2025.12.22
DX推進における課題とは?解決策や導入手順7ステップも解説
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がAIやIoTなどのデジタル技術を活用して、事業の効率化や新しい価値創造、働き方の改善などを実現する取り組みのことです。近年、多くの企業でDX化が推進されており、クラウドやデータ活用に着手する動きが広がっています。
一方で、導入しただけでは期待した効果が出ないケースも多く、計画が途中で止まる企業も珍しくありません。
本記事では、DXが進まない理由・課題を整理し、今日から取り組める解決策とDX化の手順についてわかりやすく解説します。
DX推進における課題
DX化を進めるうえで、以下のような課題が存在します。
- DX化を担う人材が不足している
- 事業戦略が不明確で方向性が定まらない
- レガシーシステムの刷新が進まない
- 全社的にDX化の重要性が共有されていない
- IT投資への積極性が欠けている
DX化を担う人材が不足している
DX化を推進するには、データ分析・システム設計・セキュリティー対策など複数分野の専門知識を組み合わせて考えられる人材が必要です。しかし、このような人材は市場で争奪戦となっており、十分な人数を確保することは容易ではありません。
社内でも既存社員は日々の業務で手がいっぱいになりやすく、新しいスキルを学ぶ時間を取りにくい状況です。とくに中小企業では採用予算や研修体制が限られており、外部ベンダーに依存せざるを得ないケースも少なくありません。
事業戦略が不明確で方向性が定まらない
「とりあえずDX化を始めよう」という経営層の呼びかけだけでは、現場は具体的に何をどう変えるべきかが判断できません。
具体的なビジョンやゴールが共有されていないと、導入するシステムの選定や予算配分が曖昧になり、本質的な業務改革につながらない恐れがあります。
たとえば、売上拡大やコスト削減、顧客体験の向上などどの目標を狙うのかによって取るべき施策は異なります。方向性が曖昧なままプロジェクトを進めると、部門間で優先順位が食い違い、投資対効果の比較も難しくなるのが現実です。
結果として予算だけが消費され、社内のDXへの信頼が低下する可能性もあります。
レガシーシステムの刷新が進まない
長年使い続けてきた基幹システムは、業務フローと密接に結びついているため、全面的な入れ替えはリスクとコストがともないます。そのため、問題があるとわかっていても、なかなか手を付けられないと悩む企業は少なくありません。
このようなレガシーシステムは、保守費用の増大や新機能追加の困難さを招きます。一度に全システムを更改しようとすると、業務停止や移行トラブルのリスクも高まります。
結果として、現状のシステムを維持するためのIT投資に多くのリソースを割くことになり、DX推進が後回しになる企業が多いのも事実です。
全社的にDX化の重要性が共有されていない
経営層がDXの必要性を理解していても、その意識が現場社員や中間管理職まで浸透していなければ推進は進みません。
現場では「今のままで十分」「新しいシステムは扱いにくい」といった懸念が生まれやすく、変化に対する抵抗感が強くなるためです。
こうした温度差が社内にあると、DX化に必要な協力体制が築けず、取り組みが停滞してしまいます。
IT投資への積極性が欠けている
IT投資への積極性が欠けていることも、DX推進における課題です。多くの企業ではIT予算の大半が既存システムの維持管理に使われており、新規のシステム導入や業務改革に回す余力がありません。
その結果、必要性を感じていても新しい仕組みへの投資判断が遅れ、現状維持が続いてしまいます。
こうした状況ではDX化に必要な変革が進まず、競争力強化の機会を逃してしまうリスクも高まります。
DX化の課題への解決策
DX推進における課題に対しては、それぞれ実践的な解決策が存在します。以下で具体的なアプローチを示します。
- DX人材の確保・育成を行う
- DX化で実現するビジョンを明確に描く
- 既存システムを段階的に刷新する
- 全社的なDX化の推進体制を築く
- 補助金・助成金を活用して費用負担を軽減する
DX人材の確保・育成を行う
DX化を推進するためには、人材確保と人材育成が必要です。
たとえば、ビジネス全体を設計する人やデータを扱う人・システムを作る人などを区分し、それぞれに必要なスキルを可視化します。
そして既存社員には、オンライン研修やOJTを通じてスキルアップの機会を提供し、外部専門家やベンダーとの協働によって実践的なノウハウを習得する方法が有効です。
評価指標を設定し、成長の度合いを見える化することで、本人のモチベーション維持にもつながります。
採用と育成を組み合わせて進めることで、自社内にDXを継続的に進められる体制を整えやすくなります。
DX化で実現するビジョンを明確に描く
方向性の曖昧さを解消するには、経営層が「DX化によって何を実現したいのか」を具体的に言語化し、全社へ発信することが重要です。
「顧客対応のリードタイムを50%短縮する」「データ活用で新規事業の立ち上げ期間を半減させる」といった定量目標を掲げると、現場も取るべきアクションが見えてきます。
ビジョン策定時には経済産業省の「DX推進指標」を活用して自社の成熟度を診断し、同業他社とのベンチマーク比較を行うと、強みと弱みが明確になります。
こうした現状把握をもとに優先順位を付けると、限られたリソースを重点分野に集中させることが可能です。
既存システムを段階的に刷新する
レガシーシステムの刷新には、一度にすべてを入れ替えるのではなく「ストラングラーフィグパターン」と呼ばれる段階的移行手法が有効です。この手法では、既存システムを稼働させたまま新システムへ機能を少しずつ移していきます。
段階的に移行することで、業務への影響を抑えながら刷新を進められます。問題が発生した場合も影響範囲を限定しやすく、リスク分散の観点からも有利です。
社内説得には「業務を止めずに移行できること」「投資を段階的に分けられること」といった利点を説明すると、理解を得やすくなります。
全社的なDX化の推進体制を築く
DX化を全社に浸透させるには、経営層・推進チーム・現場の三層で役割を明確にした体制づくりが必要です。経営層はビジョンと予算を示し、推進チームは具体的な計画立案と進捗管理を担います。そのうえで、現場は業務改善の実行や新ツールの活用に取り組みます。
推進チームには部門横断メンバーを集め、各部署の事情を理解しながら調整を進めることが重要です。加えて、全社説明会や部門別ワークショップなど、情報共有の場を定期的に設けることで、現場の疑問や不安を解消しやすくなります。
「DXで業務が楽になった」と感じられる成功事例を積極的に社内で共有すると、協力の輪が広がり、変革が進みやすくなります。
補助金・助成金を活用して費用負担を軽減する
IT投資のハードルを下げるには、国や自治体が提供する補助金・助成金の活用が有効です。
たとえば「IT導入補助金」は、中小企業・小規模事業者が業務効率化やDXに向けたITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)を導入する際の費用を支援します。
申請には事業計画書の提出や要件確認が必要ですが、採択されれば数十万〜数百万円規模の支援を受けられるケースもあります。
補助金に関する情報は、各地域の商工会議所や中小企業支援機関の公式サイトで確認でき、申請書類の作成支援を受けることも可能です。このような制度を上手に活用することで、企業の負担を抑えつつDX化を前に進められます。
DX化を推進する手順7ステップ
DX化を成功させるには、計画から実行・評価・改善までを一連の流れとして進めることが重要です。ここでは、取り組みを整理しやすい7つのステップを紹介します。
- DX化の目的と理想像を明確にする
- 取り組み状況を把握して課題を抽出する
- 推進チームを組成してロードマップを策定する
- 予算確保とITシステム・ベンダーの選定を行う
- DX施策を実行する
- 結果の分析・評価を行う
- PDCAサイクルを回して改善する
DX化の目的と理想像を明確にする
まずは、経営層が「DX化で何を実現したいのか」を言語化し、全社へ共有することが重要です。目標が曖昧だと現場は何をすべきかわからず、投資対効果も測れません。
理想像を描く際は、顧客体験の向上・業務効率化・新規事業創出など複数の視点から検討し、自社にとって優先度の高いテーマを選びます。
この議論には経営層だけでなく、各部門の責任者にも参加してもらうと、現場の実情を踏まえた現実的な目標設定につながります。
取り組み状況を把握して課題を抽出する
次に自社のDX成熟度を客観的に診断し、強みと弱みを整理します。そのうえで、現状抱えている課題はもちろん、どのような変革を進めていくべきかを検討します。さらに、同業他社と比較することで自社の位置づけの把握が可能です。
この段階で現場へのヒアリングも実施し、業務上の困りごとや改善要望を集めると、実態に即した課題抽出が可能になります。調査結果を一覧化し、解決の難易度や影響度を軸に優先順位を付けると、次のステップが進めやすくなります。
推進チームを組成してロードマップを策定する
課題が明確になったら、DX化を推進する専任チームを立ち上げます。チームには経営企画・IT部門・事業部門から横断的にメンバーを集め、組織横断で取り組める体制を整えることが重要です。
推進チームは、抽出された課題をもとに「いつ・誰が・何を行うのか」を示したロードマップを作成します。
ロードマップでは、短期(3〜6か月)・中期(1年)・長期(3年)の時間軸で施策を整理し、各フェーズで達成すべき成果指標を設定すると、全体像が共有しやすくなります。
予算確保とITシステム・ベンダーの選定を行う
ロードマップに沿って必要な予算を算出し、経営層の承認を得ます。予算説明では単なるコスト提示ではなく、投資によって得られる効果(売上増加・コスト削減・リスク軽減)を定量的に示す必要があります。
並行して、ITシステムやベンダーの選定も進めてください。選定時は機能や価格だけでなく、導入実績・サポート体制・将来的な拡張性も評価基準に含めたうえで、複数の候補を比較検討し、自社の課題解決に適したパートナーを選んでください。
DX施策を実行する
計画に沿ってDX施策を実行に移します。最初から大規模な変更を行うのではなく、小さな範囲で試す「スモールスタート」が有効です。
たとえば、一部門でクラウドツールを試験導入し、使い勝手や業務への影響を検証してから全社展開するといった方法があります。
実行フェーズでは推進チームが進捗を管理し、現場からの質問やトラブルに迅速に対応します。また、新システムの操作研修や業務フローの見直しも並行して行い、現場がスムースに移行できる支援も必要です。
結果の分析・評価を行う
施策実行後は、設定したKPIに沿って結果の分析が必要です。「受注率は何%向上したか」「業務時間はどれだけ削減されたか」「顧客満足度は改善したか」といった定量データを収集して目標達成度を評価します。
同時に、現場社員へのアンケートやヒアリングを行い、使い勝手や運用上の課題といった定性的な情報も集めておくと、次の改善に役立ちます。
評価結果は経営層や全社員と共有し、成功点と改善点を明確にすることが重要です。期待した効果が得られなかった場合は、原因を分析して次のアクションを検討します。
PDCAサイクルを回して改善する
DX化は一度実施して終わりではなく、継続的な改善が必要です。評価結果をもとに「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」のサイクルを回し、施策をブラッシュアップしていきます。
導入したシステムの利用率が低い場合は、操作性の改善や追加研修を実施し、想定以上の効果が出た施策は他部門への横展開を進めると効果を広げやすくなります。
また、市場環境や技術トレンドの変化に応じて、ロードマップ自体の見直しも必要です。定期的に推進チームで振り返りの場を設け、改善アクションを決定・実行するサイクルを定着させることが有効です。
まとめ
DX化を進める際には、自社のDX推進の目的を明確にし、現状を客観的に把握することで、優先的に取り組むべき領域が明らかになります。
さらに、推進体制の整備や段階的なシステム刷新、補助金の活用を組み合わせることで、無理なくDX化を推し進められます。
DX化は短期間で完結するものではなく、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していく取り組みです。小さな成功体験を積み重ね、全社的な理解と協力を広げていくことで、着実に成果を生み出せます。
社内のDX化に関してお困りごとがあれば、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンがサポートいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。