富士フイルムグループは、企業理念に「健康増進に貢献し、人々の生活の質のさらなる向上に寄与する」ことを掲げています。この理念を実現するための、2030年をターゲットとした中長期CSR計画(Sustainable Value Plan2030・グループが持続的に発展していくための経営の根幹をなす計画)では、重点課題の一つが「健康」であり、ヘルスケア事業を通じて「健康的な社会をつくる」ことに取り組んでいます。
そして、企業理念、目指す姿(ビジョン)を実践するための基盤となる、従業員の健康維持増進を重要な経営課題として捉え、2019年には「富士フイルムグループ健康経営宣言」を制定しました。グループ全体の従業員の健康増進に対する取り組みを加速させており、社会、会社、事業が共に成長していくことを目指して、健康長寿社会の実現に貢献していきます。
従業員の健康に関して、2022年度までの数値目標を設け、取り組みと評価のPDCAを回すことにより、健康レベルの向上に取り組み、成果を社会に発信していきます。さらに日本国内のみならず、グローバルに健康経営を推進し、グッドプラクティスを横展開することで、グループ全体の健康意識の底上げを図っていきます。
健康に関する重点項目へ取り組みを強化し、具体的なKPIに対し着実な改善を図っています。
| 重点項目 | KPI | 中期目標 2025年度 |
実績 2023年度 |
実績 2024年度 |
|
|---|---|---|---|---|---|
| 生活習慣病対策 | BMI25以上 (比率) |
21% | 24% | 25.6% | |
| HbA1c6.0以上 (比率) |
6% | 10.1% | 10.4% | ||
| 喫煙対策 | 喫煙率 | 9% | 9.4% | 10.5% | |
| がん対策 | 受診率 | 肺 | 100% | 100% | 97.2% |
| 胃 | 100% | 81% | 93% | ||
| 内視鏡 | 90% | 77.7% | 88.9% | ||
| 大腸 | 100% | 92.2% | 92.5% | ||
| 乳 | 90.0%+ | 78.6% | 87.9% | ||
| 子宮 | 90.0%+ | 88.1% | 79.2% | ||
- * 胃・大腸がん検診受診率は40歳以上
生活習慣病・がん・メンタル不全・新型コロナウイルス感染などの予防や重症化を防ぐためには、健康的な生活習慣を身につけることが重要であることから、2020年に「富士フイルムグループ 7つの健康行動」を新設して、グループ従業員に実践を呼びかけています。そして「7つの健康行動」各項目の実践度を定期的に確認し、グループ全体の健康水準の向上を図っていきます。
週1回以上、体重をはかる
自分の健診結果を確認する
週1日以上、お酒を飲まない日をつくる
1日6時間以上の睡眠をとる
平均30分/日以上歩く
直近の歩活(あるかつ)にエントリーする
たばこは吸わない
富士フイルムビジネスエキスパートは、「生活習慣病対策」「ガンの早期発見」「禁煙」「長時間労働対策」「メンタルヘルス対策」の5つを重点項目とし取り組んでいます。これらの重点項目は、経営執行会議および経営層も参加する全社安全衛生委員会を通じて決定し、毎月の各事業所で実施する安全衛生委員会、また社内イントラを通じてや安全衛生教育時に全従業員に周知し、一人ひとりがこれらの重点項目を『自分ごと』として捉えられるように、推進活動を行っています。
生活習慣病の改善・予防には、業務でも生活習慣の阻害要因を減らし、適切な食事時間、睡眠不足の解消、適度な運動に取り組んでもらえる環境を作ることが必要です。
そのような職場環境を作っていくことは、プライベートの充実からひとり一人のQOLが向上していきます。この好循環がいきいきと「笑顔」で働く一歩となり、ひいては生産性向上やエンゲージメントの向上とサスティナブル、従業員が長く働ける環境を生み出していきます。
生活習慣病の予防やBMIの改善には、生活習慣を改めることが必要です。食生活の乱れや運動不足、睡眠時間不足を解消していく必要があり運動不足には適度な運動に取り組む機会の創出が必要であるため年2回のウォーキングイベントを実施しています。
従業員の平均年齢の上昇やコロナによる在宅勤務などに伴い、BMI値25以上の割合が増加傾向にあるのが喫緊の課題です。
この課題解決に向け、特定保健指導に該当する対象者に産業医/保健師、外部委託業者が面談指導を行い生活習慣病の悪化を未然に食い止める活動を行っています。
今年度から特定保健指導を開始。健康診断2か月後から、専属外部保健師による食事と運動の指導を開始。また、対象者の方に社長レターおよびダイエットに成功した従業員の生の声を載せ“いきいきと美味しい食事ができるように”というTOPメッセージと共に推進しています。
2019年度から統括産業医の定めた基準値以上の健康高リスクのグループ内従業員に対して、富士フイルムグループ健保との連携で、自宅に直接受診勧奨のレターを送付しています。さらにその後、確実に受診していただくよう会社および産業保健スタッフがフォローをしています(業務時間配慮、社長からのメッセージ)。
喫煙は、肺がんや心筋梗塞、脳卒中へのリスク、また免疫力の低下や慢性的な呼吸器疾患なども引き起こす可能性があります。
受動喫煙・サードハンドスモークにより、非喫煙者や妊娠されている方への健康にも外があり、職場環境に悪影響を及ぼします。
「卒煙は自分の身体と吸わない人への思いやり」をスローガンに健康被害の防止、安心・安全な職場環境のため以下のルールや協力を要請しています。
- グループの経営者は禁煙を率先垂範、役職者全員の禁煙を目指します(管理職喫煙率0%)
- 就業時間中の禁煙を徹底するため就業規則に定めています
- 自社ビル・自社敷地内の喫煙所は閉鎖されています
- 入居ビル・周辺施設の喫煙所も利用はできません
- 喫煙者に喫煙後の45分間オフィスの入室、エレベーターの利用制限の協力を要請します*1
- 喫煙者に会社や部の公式イベント(懇親会など)では喫煙しないよう協力を要請します
加えて、採用面接時に面接官から健康経営や生活習慣病予防に取り組む企業であることを伝え、喫煙されている方には卒煙を勧め、また役職昇格する喫煙者には卒煙宣言も進めています。
- *1 喫煙後45分は呼気や着衣に喫煙物質がつき第三者が吸込む可能性があるため
日本で罹患率の高い「大腸がん」について、従業員の理解促進と大腸内視鏡検査の重要性を周知しています*2。
便潜血検査陽性者には全員、産業保健スタッフから大腸内視鏡検査の受診を勧めてフォローしています。また50歳になる従業員には富士フイルムグループ健保および当社の健康スタッフから個別メールを配信して、大腸内視鏡検査を勧めています。
- *2「大腸内視鏡検査のすすめ」講演動画を全従業員受講し早期発見の重要性、怖さを理解
がん検診受診率をあげていくため、よりニーズに合った検診機関の選択や定期健診への組み込み、啓発活動を進めてきました。
| 2022 実績 |
2023 実績 |
2024 実績 |
|
|---|---|---|---|
| 胸部X線 | 100 | 100 | 97.2 |
| 胃(内視鏡+X線検査) | 75.6 | 81 | 93 |
| 大腸 | 100 | 92 | 92.5 |
| 婦人科(乳房) | 93.1 | 79 | 87.9 |
| 婦人科(子宮) | 100 | 88 | 79.2 |
健康診断の受診率100%を達成するため、なかなか受診に至らない対象者には、マネジメントと連携し確実な健康診断の受診に向け業務調整を依頼しています。
その効果もあり、健康診断の受診率は100%を継続しています。
2021年6月には、全役員・管理職を対象としたラインケア研修をeラーニング形式で実施しました。
冒頭、健康経営責任者である富士フイルムホールディングス人事部長が「メンタルヘルスは健康経営の重点課題」として、「部下への健康の配慮や指導の必要性、特にコロナ禍でのきめ細やかなマネジメントの重要性」などについて述べています。
そして、富士フイルムグループメンタルヘルス統括医(産業医)が、経験や知見もふまえて「職場におけるメンタルヘルス対策の意義」、「メンタルヘルス対策において管理職に求められること」を直接語り、管理職からは「上司として部下への対応の重要性が身に染みた」「部下が相談できる上司でありたい」と有意義な研修であったコメントが多く寄せられました。
新任役職者全員に対して、共通のメンタルヘルスマネジメントガイドを用いた教育を実施し、予防的な取り組みを推進しています。
また、職場風土改善として産業医と協力の上、ストレスチェックを利用した集団分析のフィードバック、業務目標面談/達成面談・自己成長計画面談などを通じ、業務に加え仕事のやりがいなど内面的なことを上長・部下で対話することでエンゲージメントの向上を図っています。
長時間労働による健康障害の防止に向け、グループ全体でヘルスチェックの仕組みを活用しています。所定外労働時間が単月80時間以上、四半期平均45時間以上の場合は、ヘルスチェックアンケートの実施、上長面談、産業医面談を実施し、健康の確保や業務上の配慮を行ないます。
当社としては、さらに所定外労働時間単月72時間に引き下げたきめ細かいフォローを実施しています。
労働時間管理については、2019年4月の法改正を見据え富士フイルムホールディングスグループ方針を策定し、その方針に基づきグループ全体で社内ルールの見直し、徹底を行いました。また全従業員に対し、法令遵守や労務管理の基礎知識を底上げするためのeラーニングを実施しました。特に新任役職者の研修の際、労働時間管理の重要性を改めて説明し、理解していただいています。
その他、客観時間を自動取得する仕組みを全従業員に取り入れ、勤怠の適正管理も強化しています。労働時間上限到達前や勤怠未登録者を対象に自動でアラームメールを配信するなど、ITを活用して、適切な健康管理や勤怠管理を行なう仕組みも強化しています。
その結果、単月の所定外労働80時間以上の人数は0を継続しています。
また、ワークライフバランスとして有休取得促進に向け、実態把握のため有休アンケートを実施、有休取得奨励日を設け、出勤する場合には上長承認の上人事に提出を求めるなどを実施し、休暇取得率も前年比で平均17%向上しています。
- * 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。