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化学者のつぶやき

水晶振動子マイクロバランス(QCM)とは~表面分析・生化学研究の強力ツール~

水晶振動子は天然の水晶を人工的に再結晶して純水晶の結晶を作り、これを正確に切り出すことで製造されています。切り出し方には様々な種類がありますが、かつては「BTカット」など他の切り出し方の水晶も広く利用されていましたが、現在では「ATカット」と呼ばれる切り方を用いるのが一般的になっています。

測定・解析上の注意

QCM法の感度は極めて高く、発振周波数は温度、圧力、折り曲げなどの応力をはじめ、質量以外の要因にも左右されるため、解析を行う上では注意が必要です。

例えば、溶液の粘性の変化や、QCM電極への物質の析出に伴う表面の粗化などによっても共振周波数が影響されます。

ただし、このような場合にはしばしば、等価回路におけるR1の値も同時に変化することから、質量変化との識別は比較的容易とされます。

このほかにも、

  • 面積当たり質量から膜厚を算出する際、膜が不均質だと誤差を生ずる。
  • 柔らかい界面による粘弾性効果が誤差原因となる。
  • 成膜の膨潤により質量が過大に評価されることがある。

などのトラブルにも注意が必要です。

応用例

  • 気体センサー
  • PVDやめっきにおける成膜速度の推定
  • 表面に対する分子(タンパク質など)の親和性決定
  • 生体分子間の相互作用の解明

など。

より具体的な応用事例については機器メーカー、ULVACのホームページ上にて詳説されています。読者のみなさんの研究にも役立つかもしれませんね。

関連論文

  • 原理についての総説
    Alassi A, Benammar M, Brett D. Quartz Crystal Microbalance Electronic Interfacing Systems: A Review. Sensors (Basel). 2017;17(12):2799. Published 2017 Dec 5. doi:10.3390/s17122799
  • 応用事例についての総説
    Sandeep Kumar Vashist, Priya Vashist. Recent Advances in Quartz Crystal Microbalance-Based Sensors. Journal of Sensors. Volume 2011, Article ID 571405, 13 pages doi:10.1155/2011/571405
  • 金属有機構造体(MOF)との組み合わせによる気体センサーとしての総説
    Luyu Wang. Metal-organic frameworks for QCM-based gas sensors: A review,
    Sensors and Actuators A: Physical, Volume 307, 2020, 111984, doi:10.1016/j.sna.2020.111984
  • バイオセンシングに関する総説
    荻博次. 無線振動子バイオセンサの原理と応用. 電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review. 2018, 11(3), p. 180-185.
  • 電極反応(金属の析出)を解析した事例
    Jianguo Hu, Xianhe Huang, Song Xue, Göktug Yesilbas, Alois Knoll, Oliver Schneider,
    Measurement of the mass sensitivity of QCM with ring electrodes using electrodeposition,
    Electrochemistry Communications, Volume 116, 2020, 106744, doi:10.1016/j.elecom.2020.106744