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日本
ニュースリリース

2022年6月20日

表皮幹細胞の情報伝達物質cAMPが加齢で減少することを発見
「カフェイン」にcAMPを増加させ“若々しい肌”へ導く効果を確認
「カフェイン」を含有した独自の単層リポソームを開発

富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、皮膚の正常なターンオーバー※1を維持する表皮幹細胞の情報伝達物質であるcAMP(サイクリックエーエムピー)が、加齢に伴い減少することを発見しました。また、「カフェイン」に、cAMPを増加させ“若々しい肌”へ導く効果があることを見出しました。さらにカフェインを、独自開発した単層リポソーム※2に含有することで、その作用が高まることを確認しました。

今回の研究成果

  1. 表皮幹細胞の情報伝達物質であるcAMPが、加齢に伴い減少することを発見しました。
  2. cAMP増加により3次元表皮モデルの厚みが増すことを実証しました。
  3. カフェインに表皮幹細胞のcAMPを増加させる作用を見出しました。
  4. カフェインを独自の単層リポソームに含有した「表皮用カフェインリポソーム」を開発。リポソーム化していない場合よりも、カフェインのcAMP増加作用が高まることを確認しました。

当社は、今回の研究により「cAMPを増加させることで皮膚のターンオーバーを正常化し、“若々しい肌”へ導く」という新しいアプローチを見出しました。今後、本研究成果を化粧品開発に生かしていきます。

  • ※1 表皮の最も下に位置する表皮幹細胞が、分裂を繰り返しながら最上層の角層へ達し、垢となって剥がれ落ちるサイクルのこと。
  • ※2 リポソームとは、細胞膜の構成成分であるリン脂質を用いて、ナノサイズ(1mの10億分の1サイズ)に微細化されたカプセル状の微粒子のこと。

研究背景

皮膚は表皮と真皮で構成され、表皮の最外層にある角層は、外部からの異物侵入や体内からの水分蒸散を防ぐバリア機能をもちます。この角層の機能は、表皮に存在する表皮幹細胞が正常なターンオーバーを維持することで保たれます(図1)。表皮幹細胞が加齢に伴って劣化すると、ターンオーバーの低下を招き、ハリ低下やシミの原因に繋がります。したがって、加齢に伴う表皮の機能低下を防ぐためには、表皮幹細胞の性質を維持し、ターンオーバーを正常に保つことが重要です。

表皮幹細胞には情報伝達物質であるcAMPが存在します。cAMPはエネルギー物質として知られるATP(エーティーピー)※3から生成され、表皮のターンオーバーを促す細胞増殖に関係します。

現在、cAMPについては、疾患を持つ皮膚との関連を示す文献は多くある一方で、健常な皮膚での研究は多くありません。そこで、当社は健常な皮膚におけるcAMPの加齢変化に着目し、研究を行いました。

  • ※3 アデノシン三リン酸のことであり、生体内のさまざまな反応のエネルギー源となる物質。
【図1】皮膚のターンオーバーのイメージ図
【図1】皮膚のターンオーバーのイメージ図

今回の研究成果の詳細

1. 表皮幹細胞のcAMPが加齢に伴い減少することを発見

年齢が異なるヒト表皮細胞(表皮幹細胞を含む)を用い、加齢とcAMP量との関連性を検証したところ、年齢が高い細胞ほどcAMPが減少(図2)していることがわかりました。

【図2】加齢によるcAMP減少
【図2】加齢によるcAMP減少
実験方法

年齢が異なるヒト表皮細胞を用いて、cAMP量を評価。0歳のcAMP量を100%とし、各年齢のcAMP量を相対値で示した。各年齢の平均値をプロットし、回帰直線を示した。

結果

年齢に相関して、cAMPが減少することを確認した。

2. cAMP増加により表皮の厚みが増すことを実証

cAMPを増加させる誘導体を3次元表皮モデルに添加したところ、3次元表皮モデルの厚みが増すことがわかりました(図3)。これは、cAMP増加に伴い3次元表皮モデルの細胞増殖が促され、正しく細胞が積層されたためと考えられます。

この結果から、表皮幹細胞のcAMPが増加することで、正常な細胞の分化増殖が促され、加齢によるターンオーバー低下の改善に繋がると考えられます。

【図3】cAMP増加による表皮の厚みへの影響
【図3】cAMP増加による表皮の厚みへの影響
実験方法

表皮幹細胞を含む3次元表皮モデルを作成し、cAMP誘導体(db-cAMP)を添加した場合と、添加していない場合の3次元表皮モデルの状態を観察した。

結果

cAMP誘導体(db-cAMP)を添加した3次元表皮モデルの厚みが増すことを確認した。

3. カフェインにcAMPを増加させる作用を確認

表皮幹細胞のcAMPを増加させる作用を持つ成分の探索を進めたところ、茶葉やコーヒー豆に含まれる天然由来の化合物である「カフェイン」にcAMPを増加させる効果を見出しました(図4)。

【図4】カフェインによるcAMPの増加
【図4】カフェインによるcAMPの増加
実験方法

ヒト表皮細胞にカフェインを10、20、100μg/mL添加し、cAMP量を評価。添加していない場合のcAMP量を100%とし、カフェインを添加した場合のcAMP量を相対値で示した。

結果

カフェインの量が多いほど細胞内のcAMPが増加した。

4. カフェインを独自リポソームに含有した「表皮用カフェインリポソーム」を開発
カフェインのcAMP増加作用がより高まることを確認

表皮の最外層にある角層は主に油溶性成分で構成されています。そのため、カフェインのような水溶性成分は角層となじみにくく、十分に浸透させるのが難しいという課題がありました。そこで、当社が医薬品事業で培ってきたリポソームの知見を生かし、独自の単層リポソームにカフェインを含有することで、皮膚浸透性を向上した表皮用カフェインリポソームを開発しました。さらに、カフェインを含有したリポソームは、リポソーム化していないカフェインに比べ、表皮幹細胞のcAMPをより増加させることを見出しました(図5)。

[画像]表皮用カフェインリポソーム
【図5】カフェインを単層リポソームに含有することによる効果 
【図5】カフェインを単層リポソームに含有することによる効果 
実験方法

ヒト表皮細胞にリポソーム化していないカフェインと表皮用カフェインリポソームを、それぞれ添加。添加していない場合のcAMP量を100%とし、それぞれを添加した場合のcAMP量を相対値で示した。

結果

表皮用カフェインリポソームはリポソーム化していないカフェインよりもcAMPを増加させた。

お問い合わせ

報道関係

富士フイルムホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ

その他

株式会社 富士フイルム ヘルスケア ラボラトリー
商品開発・ブランド推進本部

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