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富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、日本ハム株式会社(社長:畑 佳秀)と共同で行った、「口蹄疫抗原検出イムノクロマトキットの開発と普及実用化」に関する功績により「令和2年度(第21回)民間部門農林水産研究開発功績者表彰」において「農林水産大臣賞」を受賞いたしました。これは、農林水産省および公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会が共催し、農林水産業その他関連産業に関する研究開発のうち民間が主体となって行っている取り組みについて、優れた功績をあげた者に対し表彰するものです。今回、本キットの開発と普及実用化に向けた取り組みが、畜産業に甚大な経済被害をもたらす口蹄疫の初動防疫に大きく貢献していることが評価されました。受賞内容は以下の通りです。
【受賞者】
- 中村健太郎
富士フイルム株式会社 メディカルシステム事業部 マネージャー
- 和田淳彦
富士フイルム株式会社 R&D統括本部 メディカルシステム開発センター 研究員
- 松本貴之
日本ハム株式会社 中央研究所 上席研究員
- 竹内江里
日本ハム株式会社 中央研究所 研究員
- 浦山佳那
日本ハム株式会社 中央研究所 研究員
【開発の背景】
口蹄疫は、発熱や多量のよだれ、水ぶくれなどを引き起こす動物疾病であり、国際的に対策の必要性が高い家畜伝染病の一つとされています。2010年に宮崎県にて発生した際には、牛や豚など30万頭近くの家畜が殺処分され、被害総額が2,350億円におよぶなど、甚大な被害をもたらしました。口蹄疫は国境を越えて容易に伝播する動物疾病として知られており、国際的な人の往来や物流網の発達により、国内への侵入の危険性がますます高まっています。また、国の定めた防疫指針においても、早期に発見し、移動制限など迅速かつ的確な初動防疫対応が重要とされています。このため発生時に感染状況をすぐに確認できるよう、農場などの現場で使用可能な簡易・迅速な検査法の開発が望まれていました。
<口蹄疫抗原検出イムノクロマトキット>
![[画像]口蹄疫抗原検出イムノクロマトキット](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2020-11/9793d8843ca89bb5d916a31144901b1b/news_201112_01.jpg)
【実用化までの経緯】
富士フイルム独自の「銀増幅イムノクロマト法※1」を応用することで、農場などの現場に簡単に持ち込め、簡易に使用でき、目視によってその場で結果が得られる高感度な口蹄疫抗原検出キットの共同開発※2に成功しました。開発した検出キットは、日本ハム株式会社が製品化して、動物用体外診断用医薬品として製造販売承認を取得。これにより、農林水産省が作成する「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に、異常家畜の発生した現場にて本キットを使用できる旨が記載されました。この記載を受けて、口蹄疫の発生に備え、各都道府県畜産主務課、家畜保健衛生所、農林水産省動物検疫所に本キットが供給されています。
富士フイルムは、ヒト向けの検査市場において、2011年から「銀増幅イムノクロマト法」を用いたインフルエンザなどを対象とした高感度な「感染症迅速検査装置」および専用試薬を販売しています。これらの製品は、発生初期などのウイルスや細菌の量が少ない状態でも検出でき、15分以内に判定結果が得られる高感度な抗原検査システムとして、多数の医療機関でご使用いただいています。さらに近年では、装置不要で目視で検査可能な「結核迅速診断キット」を開発し、欧州薬事※3へ適合させました。現在、開発途上国への供給に向けてWHOの推奨を取得するための臨床評価を各国の研究機関にて実施しています。動物向けの検査市場においても当社の「銀増幅イムノクロマト法」を用いた高感度な簡易抗原検査キットの開発に取り組み、「口蹄疫抗原検出イムノクロマトキット」の共同開発に成功しました。
当社は今後も先進・独自の技術で社会課題の解決と人々の生活の質の向上に取り組んでいきます。
【口蹄疫抗原検査キットに応用した銀増幅技術】
![[画像]口蹄疫抗原検査キットに応用した銀増幅技術](https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2020-11/089d76ccbca3bee9b78b0619c3326014/news_201112_02.jpg)
- ※1 イムノクロマト方式とは、試薬に滴下した検体中に被検物質(ウイルスなど)が存在すると、試薬中の標識抗体と結合して抗原抗体複合体が生成され、この複合体があらかじめ検出ライン上に線状に塗布された抗体に捕捉されると、陽性(抗原あり)を示す色付きのラインが表示される検査方式のこと。簡便迅速に結果を得られることから、処置を急ぐ必要がある感染症の検査に多用されている。
- ※2 富士フイルム株式会社、日本ハム株式会社と国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門との共同開発による。
- ※3 欧州連合(EU)の体外診断用医療機器指令 98/79/EC/(IVDD)
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