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日本
動物医療コラム

2026年版 動物病院の求人・採用の手法について

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

動物病院経営において、求人・採用は最重要課題の一つです。特に昨今は求人のための媒体や求人関連のサービスも多様化してきているため、何をどう使えばよいかわからない!という先生も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、2026年現在の動物病院における代表的な求人手法をご紹介します。

1. 「欠員補充」から「継続的なミッション」への意識転換

具体的な手法の前に、求人・採用についての考え方の話を少しだけしたいと思います。退職者が出てから慌てて求人を開始している、という動物病院は少なくないと思います。人員が十分に足りているときに問い合わせの電話や実習に来られても対応が面倒なだけだ、という本音も理解はできます。しかしながら、当社が経営サポートをしている動物病院様には、求人・採用活動は「欠員補充」ではなく、「動物病院経営を続けていくために不可欠なミッション」と捉えて、できるだけ継続的に実施していただきたいとお伝えしています。

その理由はいくつかありますが、主なものは以下の通りです。

  • 求人・採用業務を欠員が出た際の“臨時”の業務ではなく、“継続的なミッション”として捉えて臨んだ方が、ノウハウが蓄積されて強い組織になるから。
  • 求職者からどう見えるか、求職者にどんなメッセージを発信するか、どのような労働条件にするか、を意識し続けることは、動物病院のビジョンの整理やブラッシュアップにつながるから。
  • 欠員が出たときに慌てて求人活動をしようとしても、ノウハウがないため何から手を付けていいかわからず、結果として欠員の補充に苦労することになるから。
  • 求職者の見学や実習を定期的に受け入れることは、既存のスタッフに新鮮な良い刺激と学びの機会をもたらすから。

よく出る質問として「常に求人情報を出していたら、『すぐに人が辞めてしまう病院』に見えてマイナスイメージにならないですか?」というものがありますが、全く気にする必要はないと考えています。大企業も含めて多くの企業が継続的に求人・採用活動をしていますし、求人を出しているということはその職場に仕事があるということの証拠でもあるからです。また求職者が仕事探しをするときに「常に求人情報を出しているかどうか」ということを殊更に気にすることなど実際にはほとんどありません(このコラムを読んでいる皆様におかれても、過去にそんなことを気にして就職先を選んだ方は少ないと思います)。

動物病院経営をしていく以上、求人・採用はずっと付き合っていく必要があるミッションだと考えて、継続的かつ積極的に取り組むことをお勧めしています。

2. 「名刺代わり」となる自社WEBサイトやSNS

近年、特に重要性が高まっているのが、自院WEBサイトや自院SNSでの情報発信です。自社で保有・運用するメディアという意味での「オウンドメディア」という言葉も随分一般的になりました。自院WEBサイトや自院SNSで発信する情報は動物病院から求職者に対しての「自己紹介」「名刺代わり」と言っても過言ではなく、求人・採用活動の第一歩となります。

ほぼ100%の求職者が、応募前に病院のWEBサイトを閲覧します。その際、理念や診療方針、スタッフの雰囲気が伝わる情報があるかどうかで印象は大きく変わります。飼主様向けの一般的なWEBサイトだけでも何も無いよりはましですが、できれば求職者向けの情報も掲載しておきたいところですし、飼主様向けのものとは別にある程度情報量のある採用・求人用のWEBサイトを制作できればベストです。また昨今では大企業などでもYouTube、X(旧Twitter)、Instagram、TikTokを用いて求職者向けの情報提供をすることが一般的になりました。動物病院の場合はWEB担当や、採用担当の専任のスタッフがいるケースが少ないため、「誰がどうやってやるのか」という課題はありますが、余裕があればYouTubeやSNSでの情報発信を行うのも求職者の関心を引くためのプラス材料となります。

WEBでもSNSでも、発信すべき内容としては、「病院の考え」「病院の雰囲気」「働く条件」に大別されるかと思います(これはどのようなメディアを使ったとしても言えることです)。教育体制や福利厚生をわかりやすく伝えたり、院長やスタッフのインタビューで現場のリアルな声を届けるなど、「自分が求職者だったらこういうことを知りたい」と思えるような内容を意識しましょう。所有している医療機器や症例数など“ハード面”のアピールも悪くないですが、実際の求職者と話していると、「自分が入社したらどういった働き方をすることになるのか、現在働いている人はどう考えているのか」、といった“ソフト面”の情報をより知りたがっていると感じます。

3. 「名刺」をより広く拡散する求人媒体の活用

自院のWEBサイトやSNSで発信する情報が「名刺」であるなら、その名刺をより多くの人に拡散してくれるのが、各種の求人媒体です。

代表的なものはWEB上の求人サイトですが、獣医師、愛玩動物看護師、トリマーなどの職種は専門性が高いため、例えばハローワークやテレビCMをやっているような大手の求人サイトに掲載しても、閲覧数は伸びるものの応募が無いというケースが少なくありません。

専門的な職種の求人においては、動物病院やペット関連企業を専門的に扱っている求人サイトや、そのような職種を養成している学校に直接届けられるフリーペーパーなどに求人情報を掲載するのがお勧めです。動物病院専門サイトの中には無料で掲載できるものもありますので、できるだけ継続して掲載することが大切です。一方で受付や清掃など特別な資格や経験を必要としない職種については、ハローワークや大手求人サイトなどの情報の拡散力が応募数に比例しやすい傾向があります。

掲載すべき情報は、「2」と同じです。自社のWEBサイトやSNSで求人情報を発信しているなら、そのコピーや抜粋でも十分です(逆に自社のサイトを作りこむのが難しい場合は、自社サイトに求人サイトへのリンクを貼るのもお勧めです)。良い「名刺(メッセージ)」を作ったら、次はその「名刺」をできるだけ多くの場所に配って露出を高めることが大切です。

4. 大学、専門学校への求人情報提供

一般の大学生などが就職活動をする際には、企業の求人情報を取りまとめている大手の就活ポータルサイト(リクナビ、マイナビなど)から資料請求や説明会への申込をすることが多いかと思います。一方で中小企業がほとんどである動物病院業界ではそのような仕組みはまだ浸透していないため、学校に届いた求人資料を見て実習先を選ぶという学生も多いのが特徴です。当社が経営サポートをしている動物病院様でも定期的に大学や専門学校へ求人資料を郵送していますが、見学・実習に来た学生に病院を知ったきっかけを聞いてみると就職課や研究室に届いていた資料を見たという方が非常に多いです。今後もこの傾向が続くかどうかはわかりませんが、少なくとも2026年現在、新卒の学生の採用を考える際には学校への求人資料発送は外せない手法だと考えています。

学校に発送する求人資料は、学校が提供している求人票などのフォーマットを利用する形でも問題ありませんが、情報の充実度や多くの宛先に一斉発送しやすいという観点から、オリジナルの求人資料を作って発送することをお勧めしています(A4両面程度の簡単なもので十分です)。載せるべき情報は「2」と同じですが、学校に求人資料として受け付けてもらうため、特に労働条件についてはわかりやすく漏れのないように記載しましょう。

また動物病院業界の特徴として、学校の就職課や就職担当の先生の力が今でもある程度強いということが言えます。就職課主催の就職説明会があったり、就職担当の先生に頼んで個別の説明会に伺ったり、ということが可能なのも、この業界ならではです。就職先である動物病院からの問い合わせや依頼に対しては丁重に対応してくれる学校がほとんどですので、遠い存在だと思わずにぜひ積極的に連絡をして良い関係を構築されることをお勧めしています。

5. 人材紹介はあくまで“選択肢の一つ”

人材紹介(有料職業紹介)というのは、就職する人材の候補を連れてきてくれ、面談や実習をセッティングしてくれ、採用に至った場合は年収の3割~4割程度の手数料を取る、というビジネスです。近年動物病院業界においても人材紹介業者が増えてきており、「人材紹介ってどうなの?」という質問を院長先生から受けることも増えました。これだけでコラムが1本書けるようなトピックではあるのですが、成功例も失敗例も見てきた私の見解を簡潔にお伝えすると、「人材紹介も求人・採用のための手法の一つとしてうまく活用すればよい(過度に避ける必要はない)、しかしながらコストがかかりトラブル事例もあるので業者の言いなりにはならずに主体的で慎重な判断をしましょう」なります。

2026年現在における現状を見る限り、人材紹介会社が連れてくる人材だからといって優秀というわけでは決してないですし、むしろ異業種からの転職だったり、ブランクがあったり、かなりご高齢だったり、以前の職場とトラブルになって退職しているなど、(失礼ながら)ややクセがある人材が散見されます。そういう方が一律にダメという気はないですが、現実として広い意味でのリスクだと理解しておく必要はあります。また動物病院業界では「非公開求人」のようなものはほとんどなく求人情報が比較的オープンになっていますので、そもそもある程度の主体性や判断力がある人材は、わざわざ人材紹介会社に依頼などせずに自ら求人情報などを探すことが多いのも事実です。事前のすり合わせが不十分なまま、人材紹介業者にプッシュされる感じで入社して早期にミスマッチを起こして退職してしまうケースも散見されますし、その場合も手数料が全額返還されることはまれです。もちろん人材紹介経由で雇った獣医師や動物看護師がうまく病院に定着した事例も見たことはありますが、その割合が決して多いわけではない、というのが2026年現在の現実です。

年収の3割~4割という高額な手数料がかかるので、そのコストに見合う人材なのか、業務への理解や志望度は十分なのか、などをより慎重に判断する必要はあります。特にまだキャリアビジョンが不明確な新卒の学生を人材紹介で雇用すると、「臨床は向いてなかった」「公務員になる」などとあっさり早期退職するケースもあり、より熟考が必要です。実際に手数料の返還などを巡って人材紹介会社とトラブルになっているケースも少なくありません。

人材紹介を求人の一つの手段として活用するのは良いですが、思わしくない結果になったときに人材紹介会社が責任を取ってくれるわけではありませんので、最終的な判断は主体的かつ慎重に行いましょう。
 

以上、2026年現在の動物病院の求人・採用の手法についてご紹介しました。求人・採用に頭を悩ませている院長先生は多いかと思いますが、動物病院を運営していくためには求人・採用は不可欠なものですので、ぜひ積極的に取り組んでいただければと思います。

まとめ:「欠員補充」から「継続的なミッション」への意識転換/「名刺代わり」となるメッセージを作り、拡散しよう/人材紹介はあくまで“選択肢の一つ”

【2026年3月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】