コラム

通販におけるアップセルとは?
実施メリットと成功のポイント

通販におけるアップセルとは、顧客単価を向上させるためのマーケティング手法です。

言葉は聞いたことはあるものの、具体的にどのようなものかわからないという人もいるのではないでしょうか。

本記事ではアップセルとはどのようなものか、アップセルのメリットと成功させるポイント、注意点を紹介します。

アップセルとは?

アップセルとは、顧客が購入した、または購入を検討している商品・サービスよりも上位のものを提案することです。顧客一人あたりの単価を向上させることを目的としています。

アップセルの具体例

●カメラの購入を検討している顧客にワンランク上のカメラを提案する

●クラウドサービスの通常プランを契約しているユーザーにプレミアムプランを提案する

対面で顧客に直接提案する以外にも、通販の場合は同梱チラシやメルマガなどで提案する方法があります。インターネットで買い物をする人はますます増えており、通信販売業界においても、売上を向上させる方法としてアップセルは非常に重要な施策です。

また、アップセルとは逆にダウンセルという方法もあります。ダウンセルは、顧客が商品の価格に対して抵抗を示した場合に値下げをしたり、下位の商品・サービスを提案したりすることです。売上がゼロになるのを回避したり、顧客をつなぎとめたりする目的で行なわれます。

◇アップセルのアプローチ方法

アップセルを成功させるためには、顧客に「上位のものを選んだほうが良さそう」「値段は高くなるけれど、結果的にお得だ」と感じてもらうことが重要です。

アプローチの仕方はさまざまありますが、 代表的な方法を挙げてみます。

●キャンペーンを実施する(特典をつける)

●無料トライアル期間を設ける

●良い口コミやレビューを紹介する

◇アップセルとクロスセルの違い

クロスセルは、顧客が購入しようとする商品・サービスに関連するものを表示してセット購入を促すことです。

例えば、ECサイトで商品Aを購入しようとしている人がいるとします。その人に検討している商品Aの上位商品、もしくはより単価の高い商品を提案するのがアップセル、商品Aに関連のある商品Bを追加で購入するよう提案するのがクロスセルです。

アップセルとクロスセルは、アプローチは異なりますが、どちらも顧客単価を向上させるために重要な施策です。

またアップセルとクロスセルの組み合わせも有効です。より売上を伸ばせるだけでなく、顧客にとって最適な提案をすることで、顧客満足度の向上にもつながります。

アップセルを行なう3つのメリット

次に、アップセルを行なうことで期待できるメリット(効果)を解説します。

◇顧客単価が上がる

アップセルにより、顧客がもともと購入を検討していた商品・サービスより上位のもの(高額なもの)を購入してくれれば、顧客単価が上がります。

売上額は、「顧客数×顧客単価」で決まります。アップセルが成功すれば、顧客数は変わらなくても効率的に売上額を向上させることができるでしょう。

◇顧客満足度や顧客ロイヤリティが向上する

顧客のニーズに沿ったより良い商品・サービスを提案することで、商品・サービスに対する顧客の満足度を高められるでしょう。さらに、満足度が高まると、顧客ロイヤリティ(企業に対する信頼・愛着)も高まることが期待できます。

顧客ロイヤリティは、企業の持続的な成長のためにも重要な要素です。これが高まれば、顧客が長期間にわたって自社と取引をしてくれるようになり、安定した収益基盤の構築につながるでしょう。

◇LTV(顧客生涯価値)が向上する

LTV(顧客生涯価値)とは、顧客と取引を始めてから終わるまでの間にもたらされた利益の総額を表すものです。

LTVは、取引期間が長くなるほど大きくなります。また、前項でお伝えしたとおり、顧客ロイヤリティが高まると、顧客は自社と長く取引をしてくれるようになります。つまりアップセルにより顧客ロイヤリティが向上すれば、LTVの向上も期待できるのです。

企業が成長していくためには、新規顧客の獲得は欠かせません。しかし、新規顧客に対する販売コストは既存顧客にかかるコストの5倍ともいわれています。また、多くの情報・モノが溢れる現代では、新規顧客の獲得自体が難しくなってきているのも実情です。

そのため、LTVがより重要視されるようになっています。アップセルは、LTVの向上にも有効な施策です。

アップセルを成功させる4つのポイント

次に、アップセルを成功させるためのポイントを紹介します。

◇顧客のニーズに沿った提案をする

アップセルは、ただ上位の商品・サービスを提案すれば良いわけではありません。顧客が本当に求めている情報を、顧客に最も届きやすい形で提供することが重要です。

そのために、まずは顧客に対する理解を深めましょう。閲覧履歴、購入履歴、クリック行動などのデータや、顧客レビュー、フィードバックを集めて細かく分析すると、顧客の興味やニーズをより正確につかめるようになります。

そのうえで、ターゲット、提案する商品・サービス、アプローチ方法を検討します。ターゲットについては、ロイヤリティの高い顧客に絞り込むと、アップセルが成功しやすくなるでしょう。

そして実際に提案する際は、顧客視点を忘れないことも大切です。

◇適切なタイミングで提案する

アップセルの提案にあたり適切なタイミングを見極めることも、アップセルを成功させるために重要なポイントです。扱う商品・サービスにもよりますが、以下のタイミングはアップセルが成功しやすいタイミングといえます。

●顧客が商品・サービスの購入を決めたとき、または購入直後

●プランの更新時

●顧客が買い替えを検討しているとき

このような購買意欲が高まっているタイミングで提案をすると、受け入れてもらいやすいでしょう。

また顧客が抱える課題がわかったときも、アップセルを行なうのに適したタイミングです。顧客が直面している課題の解決をサポートするような商品・サービスを提案できれば、顧客満足度や顧客ロイヤリティの向上にもつながるでしょう。

◇商品・サービスのラインアップを充実させる

顧客が購入した、または購入を検討している商品・サービスの上位モデルがなければ、そもそもアップセルの提案ができません。そのため、商品・サービスのラインアップを充実させましょう。

例えば、現在販売している商品よりも操作性や機能性に優れたモデルを開発したり、サービスのプランを増やしたりする方法が考えられます。

◇顧客にとってのメリットを提示する

アップセルは、顧客にとってもメリットがあるものでなくてはなりません。それをわかりやすく伝えることも、アップセルを成功させるためのポイントです。

グレードを上げることでどのような機能やサービスが使えるようになり、それによってどのような効果が得られるのかを、できるだけ具体的に示しましょう。

ただし、メリットを理解してもらえたとしても金額がネックになることもあります。その際にさらなる「お得感」を得られる工夫をすると、より成功につながりやすくなるでしょう。例えば、何かのサービスであれば無料トライアル期間を設ける、通販であれば送料を無料にするなどが考えられます。

アップセルを行なうときの注意点

アップセルを行なうときは常に顧客視点を意識し、押し売りをしないようにしましょう。目先の利益ばかりを追求すると、顧客に不快感を与えることになります。信頼関係が崩れ、顧客が離れてしまう可能性もあるので、注意しましょう。

また、企業が成長していくためには、一時的に売上を伸ばすのではなくLTVを向上させることが重要です。アップセルが成功したらそれで終わりではなく、販売後も定期的にフォローし、顧客と良好な関係を構築・維持していきましょう。

顧客対応の記録を蓄積していけば、顧客のニーズをさらに深堀することも可能になります。得られた情報は、新商品の開発や次のアップセル、クロスセルにも活かせるでしょう。

明細書を活用したアップセルのアプローチ

通販におけるアップセルのアプローチとして、商品を送る際に、その商品の上位モデルの情報を載せたチラシを同梱するという方法があります。しかし、チラシを見ずに捨ててしまう人も少なくありません。

富士フイルムビジネスイノベーションでは、そのようなお悩みの解決をサポートする「One to One明細書」を展開しています。

「One to One明細書」は、お買い上げ明細書を顧客接点・販売ツール化できるサービスです。明細書とチラシを一体化させることで、閲覧率・反応率アップが見込めます。

導入により定期引き上げ率が2%→4%に上昇した企業様もあり、このような引き上げやクロスセルの効果も狙えるでしょう。

ここで、「One to One明細書」を導入し成果につながった企業様の事例を紹介します。

◇株式会社あじかん様

ごぼう茶の通信販売を手がけられている株式会社あじかん様は、宅配時に同梱するチラシをなかなか見てもらえず、リピート購入につながりにくいという課題を抱えていました。

「One to One明細書」で顧客に合わせた情報提供を始めたことで、ハガキによる注文が1.5倍~2倍に、お客様の声(ハガキの返送)は5倍~6倍に増加しました。

また、インターネット会員でなくても使えるポイント制度を始め、ポイント残高を明細書でお知らせするようにしたところ、定期購入者の解約率が8%から6.5%に低下 しました。

◇株式会社新潟味のれん本舗 様

株式会社新潟味のれん本舗様は、おかきやおせんべいなどの米菓を工場直送で全国に届けておられます。

顧客の7割が電話やFAX注文であるため、鮮度の高い情報をWeb以外でどのように届けるかが課題となっていました。

「One to One明細書」導入後は、明細書を新しいコミュニケーションツールとして活用されています。明細書にセール告知すると、Webの顧客からの反応も良く、購買促進につながっていることを実感いただけているようです。

また、DMで取り上げていなかったニッチ商品を明細書に載せたところ、その商品の売上が上昇するなど、クロスセルにも成功されています。

まとめ

インターネットが普及したことで購買者の行動も変化し、新規顧客の獲得も難しくなってきています。そのため、既存の顧客とのつながりを強化することの重要性が高まっています。企業の持続的な成長のために、アップセルに取り組んでみてはいかがでしょうか。

その際は、顧客のニーズに沿った提案を顧客視点で行なうことを意識しましょう。目先の売上ではなく、LTVの向上につなげることが大切です。