富士フイルムシステムサービス株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:高村 勲)は、災害発生時の自治体の被災者支援業務を効率化し、市民の早期生活再建を支援する「被災者支援ソリューション」の第一弾として、「生活再建支援ナビ」を2025年8月29日より提供開始します。本システムは、2024年7月に福島県福島市と締結した共同研究協定に基づき、被災者へ迅速かつ適切に各種支援*1を届けるために開発されました。
災害発生時、被災者は生活再建に必要な支援制度を自ら調べ、申請する必要があります。しかし、福祉、保険、税務など多岐にわたる制度のなかから自身が対象となる制度を見つけ出し、必要な手続きを把握することは困難です。その結果、本来支援を受けられるはずの方に情報が届かず、支援を受け損ねてしまうケースが少なくありません。
一方、自治体職員にとっても、様々な支援制度が多くの部署に分かれて、あるいは複数の部署*3にまたがって管轄されているため、情報を網羅的に把握し、被災者に適切に案内することは容易ではありません。また、被災者から各種支援制度の利用申請を受理した後、自治体職員は罹災証明書を基に住民基本台帳システムから「世帯」や「人」の情報を手作業で1件ずつ紐づけながら対象者を特定する必要があります。このプロセスには多くの時間と労力がかかり、こうした自治体内の事務作業が、支援実施を遅らせる大きな要因となっていました。
「生活再建支援ナビ」では、自治体職員があらかじめ各種支援条件を登録しておくことで、罹災証明書の交付時に、交付の根拠となる住家被害認定調査の結果とデータが自動連携します。これにより、各支援制度の対象となる被災者を自動で抽出し、システム上に迅速に一覧化することが可能になります。その結果、自治体職員の業務効率の大幅な向上と、支援実施までの時間も大幅に短縮されます。
さらに、このシステムでは、複数部署にまたがる被災者支援業務を一元的に管理できるため、 各世帯がどの支援制度を受けているか、未対応の支援があるかをリアルタイムで把握できます。これにより、被災者からの申請の有無にかかわらず、自治体側から必要な支援制度をプッシュ型で案内することが可能となり、被災者の負担軽減と必要な支援が届かない事態の防止が期待できます。
「生活再建支援ナビ」では、当社の「罹災証明迅速化ソリューション」に搭載された罹災証明書の交付申請受付時に申請者情報と住民基本台帳データを容易に紐づけできる機能を有しています。これにより、罹災証明書の発行と同時に支援対象者を自動で特定・一覧化することが可能な台帳となり、自治体職員による煩雑な事務作業が大幅に軽減されます*4。また、被災者の申請を待たずに、自治体から迅速にプッシュ型で支援制度を案内することが可能となります。
「生活再建支援ナビ」は被災者支援に関する業務を一元的に管理し、各世帯の支援の対応状況をリアルタイムで可視化できる機能を備えています。これにより、業務効率化だけでなく、庁内の各部署間でのスムーズな情報共有が可能になります。各部署が同じプラットフォームで支援状況をリアルタイムに共有できるようになり、その結果、部署間の連携が強化され、迅速かつ効率的な意思決定が可能となります。
近年、気象災害が激甚化・頻発化するなか、有事に備え自治体は迅速に被害状況を把握し、適切な判断で住民の安全と生活再建を支援する体制を整備する必要に迫られています。住民の安全確保と生活再建を支える体制の整備は、喫緊の課題となっています。「生活再建支援ナビ」は、大規模な自然災害を経験してきた福島県福島市との共同研究を通じて得られた知見を基に開発され、30以上の支援制度メニューを搭載しています。設計段階から他の自治体での導入を見据え、他自治体でもそのまま活用できる支援制度メニューを盛り込んでおり、全国の自治体で共通課題を解決するシステムとして活用が期待できます。
今後も当社は、自治体職員の業務効率化を実現する防災DXを推進し、被災した住民の早期生活再建に貢献していきます。
- *1 生活資金給付金、住宅再建見舞金、減免措置貸付金、就学支援教育援助、減免措置など
- *2 被害状況の把握や被害状況の分析、家屋調査計画の策定、家屋調査準備、現地家屋調査、システム入力という一連の業務をデジタル化するソリューション。2023年6月より提供し、無償版を含め約150自治体へ導入済
- *3 市民課、福祉課、都市計画化、税務課、会計課など
- *4 福島県福島市の試算では、1,000人から被災者支援申請があった場合、400時間から200時間(△50%)の事務作業の削減を見込んでいます