橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物の点検業務を効率化する社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」。ユーザー自身が撮影した構造物の画像を合成・解析して、ひびわれをAIが自動検出します。ここでポイントとなるのが現場における画像撮影。診断に適した画像撮影のコツをつかんで、ひびみっけを自身のツールとして使いこなしましょう。
ひびみっけの画像診断の流れ
ひびみっけは、コンクリート面を撮影した画像から、ひびのある箇所をAIで自動検出するサービスです。カメラを固定するための三脚を使用して(ドローンでも可)、ピントが正確に合っている画像を撮影します。AIは万能ではありませんので、人の目で見てひびわれと判別できる画像を撮影する必要があります。そうすることで微細なひびもAIが自動で素早く検出することが可能となります。対象物を複数枚に分割して撮影し、写真をPC上でフォルダにまとめてアップロードします。その後、クラウド上のAIがバラバラの画像を合成・ひびわれ解析し、1枚の合成画像、DXFデータ、ひびわれの積算表(エクセル)に出力できるという流れです。
ユーザーが行うワークフローは、「1. 現場のコンクリート構造物を分割撮影する」「2. 分割画像をアップロードする」の2ステップです。アップロード後約60分で、画像の合成と損傷箇所の検出が完了します。今回は現場での撮影のコツをお伝えしていきます。
撮影機材と必要なスペック
必要な機材は一般的な撮影機材で、例えばピントを合わせてシャープに風景写真を撮影するときに必要なものと同じように、「デジタル一眼カメラ」と「三脚」が基本となります。
カメラは高解像度撮影が可能なデジタル一眼カメラ(レンズ交換が可能なタイプ)であれば基本的には問題ありません(有効画素数2,400万画素以上)。カメラの設定で6,000×4,000ピクセル以上の画像を撮影できるものが該当します。この解像度があれば、ひびみっけのAIはひび幅0.1mmまで検出が可能になります。6,000×4,000ピクセルの解像度の画像であれば、1,800×1,200mm(1.8×1.2m)の大きさの対象物まで撮影しても0.1mmまで検出することが可能な精細さを保てることになります。
また、スマートフォンでの撮影は、基本的には不適切と考えていいでしょう。コンパクトデジタルカメラでもまだ解像度が不足気味のため、基本は2,400万画素(6,000×4,000ピクセル)以上の解像度のあるレンズ交換式のカメラで撮影しましょう。なお、コンパクトデジタルカメラやスマートフォンでも仕様を満たす場合、チョーク検出であれば利用可能です。
以下に、カメラの画素数、求められるひび幅の細さ、画角の広さの関係を記します。参考にしてください。
0.1mmのひび(0.3mm/画素)の撮影方法
1. カメラ画素数の確認
所有カメラの画素数を確認します。
例)当社「FUJIFILM X-T100」の画素数は6,000×4,000ピクセルです。
2. 撮影可能範囲の算出
ひび幅0.1mm以上を検出するには、横/縦の画素数にそれぞれ「0.3mm/画素」をかけて撮影範囲を算出します。
0.2mmのひび(0.6mm/画素)の撮影方法
1. カメラ画素数の確認
所有カメラの画素数を確認します。
例)当社「FUJIFILM X-T100」の画素数は6,000×4,000ピクセルです。
2. 撮影可能範囲の算出
ひび幅0.2mm以上を検出するには、横/縦の画素数にそれぞれ「0.6mm/画素」をかけて撮影範囲を算出します。
次に大事なのは、カメラの設定です。まずはカメラを絞り優先モード(カメラにより名称が異なります)に設定しましょう。モードを設定したら、絞り(F値)をF8以上に設定します。シャッタースピードは1/100秒以上ですが、絞り優先モードの場合、カメラが自動で決定します。ISO感度は200以下に設定します。ISO感度を必要以上に高い値に設定すると、ノイズ処理によって本来写るはずの細かなひびが画像から消えてしまいます。
フラッシュを使用する場合は、対象コンクリート面が150ルクス、最低でも50ルクス以上になるよう調整します。また、対象物に照明などが付帯していて、露出にムラが出過ぎるときは、フラッシュなどの補助光を当てて撮影します。
ISO感度によるひびわれの画像処理の違い
最適なひびわれ検出を実現するためのカメラ設定
- カメラ機種
デジタル一眼カメラ
- 画素数
2,400万画素(6,000×4,000ピクセル)以上(推奨)
(実物大1,800×1,200mmを6,000×4,000ピクセルの画像で撮影)- 撮影モード
絞り優先モード
- ISO感度
200以下
- 絞り(F値)
F8
- シャッター速度
1/100秒以上
- その他
三脚を利用し、デジタルズーム機能は使用しないこと
撮影アングル
橋梁やトンネルなど大きな施設を撮影するときは、どのようにして分割撮影すればいいでしょうか? 推奨しているのは1,800×1,200mm(※ひび幅0.1㎜の場合)の範囲を1ショットの画角に収めることです。これを平行移動させながら大きな面を撮影していくのです。このとき、後の画像合成のために、30%ほどオーバーラップさせることが推奨されています。例えば、まず横長の画角が実寸1,800×1,200mm程度になるようセット。1枚撮影したら横に1,260mm平行移動してまた1枚撮影、といった具合です。540mmだぶらせて撮影するわけです。
平行移動して撮影していく理由は、構造物の面に対して垂直に撮影しないとパースがついて歪んでしまうだけでなく、肝心のひびが細く写ってしまうからです。ただし、20度以内ならひびわれの撮影への影響は抑えられ、パースは補正されて合成処理されるため心配ありません。補正の原理は、パースがついて小さく写っている部分をその分大きく拡大する操作がなされます。角度がつけばつくほど拡大率が大きくなり、解像度が下がるため、20度程度が限界です。敷地や構造物の形状によって、カメラを平行移動できないときなどは、わずかであれば角度を振って撮影します。
画角に写っている構造物のサイズを決めなくても、AIがサイズを検出することができるため、画角のスケールを細かく気にする必要はありません。後の画像合成操作のときにユーザーが入力する、ある点から点までの実寸をもとにサイズが検出されます。
カメラを移動しながら分割して撮影するため、対象物の明るさは変わります。露出も合成時にAIが自動でそろえますが、撮影時になるべく同じ露出にしておくと、より適切な画像になります。そこで、背景ではなく対象物に露出を合わせながら撮影すると良いでしょう。シャッター速度、F値、ISO感度を上記の撮影条件内で変化させながら調整します。
撮影範囲の決定と撮影枚数の確認
撮影範囲の決定
- カメラの最高画素数を確認
以下、再考画素数「6,000×4,000ピクセル」のカメラを例に記載 - 撮影範囲を算出
検出したいひび幅ごとに算出方法は異なる。
【ひび幅0.1mm以上を検出したい場合】
横・縦の最高画素数にそれぞれ「0.3mm/画素」をかける。
・6,000×0.3=1,800mm
・4,000×0.3=1,200mm
【ひび幅0.2mm以上を検出したい場合】
横・縦の最高画素数にそれぞれ「0.6mm/画素」をかける。
・6,000×0.6=3,600mm
・4,000×0.6=2,400mm
撮影枚数の確認
算出した撮影範囲に従って撮影する領域で、何枚の写真撮影が必要かを見積もる。
【ひび幅0.1mm以上を検出したい場合】
写真1枚で撮影する面積は、1,800×1,200mm。
例えば、対象壁面が5,000×2,000mm(5×2m)だとすると、オーバーラップ率30%を考慮し、12枚の写真を撮影。(横に2ショット、縦に6ショットが必要になる)
撮影枚数は事前に確認されることをおすすめします。撮影枚数、利用料金を簡易見積りできるツールをご利用いただけます。
分割撮影のイメージ
現場の状況によっては厳密に仕様通りのオーバーラップ率、角度で撮影することが難しい場合もあります。撮影したらひびみっけソフトウエアの「合成チェッカー」を使って、現場での撮り漏れがないか、適切に合成できる画像が撮影できたかをチェックすることをおすすめします。
ひびみっけで、正しくひびわれを検出するための撮影のコツは以上です。このようなポイントを意識することで、最適なひびわれ検出を行うための撮影ができるでしょう。撮影後は、ひびみっけソフトウエアを使って画像をクラウドにアップロードすると、AIによって画像が自動で合成され、ひびわれが検出されます。
ひびみっけソフトウエアは利用申請後、ダウンロード、インストール、合成チェッカーまでは無償で利用いただけます。まだひびみっけをインストールしていないお客さまは利用をご検討ください。