2026.01.15
DXにおける事例とは?業界別の事例と成功させるポイントを解説
DXの成功事例を知ることは、企業が自社でもDXを推進し、短期間で成果を出すことにつながります。
本記事では、製造業や建設業、自治体など、業界別のDX事例をそれぞれの特徴をふまえながらご紹介しています。
また、自社でのDX推進を成功させるためのポイントについても解説します。
そもそもDXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業でデジタル技術を用いて、業務を効率化したり、ビジネスモデルを変革させることを言います。
デジタル技術で自動化するだけでなく、企業風土そのものを根本的に変革し、競争上の優位性を確立することを意味します。
DXとデジタライゼーションの違い
DXはビジネスモデルや組織文化を変革する取り組みであるのに対し、デジタライゼーションは業務プロセスのデジタル化による効率化を指します。
デジタライゼーションでは、既存の業務プロセスのデジタル化・効率化を目指します。
一方、DXはデータとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革することです。
DXとデジタイゼーションの違い
デジタイゼーションは、物理的なアナログ情報をデジタル化することを指します。
たとえば、紙の帳票などをエクセルデータに変換するなどです。そのため、DXとは範囲や目的が異なります。
デジタイゼーションは、デジタライゼーションやDXを実現するための土台であり、DXの前提条件となるプロセスです。
【業界別】DX事例まとめ
ここでは、以下の10個の業界別にDXの事例を解説します。
- 製造業
- EC・小売業
- 建設業
- 不動産業
- IT・情報通信業
- 金融業
- 物流・運輸業
- 卸売業
- 医療業
- 食品・飲食業
製造業
製造業のA社の事例では、AI(人工知能)や統計解析を用いた、素材の研究開発である、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を推進しています。
これによりデータにもとづいて、顧客の抱える悩みを予測し、最適な条件を提示することが可能となりました。ほかにも、開発工数の削減や早期の製品化など、多数の結果が出ています。
人の経験に頼っていた判断をデータで支えることで、ムラのない品質を保ちながら効率よく生産できる体制を整えることが可能です。
EC・小売業
事務用品を販売するA社の事例では、柔軟なニーズに対応するためにきめ細やかな配送サービスを実現しています。DXの活用により、受取手のお客様とお届けをする配送キャリア、そして企業をつなげられるようになりました。
ほかにも、顧客ニーズにスピーディーに対応するために、これまでMD(マーチャンダイザー)が手動で対応していた業務に、AIを導入しています。
これにより、商材の拡大や商品選定、価格設定業務などを効率化できるようになりました。
建設業
O社の事例では、ロボットやAI、リモート技術などを活用した、進化型DXパッケージ施工に取り組んでいます。建設現場の生産プロセスを、工程や業務単位で再設計し、生産システムを見直しました。最終的な目標は、施工のオートメーション化です。
また、社内ではDX人材を育成するために、DXアカデミーを開講しています。受講者のデジタル技術への理解度やマインドに合わせて、3つのレベルを設定し、自社のDX推進をサポートする学習体制を整えているのが特徴です。
不動産業
M社の事例では、自社のデジタルビジョンを策定し、顧客との接点をオンライン上でも増やしています。顧客がオンラインとオフラインを自由に行き来できる環境を整えつつ、収集したデータを各種サービスの開発へと還元しています。
また、各部署で取得したデータを一か所に集約し、全社員が自由に活用できるようにしているのも特徴です。これにより、部署やサービスを超えたユーザーの行動分析や試作の立案が可能となりました。
従業員が実務でデータを活用することで、新たなビジネス機会を生むことにつなげています。
IT・情報通信業
S社の事例では、DXにより新規事業を立ち上げました。たとえば、労働人口の低下やフードロスの問題を解決する、クラウド型のAI需要予測サービスや、自販機業界における業務効率化などです。
また、コールセンターや営業活動においても、生成AIに置き換えることで、業務の効率化につなげました。加えて、AI搭載のデータセンターの構築も進められています。
社員が社内データを活用しながら、AIの学習方法を見直し、工夫することで、さらに質のよい出力結果を得ることも期待できます。
金融業
Sグループは、モバイル総合金融サービスを中核としたDXを推進しています。銀行口座・カード決済・証券・保険といった金融サービスを一つに集約したサービスを展開し、提供開始以降、提携戦略とリアル店舗を組み合わせたハイブリッド型の展開により、顧客基盤の拡大を進めています。
また、家計簿アプリと連携したポイントサービスや、旅行予約サービスなど、非金融分野への展開も進めています。
あわせて、AI・データ活用による業務変革にも力を入れました。コールセンターでのAI活用や、自動応答システムの導入により業務効率化を実現し、近年は生成AIの活用も本格化しています。
物流・運輸業
Sグループは、配送伝票に記載された手書き数字をAIで高精度に読み取る仕組みを導入し、業務効率の向上と省人化を実現しました。
さらに2024年にはGoogle Cloudと戦略的パートナーシップを締結し、データ分析やAIを活用した次世代物流システムの構築を推進しています。
スタートアップや大学との共同開発にも積極的に取り組み、業界全体の課題である人手不足や非効率な配送の解決に向けたDXを加速させています。
卸売業
卸売業界では、BtoB市場における顧客の「時間価値」の最大化を目的に、DXを軸としたビジネスモデルの進化が進んでいます。ある企業では、商品点数3,000万点超、サイズ違いを含めると膨大なバリエーションを扱いながら、ECサイトや設計CADと連動したデジタルな「売り場」を構築しました。
さらに、図面品の受注生産においても短納期かつ高い納期遵守率を実現しています。2024年には、需要側と供給側をつなぐ製造業向けマーケットプレイスも立ち上げ、顧客とサプライヤー双方に近づくプラットフォーム型ビジネスへと進化しています。
DXは単なる効率化にとどまらず、バリューチェーン全体のスピード化・自動化を実現する成長戦略として位置づけられています。
医療業
D社は、経営戦略と連動したDXを全社的に推進し、創薬から臨床開発、サプライチェーン、販売・情報提供まで幅広い領域でデジタル変革を進めています。全社員に生成AIを提供し、安全に活用できる環境を整備することで業務負荷の軽減と生産性向上を実現しました。
創薬分野では、AIによる画像解析やデータ駆動型創薬により研究効率を高め、有望な化合物の発見にもつなげています。臨床開発では医療ビッグデータと自社データを統合分析し、開発の不確実性を低減しました。
さらに、メタバースを活用した工場研修や、安全性情報の統合管理など、医薬品の品質と提供価値の向上にもDXを活用しています。
教育業
S市では、義務教育段階の小・中学校を対象に、ICT環境の整備を進めるプロジェクトを推進しています。児童生徒一人ひとりに1台の学習用端末とクラウド環境を整備し、デジタル教材を活用した個別最適な学びを実現しました。
教員側も、学習データを活用した指導や校務の効率化を進めており、働き方改革にもつながっています。さらに、生成AIの活用に向けた検証も進めており、次世代型の教育DXを見据えた取り組みが進行中です。
食品・飲食業
A社の事例ではDXによる企業変革を目指し、新たな事業を多数展開しています。たとえば、生活習慣病患者やその予備軍の方に向けて、健康診断のデータをもとに最適な栄養バランスの食事プランを計画しました。
また、課題とされてきた食品や嗜好飲料、サプリメントなど多彩なカテゴリの製品を一括管理する際にも、DXを利用しています。
様式の異なるデータを共通ルールのもとで、利用可能なデータとしてまとめました。
データ活用が進むことで、データにもとづいた新製品の開発やコスト削減につなげられているのがメリットです。
自治体
Y県では、救急医療の現場における人手不足や地域格差といった課題を背景に、医療・救急分野のDXを推進しています。従来、救急搬送時には、救急隊が複数の医療機関に電話で受け入れ可否を確認する必要があり、搬送先が決まるまでに時間がかかるケースも少なくありませんでした。
そこでY県では、医療機関の受け入れ状況をリアルタイムで共有できる救急医療情報システムを導入し、救急隊がタブレット端末などから空きベッドの有無や対応可能な診療科を即時に確認できる仕組みを構築しました。これにより、受け入れ先の決定までに要する時間が短縮され、救急搬送の迅速化につながっています。
さらに、救急隊と医療機関の情報連携もデジタル化され、患者の症状やバイタルデータを事前に共有できる体制が整えられました。病院側は患者到着前から治療準備を進められるようになり、初期対応の精度向上にも寄与しています。
DXの成功事例に共通するポイント
ここでは、DXの成功事例に共通するポイントについて、下記の5つを紹介します。
- 段階的にDXを進める
- 経営層を中心に中長期的な視点で計画している
- DX人材を育成・確保する
- 業務プロセスの見直し・再構築を実施する
- 顧客・売上などのデータを活用する
段階的にDXを進める
DXを成功させるポイントとして、段階的にDXを進めることが挙げられます。
いきなり全社でDX化を推進すると、万が一トラブルが発生した場合に業務に支障をきたす場合があります。
そのため、最初は一部の部署で試験的にDX化を行い、その後は優先順位の高い部署から順に進めて行くことをおすすめします。
トライアルの際に問題が発生した場合は改善策を練ります。業務プロセスについて、従業員からフィードバックを得ることも大切です。
経営層を中心に中長期的な視点で計画している
企業でDXを推進する際には、経営層を中心とした中長期的な計画が欠かせません。
DXが停滞する最大の要因は、経営層の関与不足や意思決定の遅れ、短期的な利益を求める点などが挙げられます。
そのため、経営層がDXに関するビジョンを示し、全社的に取り組むことが重要です。
また、DXを推進する推進部門を設置し、CDO(最高デジタル責任者)を配置し、トップダウンで戦略を推進すると良いでしょう。
DX人材を育成・確保する
企業でDXを定着させるためには、DX人材の育成および確保が必要です。
外部の専門家と協力しつつ、社内でもDX人材を育成するための研修を実施することが、DXの成功につながります。
これにより、新しいデジタル技術やアイデアの導入が活発になり、イノベーションが生まれやすい土壌が形成されやすくなったり、自社の事業を深く理解した社員がDXを推進することで、より効率的なDX実装と体制構築が可能となります。
業務プロセスの見直し・再構築を実施する
DXを通じて、既存の業務プロセスを抜本的に見直すことが、DX推進の成功のポイントです。
慣習化した非効率な業務プロセスを残したままDXを推進しても、部分的な効果しか得られません。
業務プロセス全体を見直し、再構築することが大切です。
まずは、ブラックボックス化している自社の業務プロセスを洗い出し、DXにより効率化できるポイントがないかどうかをチェックしましょう。
顧客・売上などのデータを活用する
顧客の行動や生産ラインの稼働状況など、DX化によって収集したデータを活用することで、より的確な経営判断ができるようになります。
勘や経験に頼った判断ではなく、事実ベースで顧客ニーズを満たす判断につなげられます。
たとえば、顧客の購買履歴やアプリの利用動向などのデータを分析し、それぞれの顧客に合わせて配信する広告をパーソナライズ化することで、広告宣伝費の費用対効果を高めることが可能です。
まとめ
本記事では、業界別のDX事例やDX化を成功させるためのポイントなどを解説しました。
自社の既存システムを見える化し、経営層や従業員をうまく巻き込みながら一部の部署から段階系にDXを進めて行くことが成功の秘訣です。
今回紹介した事例の表面的な部分ではなく、成功の裏側にある共通点を理解し、DX推進計画に組み込みましょう。
自社だけでDXを進めるのは不安があるという方は、富士フイルムビジネスイノベーションまでお気軽にご相談ください。