EDRとは?EPPとの違いや導入メリットについて解説

2025.09.08

EDRとEPP/XDRの違いを徹底比較!導入するメリットも解説

EDRとは?EPPとの違いや導入メリットについて解説

EDR(Endpoint Detection and Response)とは、従来のウイルス対策では検知困難な未知の脅威やランサムウェアに対するセキュリティ技術のことです。

エンドポイント(パソコンやサーバー)での異常な挙動を監視・分析しつつ、リアルタイムで検知し、迅速な隔離・対応を実現できます。

この記事では、EDRの基本概念からEPP(Endpoint Protection Platform)やNGAV(Next Generation Anti-Virus)・XDR(Extended Detection and Response)との違いなどを解説します。ほかにもEDRの主な機能や導入するメリット・運用の課題などをまとめました。

EDRの知識を身につけることで、企業のセキュリティを高められるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。

EDRとは?

EDR(Endpoint Detection and Response)とは、PCやスマートフォン、サーバーなどのエンドポイントを監視し、不審な挙動がないかどうかを検知できるソリューションのことです。攻撃者からの不審なプログラムを見つけ出し、初期段階で対策につなげられます。

さらに、EDRと他のセキュリティソリューションとの違いについても紹介します。EDRに加え、下記との違いをまとめました。

 

  • EPP
  • NGAV
  • MDR
  • XDR

 

それぞれの特徴について、詳しく見ていきましょう。

EPP(Endpoint Protection Platform)とは、エンドポイントをマルウェア(悪意のあるソフトウェア)感染から防ぐためのものです。EPPが「侵入防止」に特化するのに対し、EDRは「侵入後の検知・対応」に焦点を当てている点が異なります。

EPPは、既知のマルウェアや脅威パターンを事前にブロックする役割です。一方、EDRは「侵害を前提とする」考え方にもとづき、端末上での不審な挙動を24時間365日監視し続けます。

たとえば、システムをコマンドで操作できるPowerShellが異常な外部通信をした場合や、システムファイルが暗号化される動作を即座に検知してアラートを発するのがEDRです。

NGAV(Next-Generation Antivirus)とは、コンピューターウイルスを検出および除去するための、ウイルス対策ソフトのことで、EPPの一種に含まれます。

従来のウイルス対策ソフトとは違い、機械学習や振る舞い検知により、未知の脅威にも対応できるようになりました。そのため、次世代ウイルス対策とも呼ばれています。

NGAVが高い精度で新種のマルウェアを検知できても、マルウェアの感染を100%防ぐことは困難なため、EDRによる事後対応機能が重要な役割を果たします。

MDR(Managed Detection and Response)とは、セキュリティ対策ツールおよびその運用支援を実施するサービスのことです。

一方、EDRは高度な検知・対応機能をもつセキュリティツールそのものを指します。

MDRサービスでは、経験豊富なセキュリティアナリストによるEDRの監視が可能です。脅威を特定して顧客に通知するとともに、インシデント発生時の初動対応や復旧支援も提供します。

XDRは、EDRの概念をさらに拡張したものです。XDRは、EDRを進化させたセキュリティソリューションです。EDRが「エンドポイント特化」の検知・対応ツールであるのに対し、XDRは「複数セキュリティ領域統合」の包括的プラットフォームです。

現代のサイバー攻撃は、エンドポイントやネットワーク、クラウド、メールなど複数の領域を横断して実行されます。そのため、EDR単体では攻撃の全体像を把握することが困難な場合があるでしょう。
XDRは、EDRやクラウドセキュリティなどのデータを統合し、攻撃活動を単一の管理画面で追跡・分析できます。

EDRが注目される背景

現代のサイバー攻撃は、従来のウイルス対策ソフトでは対応できないほど高度化・巧妙化しています。

近年はテレワークの増加により、社外から業務システムへアクセスする機会が増え、攻撃の対象や手口が多様化しています。

また、企業に求められる対策は「侵入を100%防ぐ」ことではなく、「侵入後の被害を最小限に抑える」ことへ変化している点もEDRが注目されている背景のひとつです。

EDRは現代のセキュリティ対策において欠かせない存在となり、多くの企業で導入が進められています。

EDRの主な機能と効果

EDRの主な機能は、下記のとおりです。

 

  • ログの監視・分析
  • マルウェアの検知
  • インシデント対応
  • フォレンジック調査

 

それぞれの特徴を見ていきましょう。

EDRの機能のひとつに、ログの監視・分析があります。

従来のウイルス対策では、既知の脅威パターンのみを検知していました。一方、EDRはプロセス実行やファイル操作など、ネットワークに接続された端末で発生するすべての活動を詳細に記録できます。

ログデータを相関分析することで、単体では無害に見える活動でも、組み合わせると攻撃の兆候となるパターンを見つけることが可能です。また、一般的なEDRでは、180日〜365日分のログを保持し、過去の攻撃パターンとの比較分析も可能です。

EDRはインシデント対応も可能です。脅威の検知から隔離、根本原因分析、復旧まで、インシデント対応のライフサイクル全体を支援する包括的な機能を備えています。

サイバー攻撃による被害額は、攻撃者の滞留時間に比例して増えるため、初動対応が極めて重要です。EDRは自動化された隔離機能により、感染端末のネットワーク隔離や悪意のあるプロセス停止を瞬時に実行できます。

また攻撃の全体像を可視化するプロセスツリーやタイムライン機能により、攻撃がいつ、どこから開始され、どれくらいの範囲まで影響が及んでいるかを迅速に把握できます。

標的型攻撃を受けた場合、手動では数日要する復旧プロセスを数時間で実施可能です。

EDRは、端末上での不審な挙動を検知・記録し、フォレンジック調査に必要となる詳細なログデータを取得可能です。

プロセスの実行履歴や通信の痕跡、ファイル操作など多角的な情報を収集できるため、インシデント発生時に原因追跡や影響範囲の特定を迅速に行えます。

これにより、ログの保全と効果的な調査対応が実現します。

EDRを導入するメリット3選

EDRを導入するメリットを3つ紹介します。

 

  • 影響範囲を特定しやすい
  • 被害の拡大防止と早期対応につなげやすい
  • コンプライアンス要件への対応がしやすい

 

それぞれ詳しく解説していきます。

EDRは攻撃チェーンの可視化とプロセスツリー分析により、サイバー攻撃の影響範囲を迅速かつ正確に特定できます。

従来のセキュリティツールでは個別のアラートしか確認できず、攻撃の全体像や影響範囲の把握に多大な時間を要していました。しかし、EDRはエンドポイント上のすべての活動を時系列で記録し、攻撃者の行動をプロセスツリーやタイムライン形式で可視化することが可能です。

たとえば、標的型攻撃では攻撃者がフィッシングメールから侵入し、複数の端末を経由して重要なサーバーにアクセスします。EDRは一連の攻撃フローを統合的に表示することが可能です。

サイバー攻撃は早期発見と、迅速な隔離が被害最小化の鍵となります。

EDRであれば、脅威を検知した瞬間に感染端末をネットワークから自動隔離します。悪意のあるプロセスを強制停止する機能により、被害を最小限に抑えられるでしょう。

また、攻撃者が使用するC2サーバーとの通信を自動的にブロックし、追加のマルウェアダウンロードや情報窃取を阻止が可能です。類似の攻撃パターンを他の端末で検索し、潜在的な感染端末を予防的に特定・隔離することで、横展開を効果的に防げます。

EDRの包括的な証跡保全機能により、コンプライアンス要件への対応がしやすいのもメリットです。

改正個人情報保護法により、個人データの漏えいなどが発生した場合、個人情報保護委員会への速報を3〜5日以内、確報を30日以内に実施する義務があります。

EDRはインシデント発生時から証跡を自動的に記録し、法的証拠能力を担保するハッシュ値による完全性検証が可能です。

GDPR第33条の「72時間以内の監督当局への通知」についても、EDRの詳細なログ分析により迅速に対処できます。

EDR製品の選び方と導入ポイント

EDR製品の選び方と導入ポイントについて紹介します。EDR製品の選び方のポイントは、下記のとおりです。

 

  • 検知精度と誤検知の少なさ
  • 導入・運用コストを考慮する
  • 既存システムとの連携がしやすいかどうか
  • サポート体制と導入支援の充実度

 

判断基準のひとつとして、ぜひ参考にしてください。

EDR製品選定においてもっとも重要なのは、高い検知精度と低い誤検知率の両立です。

EDRは24時間365日稼働してエンドポイントの活動を監視するため、検知精度が低いと重要な脅威を見逃すリスクがあります。一方で誤検知率が高いと、セキュリティチームが大量の無意味なアラートに埋もれてしまい、脅威を見逃すリスクもあるでしょう。

優れたEDR製品は機械学習と振る舞い分析を組み合わせることで、未知の脅威も高精度で検知できます。同時に、正常な業務活動を誤って脅威と判定することを最小限に抑えます。

EDR製品を選ぶ際には、初期導入費用を含めたライセンス費用、人件費、サービスの利用料などを考慮することが大切です。

EDRは高度なセキュリティツールであるため、運用には専門知識をもつセキュリティアナリストが必要です。24時間365日の監視体制を自社で構築する場合、年間数千万円の人件費が発生します。
 

自社のセキュリティ人材の有無や体制に合わせて選びましょう。

企業ではファイアウォールやメールセキュリティ、ID管理システムなど複数のセキュリティツールがすでに導入されているケースもあるでしょう。EDRを単独で運用するのではなく、既存のシステムと連携させることで、網羅性が高まります。

とくにSIEMと連携すれば、EDRのアラートをほかのセキュリティデータと相関分析し、攻撃の全体像を把握することが可能です。

たとえば、EDRが内部端末での不審なプロセス実行を検知した際、SIEMが同時刻のファイアウォールログを確認し、攻撃の侵入経路を迅速に特定します。

EDR製品の選定では、技術仕様と同等に重要なのがサポート体制と導入支援の充実度です。24時間365日の技術サポート、日本語対応、豊富な導入実績などをもつベンダーを選択することが鍵となります。

サイバー攻撃は、24時間いつでも発生する可能性があります。とくに夜間や休日に発生した緊急インシデントに対して、迅速なサポートを受けられるかどうかが、被害の拡大を防ぐうえで大切です。

EDR運用の課題と解決策

ここからはEDRを運用する際の課題、解決策について紹介します。主な課題は下記のとおりです。

 

  • 過剰なアラートによる管理負担の増加
  • インシデント対応の手順の見直し
  • 専門知識のある人材を確保する必要がある

 

なかでも、管理負担の増加はかえって業務効率が低下するおそれがあるため、慎重に扱いましょう。

EDR運用における最大の課題は、大量のアラートによる「アラート疲労」です。EDRは24時間365日でエンドポイントの全活動を監視するため、一日に数百から数千のアラートが発生する可能性があります。なかには、誤検知の場合もあるでしょう。

とくに中小企業では専任のセキュリティアナリストが限られているため、大量のアラート処理により通常業務に支障をきたすケースが多発しています。

対処法として、通知条件の調整や対応手順の自動化、SOARと呼ばれる自動対応ツールと連携させる方法が効果的です。

EDRを導入する際には、既存のインシデント対応手順を見直し、体系的な対応プロセスの確立が欠かせません。

従来のウイルス対策中心のセキュリティ環境では、マルウェア検知時の対応は「駆除→報告」という単純なプロセスでした。しかし、EDRは高度な攻撃の詳細な分析情報を提供するため、適切なインシデント対応手順がなければ、情報を活用できません。

とくに、EDRが検知する標的型攻撃やランサムウェアでは、影響範囲の特定や証跡保全など、従来よりもはるかに複雑で専門的な対応が必要となります。

EDRの効果的な運用には、高度な専門知識をもつセキュリティ人材が必要です。しかし、人材不足が深刻な現状では、現実的な解決策の組み合わせが重要になります。

たとえば、EDRのアラートの真偽判定や攻撃手法の分析、インシデント対応の判断には、MITRE ATT&CKフレームワークの理解やフォレンジック技術などの専門知識が必要です。

多くの企業が採用している現実的なアプローチは、MDRサービスとの組み合わせです。初期段階ではフルマネージドMDRサービスを利用し、外部の専門家チームにEDRの監視・分析を完全委託します。

その後、社内スタッフが徐々に専門知識を習得して段階的に内製化を進めるアプローチが効果的です。

まとめ

EDRは従来のウイルス対策ソフトでは、防げない高度な脅威に対抗する重要なセキュリティ対策です。EPPが侵入防止に特化するのに対し、EDRは侵入後の早期発見と隔離を担います。

専門知識が不足する企業は、MDRサービスとの併用も効果的です。アラート対応の体制整備と適切な運用手順の確立により、ランサムウェアや標的型攻撃から企業を守れます。EDRは、企業にとって必須のセキュリティ投資といえます。

セキュリティ対策やDX推進に関するお困りごとがある方は、下記より富士フイルムビジネスイノベーションへ、お気軽にお問い合わせください。