紙に文字が書けたり、印刷できるのはなぜ?

紙に鉛筆で文字が書けるのはなぜ?

ノートやコピー用紙に鉛筆で文字や絵が書けるのはなぜか、考えたことはありますか?鉛筆の芯の粉が紙に乗っている状態が文字や絵として見えるのはすぐにピンときますよね。では、なぜ紙に乗っているだけの粉が揺すってもひっくり返しても変わらず同じ位置にあるのでしょうか?

答えは紙の構造にあります。まず、紙に鉛筆で書ける原理をご紹介しましょう。 表面に塗料が塗られていないコピー用紙やノートなどの非塗工紙は、鉛筆と紙面の間に摩擦がおきるようになっています。そして黒鉛と粘土から作られた鉛筆の芯が、文字を書くときに紙の摩擦抵抗を受けながら、少しずつ削られることで黒い粉ができます。この粉が紙の繊維に付着することで文字や絵を書くことができるのです。つまり、鉛筆の粉は紙に接着しているわけでも、繊維に染み込んでいるのでもなく、繊維に絡まっている状態なのです。

一方、消しゴムで文字が消せるのはなぜかわかりますか?

消しゴムで黒鉛のついた紙面をこすると、消しゴム本体からゴムが剥がれおちます。そのゴムかすが黒鉛の粉を効率よくっつける性質を持っているため、紙から黒鉛を絡めとることで文字が消えます。ですので、書いた文字は振ってもひっくり返してもズレず、消しゴムで絡め取れば消えてしまうんですね。

印刷できるのはなぜ?

次に、印刷ができるのはなぜだか考えてみましょう。まず、印刷とは何でしょう?「インキを版から紙などに転写すること」です。

印刷技術の起源は、印鑑のように文字などの突起(凸部)部分に朱肉(インキ)を付着させた後、紙に直接押しつける方法「凸版印刷」がはじまりといわれています。

その後、凹判印刷や平版印刷(オフセット印刷)などが発明され、現在では版の形式により凸版・凹判・平版および孔版の4方式に分類されます。この中でもオフセット印刷が主流で、印刷物のほとんどを占めています。

印刷

さて本題です。印刷でインキが紙の上に固定される原理は?

紙は繊維と繊維が重なり合って結合し、紙の層を形成しています。これがヒントです。重なり合っているとはいえ、繊維と繊維の間にはとても細かい隙間があります。この組織間の細かな隙間による毛細管現象が印刷の原理です。紙にはインキを吸い取って離さない性質があるために、印刷ができるのです。

版式別の紙の適正一覧

ちょっとブレイク

余談ですが、印刷技術が発明される以前、聖書を一冊印刷するためには羊の皮が300匹分必要とされていました。とても高価過ぎますね。そこで印刷術を実用化するためにある程度豊富で安価な材料として選ばれたのが「紙」なのです。ここからが紙と印刷の長い付き合いの始まりです。もし羊皮紙が主流だったら、羊が何匹いても足りないところでした。紙が発明されていて良かったです。

 

<今回のポイント>

●鉛筆で文字が書けたり、印刷ができるのは、紙の「繊維同士が結合しあってできている構造」のおかげ

 

おまけコーナー

Q.紙が水に弱いのはなぜでしょう?

A.繊維の結合方法にあります。

『紙ってなに? ~繊維の世界~』の回で述べたように、繊維同士は重なりあい、さらに水素結合でくっついています。ちょっと実験してみましょう。紙を引き裂いてみてください。

切断面が毛羽立っていませんか?繊維自体は丈夫なので簡単には切れません。これは繊維が切れずに結合し合っていたのがほぐれたのです。さらに顕微鏡で見ると繊維同士は紙の強度を支えられるほど絡まっていないのがわかります。つまり、紙の強度のほとんどは「水素結合」によるものだったのです。 水素結合は、水に触れると解消してしまいます。この特性を利用して紙ができ、さらにリサイクルできるわけですが、重要な文書などには水は大敵ですね。

 

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