日本

ポータブルエコーのインタビュー

POCUSの教育プロジェクトの内容と展望
~ひとり1台のポータブルエコーで、一緒に学び、一緒に育つ!

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

藤田医科大学 総合診療プログラム
プログラムディレクター
豊田地域医療センター 副院長
大杉 泰弘 先生

藤田医科大学 総合診療プログラム
プログラム指導医
豊田地域医療センター 総合診療科 部長
上松 東宏 先生

大杉先生(左)、上松先生(右)

問題解決型のアプローチで短時間に必要な情報を得るために施行するPoint-of-care超音波(以下、POCUS)は、従来のベッドサイドエコーをより効率的に行うために有用なツールです。すでに米国では家庭医療の分野でも超音波教育が取り入れられていますが、日本では総合診療研修において標準化された教育は確立されていません。

一方、超音波検査装置の小型化、性能向上が進み、「1人1台」という時代が近づいている中で、総合診療医がより広く、深くPOCUSを学ぶ上で、必要な教育や効果、課題について探索することが求められています。

そこで、藤田総診(藤田医科大学 総合診療プログラム)では、2021年度の新専攻医14名に対して、ポータブルエコーを1人1台貸与。講義やハンズオン、技術的なフィードバック等を行い、経時的な診療への影響や教育効果を測定する教育プロジェクト研究を実施しています。

藤田総診の特長は。

大杉先生 少子高齢化と人口減少が進むとともに、慢性疾患や多疾病罹患、認知症、フレイル(虚弱)等が増加し、総合診療へのニーズが高まっています。また、領域別の専門医がその専門性を発揮していくためには、包括的かつ継続的に診療を行う総合診療医の数を増やし、それぞれの総合診療医が相互に、あるいは他職種と連携しながら、地域の医療を“面”で支えていく必要があると考えています。

そこで、藤田総診では、「教育の力で医師を育て、地域そして世界を変革する」という理念のもと、総合診療専門医をめざす専攻医に広く門戸を開き、専門的な総合診療教育を提供するだけでなく、そのキャリアを作っていくことで、未来の日本はもちろん、世界がより健康になることをめざしています。

現在の在籍人数は。

大杉先生 例年、日本の総合診療プログラムの中で最も多くの専攻医が集まっており、現在(2021年6月時点)はプログラム全体で26名の指導医と33名の専攻医が在籍しています。

研修を行う上で、重視している点は。

大杉先生 研修においては、良質なレクチャーを提供するだけでなく、専攻医と指導医がともに過ごす時間を最大化して“ティーチャブル・モーメント”を逃さないことが重要だと考えています。すなわち、専攻医が「学びたい」「知りたい」と思った瞬間に、その場で適切な情報が提供することが最も学習効率が高く、学習意欲の向上にもつながるのです。

また、我々は“振り返り”も非常に重要視しています。専攻医が外来、病棟、在宅で行った診療の一例一例について、指導医とともに振り返りを行うことにより、専攻医は自分の診察や臨床推論の正誤が分かり、疑問があればその場で指導医に質問することで理解を深めていくことができます。藤田総診には多様なメンバーが集まっていますが、こうした丁寧な振り返りは多くの専攻医の成長促進につながる教育手法だと実感しています。

上松先生 私も大杉先生と同感で、振り返りもそうですが、この人のためにという“for”の視点よりも、一緒に学ぶ“with”の視点を大切にしています。そして、誰もが学びやすい環境を整えることで、全体の成長につながっていくと考えています。

「Point-of-care ultrasound 教育プロジェクト2021~ひとり1台で、一緒に学び、一緒に育つ!~」の概要は。

上松先生 総合診療医が超音波検査(現場で行うPOCUS)を学ぶ中で、経時的な診療への影響や教育効果を測定することを目的とし、専攻医14名に対してポータブルエコーを一人一台貸与して、講義やハンズオン、技術的なフィードバック等を行う予定研究です。

このプロジェクトにより、国内での総合診療医が行うPOCUSの妥当性のある教育内容が提示されれば、全国のプログラムにおいて超音波検査に関するカリキュラムが増え、総合診療の質の向上が期待されると考えています。

同プロジェクトに対する期待は。

上松先生 私はこれまで有志を対象としたPOCUSの教育セミナーは行ってきましたが、多様なメンバーが集まったチームに超音波教育を行った経験はなく、今回のプロジェクト研究を通してどのような効果が得られるのかについては非常に興味があります。

また、エコーは画像で体内を可視化できるだけでなく、画像という証拠が残ります。エコーを日常的に使用することで、根拠に基づいた診療を習慣化し、どのような場面でも常に診療の根拠を大切にする姿勢を身につけてもらえればと期待しています。

専攻医がオン・ザ・ジョブでエコーを使用していると、「分からない」ということも少なからずあるでしょう。そこで、私が呼ばれてエコーを当ててみても、やっぱり「分からない」ということもあると思います。エコーにはメリットもありますが、限界もあります。今回のプロジェクト研究を通じて、エコーのメリットだけでなく、限界も知ってもらい、それをそれぞれの診療の中に落とし込んでいくというプロセスを大切にしてもらいたいと思っています。

大杉先生 私は一貫して、一部の意識の高い医師たちに提供する教育だけでは日本は変えられないと思っていて、有用性の高い検査等については保守的な医師であっても抵抗なく使用できる、実施できる状況を作っていくことが大切だと考えています。これはエコーの普及においても同様で、そこには教育環境の整備という側面もありますが、テクノロジーで乗り越えなければいけないことも多くあると思います。例えば、現状においてエコーは施設でシェアされていることがほとんどでアクセシビリティに問題がありますが、高画質で機動性の高いポータブルエコーが1人1台あれば、教育面はもちろん、診療面でも大きな効果が期待できると思います。

エコーのアクセシビリティについてはまだまだ課題があると思いますが、今回のプロジェクト研究を通じてポータブルエコーを用いた教育の効果が示され、POCUSの普及や診療の質の向上につながればと期待しています。