クラウド運用とは?メリット・課題・成功のポイントまで解説

2025.12.16

クラウド運用とは?メリット・課題・成功のポイントまで解説

クラウド運用とは?メリット・課題・成功のポイントまで解説

企業のシステムを安全かつ安定して動かすために活用できるのが、クラウドを使った運用です。

サーバーの監視やバックアップの管理、利用者の権限設定など日々の細かな作業が整理されていないと、トラブル対応が遅れ、想定外のコスト増につながる恐れがあります。

そこで重要なのが、クラウドの仕組みを正しく理解し、自社に最適な運用方法を選択・活用することです。
本記事ではクラウド運用の基本から種類ごとの特徴、クラウド運用を成功させるためのポイントを解説します。

クラウド運用とは

クラウド運用とは、インターネット上のクラウドサービスを使って社内システムを安定的に稼働させることを言います。

たとえば、サーバーの状態監視やデータの自動バックアップ、利用者の権限設定の実行などが含まれます。

従来のオンプレミス環境(情報システムを企業自身で所有すること)では、自社で物理サーバーを購入・設置していました。しかし、クラウドではベンダーが提供する仮想環境を利用するため、運用の責任範囲がベンダーと利用者でわかれる点に違いがあります。

運用の責任範囲を曖昧にしたまま運用を続けると、トラブル発生時に対応が遅延したり、必要な設定が抜けたりする可能性があります。

クラウドの仕組みを理解し、自社が担う作業を整理することで、安全で無駄のない運用が可能です。

クラウドの種類と運用方法

クラウドにはいくつかの種類があり、それぞれ運用の考え方や必要な体制が異なります。

以下では代表的な4つの種類について、その特徴と運用上のポイントを解説します。

  • パブリッククラウド
  • プライベートクラウド
  • ハイブリッドクラウド
  • マルチクラウド

パブリッククラウドは、多くの企業が共通のクラウド基盤を共有して利用するタイプです。代表的なサービスとしてAmazon Web Services (AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)などが挙げられます。

パブリッククラウドは構築の手間が少なく、必要な分だけ使える従量課金制が一般的で、運用の負担を抑えやすい点が特徴です。監視やバックアップなどの日常的な作業を自動化しやすく権限管理も細かく設定できるため、初めてクラウドを使う企業でも導入しやすい仕組みです。

一方で、ハードウェアや環境など利用者が自由に変更できない部分もあるため、設定はサービス側の仕様に合わせて進める必要があります。

プライベートクラウドは、単一の組織のみが利用する専用クラウドです。

パブリッククラウドと比べてカスタマイズ性が高く、データの保管場所やアクセス経路を完全にコントロールできるメリットがあります。そのため、厳格なセキュリティー要件や規制対応が求められる業界(金融・医療など)で採用されるケースが多い形態です。

運用面では、物理インフラの保守やネットワーク設計まで自社で管理する必要があるため、専門スキルを持つ人材の確保が重要です。

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせて利用する形態です。

たとえば、機密性の高い顧客データはプライベート環境で管理し、Webサイトやキャンペーンシステムはパブリッククラウドで運用するといった使い分けが可能です。このアプローチにより、セキュリティーと柔軟性、コストのバランスを取れます。

運用時には、異なる環境間でのデータ連携やネットワーク設定、統一された監視体制の構築が必要です。両方の環境を一元管理するツール(マルチクラウド管理プラットフォーム)を導入すると、運用負荷を軽減できます。

マルチクラウドは、複数のクラウドサービスを同時に利用する構成です。一般的に、Amazon Web Services (AWS)とMicrosoft Azureを組み合わせたり、用途ごとにサービスを切り替えたりする方法が挙げられます。

定期的にサービスの切り替えを行えるため、特定のベンター製品やサービスに依存して他社への移行が困難になるベンダーロックインを回避でき、各社の強みを活かしたシステム設計が可能です。

一方で、クラウド間で設定方法が異なるため、運用ルールを整理しないと作業が複雑になる場合があります。権限管理やアラート設定の基準を統一し、各クラウドの状態をまとめて確認できる仕組みを整えると、安定した運用につながります。

クラウド運用のメリット

クラウド運用には、従来のオンプレミス環境と比べて多くの利点があります。

以下では、クラウド運用がもたらす代表的なメリットを具体的に解説します。

  • 初期導入コストが低い
  • 運用・管理にかかる負担が軽減される
  • 場所を問わず利用できる

クラウドでは物理サーバーやネットワーク機器を購入する必要がないため、初期投資を抑えられます。

従来のオンプレミス環境では多額の設備投資が発生していましたが、クラウドは月額制や従量課金制で利用できるため、スモールスタートが可能です。

たとえば、新規事業の立ち上げ時には小規模な構成で始め、ユーザー数の増加に応じてリソースを拡張していく段階的な投資ができます。

予算が限られるスタートアップ企業や、一時的なキャンペーンサイトの構築といった用途に適しています。

クラウドを運用すれば、インフラ層の保守・監視・障害対応はクラウドベンダーに任せられるため、運用・管理にかかる負担を軽減できます。 また、バックアップや監視の仕組みを自動化しやすいため、担当者はトラブル予防や改善活動に集中できます。

ただし、利用者側が担う責任範囲(アクセス権限の設定・アプリケーションレベルの監視など)は存在するため、作業内容を整理し責任範囲を明確にしておくことが重要です。

インターネット接続環境があれば、世界中どこからでもクラウドリソースにアクセス可能です。自宅や外出先、複数拠点から同じシステムにアクセスできるため、働く場所を選ばない仕組みを構築できます。

複数拠点で事業を展開する企業では、地理的に離れた拠点間でも同じデータやアプリケーションを共有でき、協業がスムーズになります。

また、災害時にオフィスが使用できなくなった場合でも、自宅や別拠点から業務を継続できるため、BCP(事業継続計画)の観点でも有効です。

クラウド運用における課題

クラウド運用にはメリットがある一方で、導入・運用段階で直面しやすい課題も存在します。

以下では、とくに注意すべき4つの課題について解説します。

  • 既存システムとの連携の難しさ
  • カスタマイズ性とコスト管理のバランス
  • 情報セキュリティー上のリスクの考慮が必要
  • 人材・スキル不足による運用負荷の増加

オンプレミスで稼働している既存システムとクラウド環境を接続する際、ネットワーク構成やシステム間のデータ形式の違いが障壁になるケースがあります。

たとえば、社内の古いシステムがクラウド連携に対応していない場合、設定変更や追加の仕組み作りが必要となります。連携部分を考慮せず移行を進めると、システムが正しく動かない可能性があります。

事前に利用している機能やデータ形式を洗い出し、段階的にクラウドへ接続する計画を立てることがスムーズな運用につながります。

クラウドは柔軟にカスタマイズできますが、必要以上に機能を追加したり、無駄に稼働させ続けたりすると費用が増える場合があります。とくに、オーバースペックな機能を選んだり、全く使わない時間も稼働させ続けたりすると、想定以上にコストが増加するケースもあります。

また、従量課金制が一般的であるため、想定外のアクセス増加や大量のデータ転送量が発生した場合には、高額請求につながる可能性があります。

一方で、カスタマイズを最小限に抑えると、目的が実現できなくなることもあります。どの機能を使うのかを明確にし、費用と性能のバランスを定期的に見直すことで、適切なシステムの維持が可能です。

クラウド環境では、インターネット経由でアクセスできる特性上、不正アクセスやデータ漏えいのリスクが存在します。

とくにパブリッククラウドでは、複数の利用者が同じ物理インフラを共有するため、適切な権限設定や暗号化を怠ると情報流出につながります。

対策としては、IAM(アイデンティティ・アクセス管理)による権限制御の徹底や多要素認証(MFA)の導入、定期的なセキュリティー監査の実施が効果的です。

また、クラウドベンダーが取得しているセキュリティー認証を確認し、要求仕様を満たすサービスを選択することも重要です。

クラウド運用には、従来のインフラ管理とは異なる専門知識が必要です。

インフラ構築やコンテナ技術、CI/CDパイプラインの構築といったスキルを持つ人材は市場でも不足しており、採用や育成が課題となるケースが見られます。

とくに中小企業では、少人数の担当者に運用業務が集中するため、属人化や業務過多による品質低下のリスクが高まります。

対応策としては、クラウドベンダーが提供するトレーニングプログラムの活用や外部の運用代行サービスの検討、社内での知識共有体制の整備が有効です。

クラウド運用を成功させる5つのポイント

クラウド運用を安定的かつ効率的に進めるには、導入時の計画から日常的な運用管理まで、体系的なアプローチが求められます。

以下の5つのポイントを押さえることで、コスト超過やセキュリティーインシデントといったリスクを最小化し、ビジネス価値を最大化できます。

  • クラウドファーストの戦略を策定する
  • 定期的にパフォーマンスレビューを行う
  • セキュリティー対策を行う
  • 運用方法や障害対応手順を標準化しておく
  • クラウド運用をアウトソーシングする

新規システムの構築や既存システムの更改を検討する際は、「クラウドでの実現可能性を優先的に検討する」という方針を社内で明確にすることが重要です。

クラウドファーストの戦略では、オンプレミス環境の維持コストや柔軟性の欠如といった課題を踏まえ、クラウド移行の優先順位や判断基準を定めます。

たとえば、監視やバックアップを自社で行うのか、クラウド事業者に任せるのかを事前に決めておくことで、対応漏れを防げます。

経営層を含めた全社的な合意形成をはかることで、個別部署の判断によるバラバラな導入を防ぎ、統一されたガバナンス体制の構築が可能です。

クラウド環境では、リソースの使用状況やコスト推移を定期的に確認することが重要です。

無駄な支出や性能劣化の兆候を早期に発見し、必要に応じて設定を見直すことで、パフォーマンス低下による業務効率の悪化や不要な出費を避けられます。

そのためには、月次または週次でレビュー会議を設定し、CPU使用率・メモリ消費量といった指標を可視化したダッシュボードをもとに議論する方法が効果的です。

たとえば、使用率が低いまま放置されているサーバーがあれば削減対象として検討し、逆に負荷が高まっているリソースには事前にスケールアップの計画を立てられます。

定期レビューを習慣化することで、クラウド運用の安定やパフォーマンス向上につなげられます。

クラウド環境では、安全性確保のために、アクセス権限の適切な設定と継続的な監視が重要です。

具体的には、アクセス制御の強化やデータ暗号化、監視やログ管理による脅威の検出などの取り組みがあります。加えて、設定のヌケモレがないかを定期的に監査すると、トラブルの兆候を早期に発見できます。

セキュリティーログを集約して異常なアクセスパターンを検知する仕組みを活用すれば、インシデントの早期発見も可能です。機密情報を扱うシステムほど、日常的な見直しが運用の安定につながります。

万が一担当者が変わっても、安定した運用を継続できるよう、監視項目・バックアップ手順・障害発生時の対応フローをチーム内で共有することが必要です。

たとえば、「アラートが発生した際の第一対応者」「復旧手順書の保管場所」といった情報をRACIチャート(責任分担表)として明確にしておくと、混乱を防げます。

また、定期的に障害対応訓練を実施し、手順書の実効性を検証する取り組みも有効です。作業を標準化することで、チーム全体が迷わず動ける体制を整えられます。

自社内にクラウド運用の専門人材が不足している場合や、コア業務にリソースを集中させたい場合には、外部の運用代行サービスの活用が有効です。

専門事業者は24時間365日の監視体制や豊富な運用ノウハウを持っており、社内で体制を構築するよりも迅速に安定運用を実現できるケースがあります。

ただし、委託先との責任範囲を明確にするSLA(サービスレベル契約)の締結や、定期的な報告会の実施といったガバナンスは維持する必要があります。

すべてを外部委託するのではなく、戦略立案や重要な意思決定は自社で行い、日常的な運用業務を委託するハイブリッド型の体制が効果的です。

まとめ

クラウド運用は「導入して終わり」ではありません。

役割分担を明確にし、定期的なパフォーマンスチェックや権限管理の見直しを続けることで、コスト効率と安全性を両立できます。

安定運用の秘訣は、日々の小さな改善の積み重ねにあります。今日から一歩、クラウドを“攻めの運用”に変えていきませんか?

クラウドサービスに関してお困りごとがあれば、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンがサポートいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。