでしょう。ポータブルエコーの結果、患者の行動に変化があると考えます。

私にとって、今やポータブルエコーは必需品です。もちろん、ポータブルエコーで解決できない健康問題もありますが、解決できることに関しては、これまで何度も助けられてきました。

患者さんの潜在的な困りごとを引き出し、訴えに対して医師として介入できること。すぐに命に関わるような問題ではないけれど、患者さんの日常的な悩みを、プライマリ・ケア周辺の問題を解決していくことはQOL向上につながるため、大事だと考えます。

医師 / 総合診療科
豊田地域医療センター
総合診療科 部長
上松 東宏 氏

主な経歴:2006年愛知医科大学卒。都立多摩総合医療センターにて放射線科後期研修後、米国で家庭医療研修を行う。帰国後、鉄蕉会亀田ファミリークリニック館山勤務。プライマリ・ケア医に対する超音波教育に興味を持つ。2018年米国Ultrasound Leadership Academyを修了。2019年より現職。

専門(学会等): 米国家庭医療専門医、米国家庭医療学会認定フェロー、日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医、日本放射線学会認定医など

総合診療を志すきっかけ: 医学生時代に米国留学をする機会を得て、初めて「家庭医療」と出会いました。幅広い健康問題に対してまず受け止め、道筋をつけていく姿勢や、受診する患者だけでなく、地域住民に対する予防的介入など、当時日本では身近に見ることができなかったことばかりで衝撃を受けました。当時から15年以上経過し、現在は国内でも家庭医療の実践・教育に関われるようになりました。

我々の領域はカバーする範囲が広いので、知識メンテナンス・アップデートは大変です。近年はテクノロジーの進歩も目覚ましく、診療の質担保をサポートしてもらえる部分は賢く付き合っていかないといけないと思っています。エコーの使い道は幅広く、総合診療医にとっては親和性が高いので、今後ますます欠かせないアイテムになっていくと思います。