なぜ、かつて「複合機メーカー」であった企業が、今、ビジネスDXとAIの最前線を走っているのか。その答えは、数十年にわたる「企業の情報資産」への執着と、お客様と共に考え、共に創り出す「創造的伴走者」としての確固たる使命にあった。富士フイルムビジネスイノベーションジャパン取締役社長 旗生泰一氏(写真左)と、同社でDX・AI戦略を牽引する執行役員 尾崎裕司氏(同右)の両氏に、同グループが持つ競争優位性の源泉と組織変革の舞台裏を聞いた。
「企業理解」が全ての出発点
現在、幅広いDX・ITソリューションを提供する同社。しかし彼らの強みは、単なるオフィス機器メーカーやIT商材ベンダーではなく、企業の業務プロセスを深く知り、そこに課題を見いだし解決する「業務改善のプロフェッショナル」としての独自ノウハウだ。「もともとメーカーから出発した私たちは、現場を知り、改善活動を継続することの重要性を理解していました」と旗生氏。「いま、私たちのお客様は多種多様な業界・業種にわたっています。そして、それぞれの現場における業務フローは全く異なる。お客様の企業の内部で、どんな業務が行われているのか、そこでどんな情報が扱われ、どんな課題が潜んでいるのかを個別に把握しなければ、本当に必要な改善策を提供することは不可能です」。過去数十年にわたる日本全国の様々な企業への伴走支援によって得られた膨大なノウハウを整理・集約し、課題を抽出。この事実に基づいた的確なアプローチこそが、同社のソリューション提案が高い評価を得るひとつの理由だという。
情報資産を武器に変える
3つのレイヤー
「個々の企業の特性に合わないシステムや仕組みを早計に導入してしまうと、コスト、生産性、社員のモチベーション、その全てに悪影響を及ぼしかねない」と尾崎氏は警鐘を鳴らす。「私たちは製品導入を支援するが、それはあくまで手段に過ぎません。目指すのは、お客様のDXをあるべき方向へ導くこと」。尾崎氏によれば、企業のビジネスDXは、以下のようなレイヤーに沿って強化していくのが彼らなりのセオリーだという。
- 第1レイヤー
- IT基盤整備やセキュリティ強化に
よる情報資産の有効活用
- 第2レイヤー
- MFPや関連ソリューションによる
情報ゲートウェイ構築
- 第3レイヤー
- 企業独自のソリューション導入と
AI活用による企業力のさらなる強化
では、企業がまず取り組むべきアプローチは何だろうか。尾崎氏によれば「情報の入口を押さえることと、その情報を適切に扱うためのインフラづくりが重要となる」のだという。「第1、第2レイヤー」と呼ばれるこの領域には、2つの大きなコアソリューションが存在する。ひとつは企業のIT運用とセキュリティを支える「マネージドITサービス」。そしてもうひとつは「情報の入口」としてのMFP※だという。
- ※MFP(Multifunction Printers):プリント、スキャン、コピー、FAX等の基本機能を備えた複合機
高度なIT・セキュリティ基盤を
「専門集団」に委ねる
ビジネスDXを進める上でまず重要となるのが、「IT・セキュリティ基盤の合理的整備」だ。情報資産を適切に保護・管理していく上では、サーバー運用やエンドポイント管理、ネットワーク監視、ヘルプデスク、ランサムウエア対策など、幅広いIT領域に対応する必要がある。IT人材不足が叫ばれる昨今、これらをまとめてアウトソースできるマネージドITサービスは、近年急成長しているソリューションだ。同社もその選択肢の1つとして「IT Expert Services」を提供。本来、企業の内情に精通したIT人材なしには実現困難なIT基盤の「構築」、「運用」、その後の「改善支援」までをワンストップでカバーできるのだという。「これを活用すれば、社内の限られた人的リソースをよりコアな戦略的業務にシフトさせることも可能となります」と尾崎氏は語る。
複合機という名の
「情報ゲートウェイ」
IT・セキュリティ基盤の強化と並行して取り組むべき「第2のレイヤー」は、情報のゲートウェイ整備だ。「MFPは、企業のDXやITソリューションにおいて、データ入力機能を担う重要なエッジデバイスです」と尾崎氏は語る。「MFPが受け取った文書は、AI-OCRやクラウドとの連携により、適切なプロセスで自動処理されます。結果として、人間に比べて格段に早く、かつ高度なデジタル業務をこなすことができるのです」。企業がより先進的なDXに取り組むためには、いかに多くのアナログ情報を正しく、速く、かつ簡単にデジタル化できるかが重要なポイントとなる。紙やFAXでのやりとりがまだ一定数存在する昨今においては、このアナログ-デジタルの境目を繋げるエッジデバイスをしっかりと押さえておくことが不可欠なのだという。
統合プラットフォームで
情報資産をまるごと管理
コロナ禍を1つのきっかけとして、企業活動には多様なコミュニケーションツールや管理システムが定着した。しかしその弊害として、社内の情報資産が散在し、利活用の促進を妨げてしまうという問題も指摘されている。そこで重要となるのが統合プラットフォームだ。「これを導入することで、社員の日々行う作業が効率化され、組織全体の業務スピードや情報処理の質が変わる」と尾崎氏が語るように、統合プラットフォームは企業のDXにとって大きな意味を持つ。同社の 「FUJIFILM IWpro」もその選択肢のひとつ。これは、「富士フイルムビジネスイノベーションが長年積み上げてきたMFP等のハードウェア管理と、ドキュメントやワークフロー運用を統合した包括的な環境」であり、「企業の情報資産をまるごと管理・活用できるプラットフォーム」だと尾崎氏は説明する。「FUJIFILM IWproは日々の業務に必要なツールを統合することで、企業内の情報の流れを最適化します」。導入企業では、承認プロセスの大幅短縮や、煩雑な入力作業の完全自動化などの成果が報告されているという。「さらに近年の取り組みとして、整備した企業内データとAIとを組み合わせ、独自のAIモデルを作成することも可能」と尾崎氏は語る。
自社データから生まれる
「唯一無二のAI」
AIモデルの作成は一般的に、専門人材リソースや、開発にかかるコスト・時間が不可欠とされる。しかし「専門的なAIスキルがなくても、企業が自社内の情報を使って独自のAIモデルを作成し、業務に組み込む手段がある」と尾崎氏は説明する。それが「FUJIFILM IWpro Intelligent Assistantオプション」だ。このサービスでは、データのクレンジングやアルゴリズム開発、検証などがワンストップで自動実行でき、自社の業務に最適化されたAIモデルを簡単に構築することができる。これにより、カスタマーセンターにおける問い合わせ内容の自動分類や、請求業務における入金消込タスクの自動化、生産の現場における高精度の需要予測などが可能になるのだという。「作成したAIモデルは、FUJIFILM IWproという共通基盤の上で動くことで、そのまま既存ワークフローに組み込まれ、業務の一部として滑らかに機能します」。さらに尾崎氏は強調する。「企業にとって使いやすいものでなければ、AIを導入する意味はありません」
企業進化の最終到達点はどこか
このような環境整備の結果もたらされるのは、既存業務の生産性向上や、社内での情報のやりとりが円滑に進むという実務面での効果だ。しかし旗生氏によれば、その先にもう一つの重要なゴールがあるのだという。「業務プロセスそのものを再設計し、企業全体の業務体系をより合理的かつ強靱なものにアップデートする取り組みこそが、私たちの提供する価値の本質です」と旗生氏。「企業の活動は、請求や注文処理、顧客対応、在庫・配送管理など多岐にわたり、そこには多様な業務プロセスが存在する。構造的なロスや改善ポイントを可視化しながら、同時に組織内に存在する様々なノウハウを集約し、AIを活用して企業独自の知を集約・統合する。これこそが、企業の競争力強化に直結する取り組みなのです」と旗生氏は語る。
企業の経営革新へ。揺るぎない信念
「お客様の成功こそが、私たちの存在意義です」と強く言い切る旗生氏。技術革新のスピードが加速する中、同社が一貫して大切にしているのは、日本中の企業の持続的な成長を支えることだ。単発のシステム導入ではなく、長期的な視点で企業の体質改善を図る。そのために必要な技術、サービス、サポートを総合的に提供し続ける。「私たちが目指すのは、お客様が『この会社と一緒に、新しいことにチャレンジしてみよう』と感じていただける関係性です。不確実な時代だからこそ、信頼できるパートナーの存在が重要になる」
AIをはじめとする技術の急速な進歩により、多様な可能性がさらに開かれつつある今、「企業の情報資産」を高度に活用すべく、実装から運用まで生涯の責任を持って支援する富士フイルムビジネスイノベーション。彼らが描くビジョンは、顧客と共に考え、共に歩むことで実現する、真に価値ある企業活動の創造なのだ。

