紙になる前は○○でした その2

今回は原料についての2回目。植物以外の原料で作る紙 についてご紹介します。 植物以外って何だかわかりますか? 大きく分けて3種類あります。1つ目は「動物由来」。2つ目は金属などの「無機素材」。3つ目は「合成繊維」です。では一つずつ見ていきましょう。

動物性繊維の紙

動物で繊維と聞くと、絹糸や羊毛が思い浮かぶ人も多いことでしょう。絹は木材が原料になる前に使われていた原料です。にじみが少なく品質は良いのですが、高価過ぎるため、普及には至りませんでした。羊毛はにじみがヒドイので、記録用には不向きです。また、羊皮紙という動物の皮を加工したものもあり、製法からいうと紙ではありませんが、原料である皮革自体はコラーゲン繊維からなるので、皮革をバラバラにして抄くと厚手の板紙ができます。こうなれば紙です。現在、靴の中底に使う試みがされています。なお、羊皮紙についてはおまけコーナーで詳しく紹介していますよ!

無機素材の紙

次に無機素材です。例をあげると、ステンレスで作ったステンレス紙というものがあります。金属なので電磁波を完全に遮断することができ、妨害電波によって誤作動が起こらないよう電磁波シールドとして有望視されています。また、通気性と圧倒的な耐熱性を活かして焼却炉やボイラーなどのフィルターとしても使われています。

金属繊維とは逆に、絶縁性が特徴のガラス繊維で作るガラスペーパーというものがあります。これは熱に強く強度があり、摩耗にも強いので構造材料や建築材料に適しています。

ステンレス紙顕微鏡写真

合成繊維の紙

最後に、合成繊維の紙です。基本分子(単分子)を長くつなげた高分子化合物(ポリマー)を繊維にしたのが合成繊維です。合成繊維はその太さや断面の形状、長さを自由に設定できるので、それによってできる紙の密度や通気性、風合いなどをコントロールできます。

たとえば、ペットボトルはポリエステルの一種からできています。これから作った繊維は強く、耐熱性、耐水性、耐油性、耐久性があります。ポリエステル紙はこれらの特徴を活かし、各種フィルターや、耐熱性と伸び縮みの少なさから屋根下地などに使われています。また、極細繊維を使うと薄くて強く、孔が細かいものができるので、海水の淡水化などに使われる逆浸透膜の支持基材として使われます。

再生繊維

オマケに、原料が木材なので合成繊維ではありませんが、似たような作り方をする再生繊維のレーヨン紙をご紹介します。レーヨン紙は意外と身近にあります。和菓子などで薄く美しい紙で包んであるのを見かけたことはありませんか?それです。木材パルプを溶かして、再びセルロースに戻したものを原料にして作ります。レーヨンだけで抄くと独特の艶があり、肌触りの良い真っ白な紙になります。通常のパルプにも自由に混ぜることができ、レーヨンを混ぜた紙は通気性があるので、障子紙として普及しました。レーヨン繊維の太さや長さを変えることで、通気性や繊維密度、風合い、強度を自由に変えることができます。



 
 

<今回のポイント>

●原料次第で「紙」の特質は大きく違います

 
 

おまけコーナー

Q.羊皮紙ってなに?




 

A.動物の皮を脱毛して強く張って伸ばし、表皮を削って仕上げに白色顔料(石膏の粉末など)を擦り込んで不透明度を高めたものです。主に羊の皮が使われたので、日本では「羊皮紙」といいますが、実際には仔牛や山羊などでも作られます。歴史は古く、パピルスと同じ時期から使用されていて、紙が発明される前はパピルスが適さない土地で主に使われていました。現在でも、画材や外交文書・宗教文書などの儀典用として使われています。

 

原料と紙の中間「パルプ」 ~原料から取り出された繊維の状態~