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毛穴の収縮を担う立毛筋の機能低下が肌の弾力性低下の一因であることを解明

肌の弾力性を改善する成分「ナノテトラヒドロピペリン」新開発

立毛筋を3次元で可視化することに成功

ニュースリリース

2020年7月2日

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、肌に存在し毛穴の収縮を担う立毛筋を3次元的に可視化することに成功しました。また、立毛筋の機能低下が肌の弾力性に悪影響を及ぼすことを解明しました。さらに、肌の弾力性を改善する新成分として、黒胡椒に由来し、血行促進効果で知られる成分「テトラヒドロピペリン」をナノ乳化した「ナノテトラヒドロピペリン」を開発しました。

【今回の研究成果】

  1. 組織透明化技術*1を用いて、ヒトの立毛筋を3次元可視化することに成功しました。
  2. ヒトの皮膚に存在する立毛筋が老化することを実証しました。さらに、立毛筋の老化に伴う機能低下(筋力低下)により肌の弾力性が低下することを見出しました。
  3. 黒胡椒に由来する成分「テトラヒドロピペリン」に、立毛筋の機能低下を改善する作用を見出しました。
  4. 油溶性の「テトラヒドロピペリン」を独自技術でナノ乳化し、毛穴の皮脂へのなじみやすさと浸透性を向上させた「ナノテトラヒドロピペリン」を新たに開発しました。

本研究では、毛穴の収縮を担う立毛筋をケアすることで、毛穴が目立たないハリのある肌へ導く新しいスキンケアの可能性を示すことができました。当社は、本研究成果を、機能性化粧品に応用する予定です。

  • *1 特殊な溶液で組織を透明化することで、2次元でとらえていた組織を3次元的に観察する手法。

【研究の背景】

これまで毛穴のゆるみや肌のたるみは、加齢による肌内部のコラーゲンやエラスチンの減少が主な原因と考えられていました。今回当社は、毛穴のゆるみや肌のたるみへの新たなアプローチを探索する過程で、今まであまり着目されていなかった毛穴の収縮を担う立毛筋に焦点を当て、立毛筋の機能の解明に取り組みました。

[画像]皮膚における立毛筋と毛穴の関係

<立毛筋と肌・毛穴の関係>

立毛筋は、毛を立たせたり、毛穴内の皮脂を外に押し出す役目を担っています。寒さや恐怖、驚きなどで鳥肌が立つのは、立毛筋の収縮によるものです。立毛筋は毛穴の根本から皮膚全体を引き締め、毛穴の開きを調節する機能がありますが、その機能が低下するメカニズムや肌の弾力性への寄与は明らかにされていませんでした。
 

【研究の成果】

【図1】 3次元可視化したヒト立毛筋(左)と、左の顕微鏡画像をイラスト化したもの(右)

1.立毛筋の3次元可視化に成功

立毛筋は、皮膚を薄切りにした組織標本として2次元的に観察される例が多く、毛根まで含む立毛筋の全体像については十分に研究が進んでいませんでした。当社は、組織透明化技術を用いて立毛筋を3次元的に可視化することに成功しました。その結果、立毛筋が毛根に枝をいくつも伸ばしたような状態で接続していることが明らかになりました(図1、白い丸で囲った部分)。また、立毛筋が、表皮と真皮の境界である基底膜まで伸びていることも確認されました。このことから、立毛筋は毛穴と密接な関係にあり、肌組織全体への影響も示唆されます。
以上の結果より、立毛筋が毛穴のゆるみに大きく影響していると考え、毛穴ケアの新たなターゲットとして研究を進めました。

【図2】 年齢とプレラミン陽性率の関係

2.①ヒト皮膚における立毛筋の老化を実証

ヒト皮膚における立毛筋の解析例は極めて少なく、加齢による変化については知られていませんでした。そこで当社は、異なる年齢のヒト皮膚を用い、立毛筋において細胞の老化マーカーとして知られるタンパク質「プレラミン*2」を染色し、プレラミン陽性細胞率(全細胞に対するプレラミン陽性細胞の割合)を算出しました。その結果、プレラミン陽性細胞が年齢に相関して増加していることが分かり (図2) 、加齢とともに立毛筋が老化することが明らかになりました。

  • *2 老化によって増加する因子として知られているタンパク質。
【図3】 各年齢における平滑筋細胞のコラーゲンゲル収縮率

2.②立毛筋の機能低下が肌の弾力性を低下させることを実証

立毛筋を構成する平滑筋細胞は老化することで収縮力(筋力)が衰え、機能低下することが知られています*3。そこで、立毛筋の機能低下が周辺の肌に及ぼす影響を調べるため、平滑筋細胞をコラーゲンゲル内で培養し、その様子を観察しました*4。その結果、年齢が高くなるほど、コラーゲンが収縮する割合が低下することが分かりました(図3)。また、平滑筋細胞の機能低下(筋力低下)を調べるマーカーとして、細胞骨格タンパク質「αSMA(アルファエスエムエー)*5」の蓄積を確認したところ、高い年齢の平滑筋細胞にはαSMAがより多く見られました(図4)。これらにより、皮膚内では加齢による立毛筋の機能低下により肌の弾力性が低下すること、また、平滑筋細胞のαSMAの蓄積が肌の弾力性低下の一因となることが考えられます。

  • *3 参考文献:Circ. Res. 107, 615-619 (2010)
  • *4 コラーゲンゲル中に細胞を入れると、細胞がコラーゲンを収縮させることから、その収縮率は肌の弾力性を示す指標として使用される。
  • *5 「α-smooth muscle actin」のこと。細胞の骨格として重要な役割を果たす線維状のタンパク質で、細胞の機能低下を調べるマーカーとして知られている。筋細胞では、筋肉組織の弛緩および収縮に寄与する一方で、αSMAが異常に蓄積することで動脈硬化や強皮症の原因になると考えられている。
【図4】上:14歳と58歳の平滑筋細胞のαSMA蓄積量の比較。 下:14歳と58歳の平滑筋細胞中のαSMAを染色した画像。 赤色が濃いほどαSMAの蓄積量が多い
【図5】 テトラヒドロピペリンのαSMA蓄積減少効果

3.「テトラヒドロピペリン」に、αSMAの蓄積を改善する作用があることを発見

肌の弾力性低下の一因と考えられるαSMAの蓄積を改善する成分を探索した結果、黒胡椒に由来する成分「テトラヒドロピペリン」にαSMAの蓄積量を減少させるという改善効果を見出しました(図5)。

【図6】ナノテトラヒドロピペリン(左)と、従来油を用いた乳化物(右)の電子顕微鏡像

4.テトラヒドロピペリンをナノ乳化し、毛穴の皮脂になじみやすい成分を開発

「テトラヒドロピペリン」を立毛筋に効率的に届けるため、毛穴の皮脂となじみのよいオイルを探索し、なじみやすさが約2倍に向上するオイル「イソノナン酸イソノニル」を見出しました。この「イソノナン酸イソノニル」を用いて、油溶性のテトラヒドロピペリンの肌への浸透性を高めるナノ乳化物「ナノテトラヒドロピペリン」を開発しました(図6)。新開発の「ナノテトラヒドロピペリン」は、化粧品に一般的に用いられるオイル*6(従来油)を用いた乳化物に比べて浸透性が約1.4倍向上しました(図7)。また、実際にヒトの毛穴へ塗布し、ナノ乳化処方の浸透性を確認しました(図8)。

  • *6 「トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル」。
【図7】ナノ乳化したテトラヒドロピペリンの浸透性評価
【図8】毛穴への浸透性評価  左:従来油処方、右:ナノ乳化処方

当社は、今回開発した「ナノテトラヒドロピペリン」を、今後機能性化粧品に配合していきます。

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