このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。
最近では飼主様にも病気の予防と早期発見の重要性が浸透したこともあり、動物病院でも健康診断やドッグドック・キャットドッグなどを定期的に実施するケースが増えてきました。健康診断については過去にも「フィラリア予防時期の健康診断」「健康診断の情報発信の手法あれこれ」「健康診断結果のフィードバックのポイント」などのコラムで触れてきましたが、今回は健康診断をより差別化するための一工夫をいくつか紹介したいと思います。
以前と比較すると飼主様の予防への意識が高まってきたとはいえ、現時点で健康な動物の飼主様に健康診断を「自分事」として意識していただくのは容易なことではありません。そこで健康診断についての情報発信をする際には、単にコースや価格の紹介をするだけではなく、
- 何のために健康診断を受けるのか
- どんなわんちゃん、ねこちゃんにお勧めなのか
ということをわかりやすくお伝えし、飼主様に「うちの子に必要な健康診断だ」と思っていただくことが大切です。
たとえば資料1は、犬向けの健康診断を実施した際に、特にシニアのわんちゃんの飼主様に病気の啓蒙をするためにDMに同封したものです。注意したい病気についての情報を提供するとともに、健康診断に関心を持っていただくことを意図しています。
資料2は猫向けの健康診断時のDMに記載した内容で、「甲状腺触診検査」「乳がん検査」を無料で実施する旨と、甲状腺機能亢進症や乳腺腫瘍の簡単な紹介をしています。獣医師は日々当たり前に行っている視診や触診ですが、それによりどんな病気が発見できるのかということを飼主様は意外と知りません。動物病院に連れて行って獣医師に診てもらうことによって、血液検査や画像検査をするまでもなく発見できる病気もあるのだということを飼主様に知っていただくことにより、健康診断により付加価値を持たせるとともに、関心をもっていただくことを意図しています。
資料3は、猫向けの健康診断キャンペーンを実施した際に、期間限定で完全予約制のキャットアワー(原則犬の診察がなく、猫の健康診断のみを受け入れる時間帯)を設ける旨をDMに記載したものです。
猫も、猫の飼主様も、動物病院が犬で混みあっている状況を非常に嫌います。ましてや病気ではなく健康診断のために来院してみたら、病院が犬で混みあっていて、しかも長時間待たされたということになれば、猫と飼主様のストレスは非常に大きく、二度と健康診断を受けてくれなくなってしまう可能性もあります。
そこでこの病院では
- 犬で混みあう春を避けて、猫向けの健康診断キャンペーンを設定した
- さらに昼の時間帯に完全予約制のキャットアワーを設定した
という工夫をしました。それによりねこちゃんに、極力犬との接触がなく、かつ待ち時間も少なく健康診断を受けてもらえる体制を整えました。
【2025年12月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】



