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日本
テープ導入メリット

ものづくりの現場から
テープメディア生産工程と技術の紹介。技術者にインタビュー!

本格的なビッグデータ時代の到来を受け、大量のデジタルデータを安全・長期・低コストに保管できるストレージメディアとして注目が高まっている富士フイルムの磁気テープ。事業化以来、一貫して磁気テープの生産を行っている富士フイルム 神奈川工場 小田原サイトの最先端生産技術をピックアップして紹介します。

さまざまな工程を経て完成する磁気テープ

化学/電気/電子/機械工学などの最新技術による、磁性塗料の作成から塗布、裁断、カートリッジへの組み込みの工程を経てお客様に製品をお届けしています。

LTOテープの生産工程

驚きのテクノロジー 1:塗布工程

薄膜・均一に磁性塗料を塗る!

塗布工程イメージ

厚さ数マイクロメートルの極薄のベースフィルムに磁性塗料を塗布するこの工程では、品種ごとに異なる条件設定にもとづき塗布装置を精密に制御。1Lでフットボールコートを4面塗れるほどに相当する、薄膜・均一の塗布を実現しています。。

テープを薄くできれば、それだけ一巻当たりの巻き取り量を増やすことができ、記録容量の拡大につながります。塗布膜の薄さは、指で触っただけでは塗布前のフィルムとの違いが分からないぐらい。富士フイルムは、この極薄塗布を安定的に行う技術を持っているのです。

超微粒子をナノレベルで均一に塗布する技術は、1Lでフットボールコートを4面塗れるほどの薄さです

磁気テープの構造

驚きのテクノロジー 2:裁断工程

2メートル幅の日本列島縦断道路で±1ミリの幅精度で裁断する!

裁断工程イメージ

磁性塗料が塗布されたフィルムを、実際の製品に用いられるテープ幅(12.65ミリ)に数十本分まとめて裁断する工程です。

均一な幅に裁断を行えるように制御しており、仮に1本のテープを2メートル幅の日本縦断道路とすると、裁断の出発点と最終点のテープ幅の誤差はわずか±1ミリ以内という驚異の精度を達成しています。

数キロにも及ぶテープをまるで一枚の鉄板のように巻き取ることができるのも、寸分の狂いもない裁断と巻き取りがなせるわざ

さらに、独自の数値管理により、裁断後の巻き取り時の空気の層をサブミクロンレベルで最適化するシステムを採用していることも見逃せません。

驚きのテクノロジー 3:サーボライティング工程

テープをナノレベルで制御しながら信号を記録!

サーボライティング工程イメージ

磁気テープに対して情報の書き込みや読み出しを行う際に、磁気ヘッドが迷わずに情報の“ありか”を見つけるために用いられるのがサーボ信号。このサーボ信号をテープ上に記録するこの工程では、テープの搬送をナノレベルで制御しながら記録作業を実施。正確かつ迅速な情報の書き込みや読み出し性能の実現を支えています。

記録した全ての信号については、独自の読み取りシステムを使って検査を実施し、信頼性の高い書き込み・読み出し保証を行っています。

驚きのテクノロジー 4:組み込み工程

ロボットの活用で効率的でクリーンな生産を実現!

組み込み工程イメージ

磁気テープを収める箱形のカートリッジには、テープを巻き込むリールや、記録情報を誤って消去しないためのライトプロテクトスイッチ、使用履歴を記録する非接触ICメモリなど大きさや素材が異なるさまざまな部品が組み込まれています。

カートリッジに部品を組み込むこの工程では、従来は人でなければ難しかった複雑な作業も行えるロボット設備を積極的に導入。作業の大幅な自動化と、微小の異物の混入も防ぐクリーンな環境を実現することで、迅速で高品質なものづくりを可能にしています。

最新のテクノロジーを導入し作業を大幅に自動化

世界のデータ保存を支える磁気テープの生産に、事業化以来、一貫して取り組んでいる富士フイルム 神奈川工場 小田原サイト。その最前線で品質・生産性のレベルアップへ日々奔走するメンバーが、ユニークな取り組みの数々を紹介します。

富士フイルム 産業機材事業部 品質保証技術・工程技術開発メンバー(左から)中三川 順一、香原 賢俊、西田 謙二、上山 友秀

アクション1:自工程保証──良品だけを確実に次の工程へ届ける

インタビューの様子

複数の工程を経て、完成に至る磁気テープの生産工程。全てが完成したのちに不具合が見つかった場合は、それまでの生産活動が全てムダになってしまうだけでなく、お客様にタイムリーに磁気テープをお届けできなくなってしまいます。

そこで富士フイルム 小田原サイトが力を入れて取り組んでいるのが、良品だけを次工程に確実に引き渡すことで、工場全体として品質や生産性を高める「自工程保証」という取り組みです。

例えば、磁性塗料をベースフィルムに塗り付ける塗布工程では、塗布の仕上がりを漏れなく確認するために、複数の自動検査機にて全長検査を行い、合わせて熟練作業員によるチェックも行っています。また、製品ごとに定められた工程管理幅にテープを裁断するスリット工程でも、独自の設備を使って全長数キロにも及ぶテープの全てを測定し、裁断精度を保証するといった取り組みを行っています。こうした積み重ねにより、故障懸念などのトラブルは、各段に減少しています。

磁気テープの記録容量拡大に向けて日々技術レベルを高める難しさはありますが、自工程保証にこだわって取り組みます。

アクション2:生産工程を「見える化・見せる化・知らせる化」──ビッグデータをリアルタイムで管理・共有

インタビューの様子

品質を高く保ちつつ、同時に生産性を高め、お客様に磁気テープをスピーディにお届けするためには、生産工程内のあらゆる情報をリアルタイムで自動収集し、必要に応じて先手の対応につなげることが欠かせません。

富士フイルム 小田原サイトでは、富士フイルム独自の生産情報管理システムを導入。生産に関する指示情報や履歴情報の一元的な管理・共有を強化することで、品質・生産性のレベルアップにつなげています。

塗布や裁断などを行った磁気テープを巻き取り、箱形のカートリッジに複数部品と共に組み込む工程でも、生産情報管理システムをフル活用。磁気テープの巻き取り指示などを自動発信するほか、その履歴についてもデータベースへ逐次記録。生産数量・得率・設備稼働率などを瞬時に共有し、全工程の生産情報をひも付けることでトレーサビリティシステムを確立しています。

世の中のデジタルデータが爆発的に増えるにつれて、今後ますます高記録容量の磁気テープが求められると確信しています。豊かな社会の実現に役立つ製品に携われることは大きな誇りであり、今後もさらなる安定生産のため、ICT・IoT・AIを積極的に展開して安定品質・高生産性に全力を尽くします!

アクション3:信頼性評価──品質の「今」をいち早く生産にフィードバック

インタビューの様子

富士フイルム 小田原サイトから出荷される磁気テープは、熱帯地域から寒冷地域まで世界各地のさまざまな環境下で使用されます。お客様によって記録再生の頻度も千差万別であり、磁気テープにはそのような「使用環境の違い」に左右されずに、長期にわたり安定的に性能を発揮することが求められます。

そのため、富士フイルム 小田原サイトでは、下記のさまざまな気温や湿度環境を再現した試験室に、多くの磁気テープドライブを設置。磁気テープの記録再生やドライブに対する出し入れを連続的に繰り返す、信頼性評価試験を実施しています。

速やかに生産工程のメンバーと情報共有を行い、常に「攻めの品質評価」を心がけることで、万が一のトラブルに発展する前に先手で対応できる体制を整えています。

世界各地の温湿度を再現する環境試験室

今後、磁気テープの記録容量をさらに増やすためには、よりテープを薄く、磁性体を小さくすることが不可欠で、一段とデリケートなものづくりが求められます。「この程度のレベルで大丈夫だろう」と安易に妥協することなく、緊張感を持って取り組んでいきたいですね。

多くの環境で信頼性テストを実施している

アクション4:工程間の連携──ワーキンググループで難題の解決に挑む

インタビューの様子

富士フイルムでは磁気テープメディア「LTO」について、2〜3年おきに記録容量を大幅に拡充した新製品を市場に送り出しています。新製品の生産開始などにあたっては、あらゆる工程に関わる技術的な課題をクリアする必要があり、こうしたケースに力を発揮するのが、複数工程の選抜メンバーで構成されるワーキンググループの活動です。

この活動のメリットは、工場メンバーの多様な知恵や技術を結集し、全体最適の視点で素早く課題解決を進められること。例えば、ある工程が抱えた製法上の課題に対して、前後工程の改良を含めて総合的に対応するといった解決策を迅速に導ける可能性が高まるのです。

ちなみに富士フイルム 小田原サイトのメンバーの多くは、数年単位で異なる工程に異動するジョブローテションを経験しています。これにより、誰もが磁気テープの生産に必要なあらゆる工程に理解を深め、全体最適の視点でさまざまな技術課題に対応できる力を引き上げています。

メンバー一人ひとりの担当工程は違っても、高品質な磁気テープをできるだけ早くお客さまに送り届ける“同志”としての意識を互いに強く持ちながら、より良いものづくりを目指して切磋琢磨しているんですよ。

富士フイルム 神奈川工場 小田原サイトでは、世界最先端の技術を駆使し、磁気テープの生産を行うとともに、同サイト内にある記録メディア開発センターでは、さらなる記録容量の拡大を視野に次世代磁気テープの研究開発を進めることで、グローバルで高まりつつあるデータストレージの需要に一層の貢献を果たそうと奮闘しています。研究開発に携わるメンバーに、現在の活動内容やものづくりにかける思いを聞きました。

富士フイルム 記録メディア研究所 多田 稔生(左) 小沢 栄貴 (右)

あらゆる可能性を徹底的に追求

次世代磁気テープの実現に向けて、主に取り組んでいることは?

インタビューの様子

多田:数年後をめどに、記録容量を現行製品のおよそ5倍に高めた革新的な磁気テープを実用化するため、重要な素材である磁性体の研究開発を行っています。

目標の記録容量を達成するためには、テープに塗布する磁性体の粒子サイズを現行製品レベルから小さくして、テープ単位面積当たりの粒子個数を増やす必要があります。しかし、粒子サイズが小さくなると、その分、一つひとつの磁性体粒子が磁性を維持するのが難しくなるため、粒子のサイズダウンと磁性の確保という相反する要素を両立させることが目下の課題となっています。

小沢:磁気テープは、ベースフィルム、ベースフィルム上に導電性や表面平滑性を付与する非磁性層、その上に塗布されデータを記録する磁性層、テープの走行を安定させるベースフィルム裏面のバックコート層の4層構成で、さらに、例えば磁性層は、磁性体・分散剤・結合剤・潤滑剤等の複数素材で構成されるなど、多数の要素から成り立っています。私の役割は、これらの要素の最適条件を記録再生特性の評価から見いだし、商品設計に盛り込むことです。

先ほど多田さんが説明したように、磁性体粒子が小さくなると粒子1個の磁性を維持することが難しくなりますが、それでも安定的にデータの記録を行えるように、あるべき設計指針を導き出そうと知恵を絞っているところです。

ブレークスルーに向けて必要なことは?

インタビューの様子

多田:これまでの延長線上の取り組みだけでは、磁気テープの革新的な高容量化は難しいと感じています。単純に磁性体粒子をサイズダウンするだけでなく、その組成、形状および表面性状まで突き詰めて考え、粒子設計に反映させることで活路を見いだしたいです。

小沢:既存の磁気記録方式にとらわれず、他の方式など幅広いストレージ技術に目を向け、磁気テープに応用することがポイントと考えています。

FUJIFILMの総合力を追い風に

研究開発における富士フイルムの強みは?

インタビューの様子

多田:磁性体づくりに欠かせない粒子形成技術は、写真フィルムにおいて光を捉える役割を持つハロゲン化銀粒子を源流とする技術。創業期から培われてきた、世界に誇れる富士フイルムのコア技術の1つであり、豊富な知見を駆使して磁性体の研究開発を行えることは大きな利点だと思います。

小沢:さらに富士フイルムには、高度な技術を持つ生産部門と、解析技術センターや有機合成化学研究所など高い専門性を持つコーポレートラボ群があり、常に連携しながら研究開発を推進できることも強みです。

多田:確かに、その点は見逃せませんね。例えば、磁気テープの高容量化を進める上で、これまで問題にならなかった微小欠陥が実害となりますが、解析技術センターの技術・知見を用いて欠陥の位置や原因を明らかにすることでスムーズに解決できる可能性が高まります。

小沢:磁性体粒子を均一に分散するための分散剤や磁性体粒子をベースフィルム上に固定するための結合剤を最適化するために、有機合成化学研究所の素材技術を応用するといった取り組みも行っているんですよ。

多田:磁気テープシステムとして性能を最大限に引き出すためには、磁気テープ側の改良はもちろんですが、磁気テープドライブ側の改良も重要となってきます。富士フイルムは、IBM社と長年にわたり共同研究を実施。毎週のように議論を重ね、記録容量の向上につながるアイデアを出し合うなど、継続的に連携を強化しています。

磁気テープの力で社会に貢献したい

皆さんにとって研究開発のモチベーションは? 今後に向けた目標は?

インタビューの様子

多田:富士フイルムというメーカーの一員として、磁気テープを通して社会の発展に貢献していきたいです。磁気テープの主役は磁性体だと思っています。その開発担当者である自分がやらないと、お客様が求めている高容量化のニーズには応えられないという気概をもって日々の研究開発に取り組んでいます。

小沢:私は、超高密度・高容量磁気テープの開発を加速させて、世界中で爆発的に増え続けている重要なデータを確実に保存できるメディアを提供することで、膨大な保存情報を未来に役立てられるようにしたいと思っています。そのために、富士フイルムで長年培われてきた磁気テープ設計技術の積み上げと、最先端の技術を融合して、これまでの技術の延長では到達し得ない超高密度・高容量磁気テープを実現したいと考えています。

多田:小沢さんのおっしゃる通り、IoT、ビッグデータ活用、AI分野が急速に発展することで、生成されるデータ量は指数関数的に増大し、10年後には1年間で今の10倍のデータが創出されると予測されています。その生成されるデータを大容量に、かつ確実に保存することは、ICT社会に必須なことと考えています。磁性体に関しては、現行製品から粒子サイズを半分以下にし、記録容量を60倍以上に引き上げられる可能性を確認しました。その可能性を実用化技術に落とし込み、モノとしてできるだけ早くお客さまにお届けしたいです。

小沢:お客さまのニーズとしては、容量だけでなく、信頼性・コスト・ビット単価も大事であり、これらを今より高い次元でバランスをとり、将来にわたって期待していただける磁気テープを開発し続けたいです。そのためには新しい材料や生産技術にも着目し、富士フイルムの持ち味を生かしながらチャレンジングな研究開発を進めていきます。

(取材時:記録メディア事業部)

磁気テープの生産・研究開発の最前線を紹介しました。最新の磁気テープを活用したアーカイブサービスに興味や関心のある方は、ぜひお問い合わせください。

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