日本

次世代の微量元素分析法に最適な標準物質を開発

試料に含まれる微量の元素濃度を高精度に分析するための新規物質

わずかな不純物質の濃度測定を可能とし、最先端の材料開発などへの応用に期待

ニュースリリース

2020年12月17日

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、試料※1に含まれる微量の元素濃度を高精度に分析するために必要な標準物質を開発しました。本物質は、高精度な微量元素分析を可能とする次世代微量元素分析法「フェムト秒レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法」(以下「fs-LA-ICP-MS法」)に最適な標準物質です。本物質を用いた「fs-LA-ICP-MS法」により、わずかな不純物質などの濃度測定が可能となり、最先端の材料開発などへの応用が期待されます。

富士フイルムは、2020年12月18日より、開発した標準物質のサンプル提供を開始します。

微量元素分析は、試料に含まれる、特定の元素の有無や濃度を把握するためのもので、土壌や水質の環境汚染分析、機能性材料の不純物分析など幅広い用途で行われています。なかでも、元素濃度の把握には、標準物質を基準に濃度を測定するため、微量元素分析の手法に適した標準物質が必要です。また試料の状態(固体・液体など)によって選択する手法も異なることから、それぞれの手法で最適な標準物質を準備する必要があります。

近年、固体試料の微量元素分析においては、試料表面にレーザー光を照射し、加熱・蒸発した試料をイオン化して測定する微量元素分析法「レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法」(LA-ICP-MS法)を進化させた「fs-LA-ICP-MS法」が開発されました。「fs-LA-ICP-MS法」は、効率良く固体試料を加熱・蒸発させるフェムト秒レーザー※2と、短時間に大面積をサンプリングできる高速多点アブレーション技術※3を組み合わせたもので、より高精度な微量元素分析を実現する手法として期待されています。しかしながら、「fs-LA-ICP-MS法」に適した標準物質がなかったため、試料の元素濃度を正確に測定することが困難でした。

今回、富士フイルムは、これまで写真フィルムなどの研究開発で培ってきた解析技術やナノ分散技術、精密塗布技術、さらにはグループ会社の富士フイルム和光純薬が有する超高純度ポリマー合成技術も組み合わせることで、「fs-LA-ICP-MS法」に最適な標準物質を開発しました。

本物質は、超高純度ポリマーを主成分としたナノ薄膜内に、18種類の元素※4を均一に分散した標準物質で、0.1ppm※5から100ppmまでの幅広い濃度範囲で定量分析を行うことができます。

本物質を用いた「fs-LA-ICP-MS法」は、レーザー照射点の高速かつ広範囲の移動により、固体試料と本物質を加熱・蒸発させ、それらを混合した状態で含まれる元素の濃度を測定することを可能にします。試料の溶液化が不要となり、ユーザーの利便性を向上させながら、試料の高精度な微量元素分析を実現します。なお、本物質は、東京大学大学院理学系研究科 平田岳史教授と共同で開発したものです。

<開発した標準物質を用いた「fs-LA-ICP-MS法」のイメージ図>
[図]開発した標準物質を用いた「fs-LA-ICP-MS法」のイメージ図

今後、富士フイルムは、本標準物質のサンプル提供を開始するとともに、顧客ニーズに合わせたラインアップの拡充も検討していきます。

富士フイルムは、写真の領域で培い進化させてきた幅広い高度な技術と、グループ会社が有する技術を結集し、新たな高機能材料を開発・提供していきます。

  • ※1 分析・試験・検査の対象として使う物質や生物のこと。
  • ※2 フェムト=1000兆分の1秒の単位でパルス状に出るパルス発振レーザー(超短パルスレーザーとも言われる)。金属の熱拡散速度より速いため、揮発性の高い元素の不要な蒸発の抑制やエネルギー損失の低減が可能である。
  • ※3 ガルバノミラーと呼ばれる反射ミラーを動かすことでレーザー光を高速に走査させ、広範囲に加熱・蒸発させる技術。
  • ※4 銀、アルミニウム、バリウム、カルシウム、カドミウム、銅、クロム、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、ニッケル、鉛、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛を含有する。
  • ※5 ppmはparts per millionの略。ある特定の物質の濃度が、100万分の1であることを表す。

1. 開発した標準物質の特長
  • 写真フィルムなどの研究開発で培った解析技術やナノ分散技術、精密塗布技術、さらにグループ会社の富士フイルム和光純薬が有する超高純度ポリマー合成技術を組み合わせて開発。「fs-LA-ICP-MS法」に最適な標準物質です。
  • 基板となるシリコンウェハと、超高純度ポリマーを主成分とするナノ薄膜で構成。ナノ薄膜には、あらかじめ濃度が分かっている18種類の元素を均一に分散しています。
  • 0.1ppmから100ppmまでの幅広い濃度範囲で定量分析が可能です。
  • 標準物質と「fs-LA-ICP-MS法」を組み合わせることで、加熱・蒸発させた固体試料と標準物質の混合状態で試料の濃度を測定することが可能です。試料の溶液化を不要とし、ユーザーの利便性を向上させながら、高精度な微量元素分析を実現します。
2. サンプル提供開始

2020年12月18日

3. 仕様表

基板サイズ

1.0cm×1.0cm

膜厚

500nm

含有元素

銀、アルミニウム、バリウム、カルシウム、カドミウム、銅、クロム、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、ニッケル、鉛、スズ、チタン、バナジウム、亜鉛

測定濃度範囲

0.1ppm~100ppm

お問い合わせ

報道関係

富士フイルムホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ

その他

富士フイルム株式会社
CTO室 解析技術センター

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