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日本
一歩進んだクリニック経営

地域の医療機関と「連携」で
クリニックをパワーアップ

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

医療の高度化・専門分化の進展に伴い、1人の医師がカバーできる診療範囲は、おのずと限定されつつあるのが実情です。同様に、1クリニックが診られる患者の病態も、診療科目や院長の専門などによって限られてくることになります。そこで重要になるのが、地域の医療機関との「連携」です

クリニック開業の際は、地域の病院との連携を意識する 

クリニックにおける連携と言ってまず思い浮かぶのが、病院への患者紹介と逆紹介を行う「病診連携」でしょう。かかりつけの患者にCTやMRIなど高度な検査が必要になった場合や、入院治療が必要になった場合などに、クリニックから病院に患者を送り、検査が終わったり退院したら、再び患者を引き受けるという仕組みです。 

こういった旧来型の病診連携に加え、最近ではクリニックが、より進んだ治療に取り組む例も出てきています。例えば、がん患者の増加を受けて、病院で放射線治療を受ける患者の前処置をクリニックが担当したり、手術を終えたがん患者の外来化学療法をクリニックが手がけたり、といったケースです。ほかにも、CTしか持たない認知症専門病院が、MRIを備えた脳神経外科クリニックに患者を紹介するというような例も見られるようになっています。 

国はこれまで「入院は病院、外来はクリニック」という機能分化を進める政策を採っており、診療報酬改定によってその進展を誘導してきました。このため、今やどの病院も「地域医療連携室」などの部署を設け、紹介率を向上させる取り組みをしています。新たにクリニックを開業する際は、地域の病院の連携担当部署を訪問することをおすすめします。 

その際、訪問を事務長や看護師任せにするのではなく、院長自らも足を運ぶようにしましょう。訪問した病院ではパンフレットなどを用いて、自院の特徴や想定される患者層、強みを持つ診療分野などをアピールします。反対に、病院側の情報を仕入れることにより、逆紹介や専門分野の患者受け入れの可能性などを探るようにします。 

また、地域の医師会の会合や医師向けの勉強会などを通じて、紹介先となり得る病院の医師との関係を深めるのも一案です。単に紹介状を介した紹介よりも、互いに「顔が見える」間柄での紹介は、連携の質を高め、患者の満足度向上にもつながるからです。 

盛んになってきたクリニック同士の「診診連携」 

病診連携に加え、最近ではクリニック同士の「診診連携」も盛んになっています。 

最もポピュラーなのは、互いの専門性を補完し合う連携です。内科クリニックを受診した患者に、自院では対応が難しい皮膚症状やアレルギー症状などがあった場合、皮膚科やアレルギー科のクリニックに紹介するようなケースです。内科を受診した患者を小児科に紹介したり、整形外科を受診した関節リウマチ患者を膠原病内科などに紹介するような例も、これに当たります。 

また、病診連携の場合と同じく、高度な検査を依頼する目的で診診連携を行うケースもあります。先に触れたように、最近はMRIを備える脳神経外科クリニックが増えているので、MRI検査のために患者を紹介するといった診診連携は珍しくありません。近年は、上部消化管だけでなく下部消化管の内視鏡検査も手がけるクリニックも多いため、そうした検査を依頼する診診連携も増加しています。 

一方、在宅医療を手がけるクリニックの間では、在宅患者の対応を交代で担当することにより、24時間対応を可能にする診診連携が増えています。1人の医師が毎日、24時間体制で在宅患者の対応に当たることは現実的ではありませんが、複数のクリニックが協力し合えば、それが可能になります。国も診療報酬によって、連携型の在宅療養支援診療所の取り組みを後押ししています。高齢化の進展により、こうした診診連携は今後ますます増えていくものとみられます。 

最後に、病診連携と診診連携に関してクリニックが算定できる基本的な点数である診療報酬「診療情報提供料(Ⅰ)」(250点)の算定要件を以下にまとめました。この点数は医療機関同士だけでなく、保険薬局や介護施設への患者紹介時にも算定が可能です。また、2022年度の診療報酬改定では、情報提供先に児童相談所や保育所、幼稚園、各種学校が追加されました。こうした点数を積極的に算定することで、クリニックのパワーアップを実現しましょう。 

「診療情報提供料(Ⅰ)」の主な算定要件

「診療情報提供料(Ⅰ)」(250点)の算定要件のまとめ。診療に基づき、患者の同意を得て、診療情報を示す「診療情報提供書」を添えて患者の紹介を行った場合に、紹介先の医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り250点を算定する。


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【企画・編集 日経メディカル開発】