2025.12.17
メールからの情報漏えいリスクを解説
メールは業務の中心的なコミュニケーションツールですが、一度の操作ミスで重要な情報が外部に漏れるリスクがあります。
一度情報が漏れると、顧客や取引先からの信頼を失うだけでなく、失った信用や売上を取り戻すには何年もの時間が必要です。
本記事では、メールによる情報漏えいが起こる主な原因や情報漏えいがもたらす深刻なリスク、対策までわかりやすく解説します。
メールによる情報漏えいが起こる原因
メールから情報が流出する原因には、以下の4つが挙げられます。
- 宛先の間違い
- BccやCcの誤用
- 添付ファイルの指定ミス
- マルウェア感染によるメールアカウントの乗っ取り
宛先の間違い
メールからの情報漏えいの代表的な原因に、オートコンプリート機能(メールソフトの宛先入力時に表示される候補リスト)により意図しない相手にメールを送ってしまうケースが挙げられます。
たとえば「佐藤」という名前の顧客にメールを送ろうとした際、候補リストの中から誤って別の「佐藤」を選択してしまうミスです。似た名前が複数登録されている場合や、急いで送信する際に発生しやすくなります。
オートコンプリート機能は、メールソフトが過去の送信履歴から自動的に候補を表示する便利な機能ですが、送信の際に確認が不十分だと漏えい事故につながりかねません。
基本的には一度送信してしまうと取り消せないため、誤送信に気づいたときには手遅れになってしまいます。
BccやCcの誤用
複数の顧客に一斉送信する際、Bcc欄に入れるべきアドレスを誤ってCc欄に入力してしまうミスも、メールによる情報漏えいの原因になります。
誤ってCc欄に入力すると、受信者全員に他の顧客のメールアドレスが見える状態となり、個人情報の流出事故につながります。
メールソフトの画面ではTo・Cc・Bccの欄が縦に並んでおり、操作を誤りやすい設計になっているのがミスを引き起こしやすい要因です。
メールマガジンやキャンペーン案内など、大量の顧客に送信する場面で発生すると、数百から数千のアドレスが一度に漏れる大規模漏えいに発展してしまいます。
添付ファイルの指定ミス
複数のファイルを扱う業務では、送信してはいけないファイルを誤って添付してしまう可能性があります。
たとえば、A社向けに提案書を送るつもりで、誤ってB社の機密情報を含むファイルを添付するケースが挙げられます。ファイル名が似ている場合や、デスクトップ上で複数のファイルを同時に開いている状況で発生しやすくなるため注意が必要です。
また、過去の送信履歴から自動的に添付候補が表示される機能も便利な一方で、誤選択のリスクを高めてしまいます。
マルウェア感染によるメールアカウントの乗っ取り
フィッシングメールや不正なWebサイトを経由してマルウェアに感染すると、メールアカウントの認証情報が盗まれるリスクがあります。
攻撃者は盗んだ情報を使って、アカウントに不正ログインします。その後、過去の送受信メールを閲覧したり、取引先になりすまして添付ファイルを開かせる偽メールを送信し、さらに被害を拡大させたりするため注意が必要です。
メールの情報漏えいによるリスク
メールからの情報流出は、単なるミスでは済まされない深刻な事態を引き起こす可能性があります。主に、以下のようなリスクがあります。
- 個人情報・顧客データの流出による信用失墜
- 金銭的損失
個人情報・顧客データの流出による信用失墜
顧客の氏名や住所、メールアドレスなどの個人情報が外部に漏れた時点で、企業の管理体制に対する疑念が一気に広がります。
とくに上場企業の場合、公表されれば報道やSNSによる社会的な批判にさらされる可能性があります。数百件規模の顧客情報流出が発覚した企業が、既存顧客との取引停止や、新規顧客の獲得も困難になるというケースも珍しくありません。
金銭的損失
情報漏えいが発生すると、被害者への損害賠償や個人情報保護委員会への報告対応、再発防止策の構築など多方面で金銭的な負担が生じます。
また、事故対応のための特設窓口の設置や外部専門家への調査依頼、全社員へのセキュリティー研修の実施など、時間的・人的コストの発生も無視できません。そのうえ、顧客離れによる売上減少も長期的な損失として企業経営を圧迫します。
万が一、個人情報保護法に違反した場合には、企業に対して1億円以下の罰金が科される可能性もあります。
出典:個人情報保護委員会ウェブサイト(https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q11-1/)
メールによる情報漏えいの事例
実際に発生した情報漏えい事故の事例を知ることで、自社で起こりうるリスクを具体的にイメージできます。
代表的な事例として、以下の3つを紹介します。
- 添付ファイルの誤りによる情報流出
- 宛先の指定ミスによる個人情報流出
- Ccの誤用による個人情報流出
添付ファイルの誤りによる情報流出
ある企業では、取引先A社に送るべき契約書ファイルを、誤って別の取引先B社の機密情報を含むファイルに差し替えて送信してしまう事故が発生しました。
担当者が、本来送信すべき添付ファイルと誤送信したファイルを同じフォルダーで保存・管理しており、似た名前である誤送信ファイルを選択ミスしたことが原因です。
後日、メールを受信したA社を訪問した際に指摘されたことで初めて誤送信に気づきました。この時点でB社の機密情報がA社に渡っており、両社への謝罪と経緯説明を行う必要に迫られました。
幸い第三者への情報流出には至りませんでしたが、B社からの信頼は大きく損なわれ、その後の取引条件の見直しを余儀なくされています。
宛先の指定ミスによる個人情報流出
ある組織では、職員が自身の緊急連絡先として私用メールアドレスを登録する際、入力ミスにより無関係な第三者のアドレスを登録してしまう事故が発生しました。
その後、休日や夜間に業務上必要なメールを関係者に一斉送信した際、誤って登録されたアドレス宛にもメールが送られ続けていたことが後日判明します。
誤登録後、本人は会社のメールだけを確認していたため、私用メールアドレスの受信をチェックすることがなく、長期間ミスに気づきませんでした。
送信されたメールには、社員の業務用メールアドレスや取引先の電話番号など、大量の個人情報が含まれていました。
Ccの誤用による個人情報流出
ある業界団体の事務局では、会員企業向けにメールマガジンを配信する際、本来Bcc欄に入れるべきメールアドレスを、誤ってCc欄に入力して送信する事故が発生しました。
なかには個人名が特定できるメールアドレスもあり、受信した会員企業全員が他の会員のアドレスを閲覧できる状態になってしまいます。
事務局業務を委託されていた会社の担当者が、送信ボタンを押した直後に誤送信に気づき、すぐに謝罪メールを送信しました。さらに、全会員企業に電話をかけて個別に謝罪し、誤送信されたメールの削除を依頼しました。
原因は、送信時の宛先確認が不十分だったことにあります。この事故を受けて、同社では送信前に作成者が下書き保存し、上司が内容を確認してから送信する二段階チェック体制を導入しました。
また、定期的な情報セキュリティー研修と実践的な訓練を実施することで、再発防止に取り組んでいます。
メールによる情報漏えいを防ぐための対策
情報漏えいを防ぐには、複数の対策を組み合わせることが効果的です。基本的な対策として、以下の5つを紹介します。
- メール運用ルールの策定
- 誤送信防止機能の使用
- クラウドを介したファイル共有
- セキュリティー製品の導入
- 定期的なセキュリティー研修
メール運用ルールの策定
明文化されたルールがなければ、担当者ごとに判断基準がバラバラになり、事故のリスクが高まります。
まずは「個人情報を含むメールは送信前に上長の承認を得る」「複数の顧客への一斉送信は必ずBccを使用する」といった具体的な行動基準の文書化が必須です。さらに、機密度に応じたファイルの命名規則を定めることで、誤添付のリスクを下げられます。
たとえば、【社外秘】【重要】などのプレフィックスをつけるルールを設ければ、視覚的に判別しやすくなります。
ルールを策定したら、全社員がいつでも参照できる場所に掲示し、社員研修でも必ず説明する体制を整えることが重要です。ルールの形骸化を防ぐため、定期的に見直しと更新を行うことも忘れてはなりません。
誤送信防止機能の使用
多くのメールソフトやメールサービスには、誤送信を防ぐための機能が標準装備されています。
代表的なものが「送信保留機能」で、送信ボタンを押してから実際に送信されるまでに数分の猶予時間を設けられます。猶予時間で宛先や添付ファイルを再確認し、誤りに気づいた場合は送信のキャンセルが可能です。
また、宛先確認ダイアログを設定すれば、送信前に宛先を一覧表示して最終確認を促せます。
これらの機能は設定画面から簡単に有効化できるケースもあるため、自社で使用しているメールソフトを確認することですぐに取り入れられます。
ただし、機能に頼りすぎて人的な確認を怠るのではなく、あくまで補助的な位置づけとして活用してください。
クラウドを介したファイル共有
メールを通じてファイルを送付する方法として、従来はパスワード付きZIPファイルを送るPPAP方式が主流でしたが、セキュリティー上の脆弱性が指摘され、現在は代替手段への移行が推奨されています。
有力な選択肢としては、クラウドストレージにファイルをアップロードし、閲覧用のリンクのみをメールで送るリンク共有方式があります。この方法なら、誤送信に気づいた時点でリンクを無効化すれば、相手はファイルにアクセスできません。
導入時には取引先への事前説明と協力依頼も必要になりますが、自社の業務フローに合わせて最適な暗号化方式を選定することで適切に情報漏えいを防げます。
セキュリティー製品の導入
専用のセキュリティー製品を導入することで、人的ミスの防止につながります。誤送信防止ツールは、送信前に宛先や件名・本文、添付ファイルを自動的にチェックし、リスクが検出されれば送信をブロックまたは警告を表示します。
たとえば、社外ドメインへの送信時に【社外秘】タグのついたファイルが添付されていれば自動で検知が可能です。また、送信元を偽装した標的型攻撃メール対策としてはとしては、SPF・DKIM・DMARCといった送信ドメイン認証技術の導入も効果的です。
導入には専門知識が必要であり、初期投資も発生しますが、事故発生時の損失と比較すれば十分に回収可能なコストといえます。
定期的なセキュリティー研修
どれほど優れたツールやルールを導入しても、最終的に操作するのは人間です。全社員がセキュリティーリスクを正しく理解して日常業務で対策できる状態を維持するには、定期的な研修を行うことで社員のセキュリティー意識を向上させる必要があります。
研修では実際の事故事例を取り上げ、「なぜ起こったのか」「どうすれば防げたのか」を具体的に解説することで、自分事として捉えやすくなります。
座学だけでなく、模擬訓練も効果的です。たとえば、わざと誤送信しそうな状況を設定し、正しい確認手順を踏めるかテストする実践形式なら、記憶に残りやすくなります。
新入社員だけでなく、ベテラン社員も含めて年に数回程度の研修を実施することで、最新の脅威や手口について情報を更新・共有する仕組みの構築につながります。
まとめ
メールによる情報漏えいは、宛先ミスや添付ファイルの誤り、Bcc/Ccの誤用などのヒューマンエラーが主な原因で発生しています。一度事故が起こると、信用失墜と金銭的損失という深刻なリスクに直面することになります。
これらを防ぐためには、運用ルールの策定やメール環境のセキュリティー強化、そして定期的な従業員研修が不可欠です。これらを多角的に整えることで、情報漏えいのリスクを低減できます。
メールによる情報漏えい対策に関してお困りごとがあれば、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンがサポートいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。