インフラの老朽化が進む中、橋梁の点検はますます重要性を増しています。従来の点検方法は、仮設足場を組んで、かなりの作業員を掛けて行う大掛かりものでしたが、高所作業や狭所作業には多大なリスクが伴います。そこで、ドローン技術の活用が注目を集めています。
コンクリートのひびわれをAIが自動検出する画像計測技術「ひびみっけ」では、ドローンで撮影した画像も使用できます。特に浮きの叩き落しが不要な(第三者被害の予防が不要な)現場を中心に活用が増えています。
本コラムでは、ドローン技術が橋梁点検に与える影響と、その利点・課題について考察します。
- 高所・狭所へのアクセス:
- ドローンは高所や狭所など、人が容易にアクセスできない場所に簡単に到達できます。また、ロープアクセスなどの方法もありますが、リスクはないとは言えず、ドローン点検で行う事で、安全性が大幅に向上します。
- 時間とコストの削減:
- 従来の方法では数日間を要する作業でも、ドローンを利用することで短時間に完了させることが可能です。高所作業車の手配や、足場を組む必要がないため、コストの削減にもつながります。
また、現場オペレーターの人数も削減が見込めます。 - 高精度なデータ収集:
- ドローンに搭載された高解像度カメラや各種センサーにより、詳細な映像やデータを収集できます。人の目で観察する従来の方法より写実性の高い画像での撮影により、微細なひび割れや腐食なども見逃さずに発見することができます。
- 天候の影響:
- 強風や雨などの悪天候時には、ドローンの飛行が困難になります。この課題に対しては、全天候型ドローンの開発や、飛行範囲を限定したシミュレーション技術が有効です。
- バッテリーの持続時間:
- ドローンのバッテリーは限られており、長時間の飛行が難しいという問題があります。しかし、近年ではバッテリー技術も進化しており、持続時間が延びたドローンが登場しています。
- データ解析:
- 従来は撮影した写真データや損傷場所の解析に膨大な時間が掛かる事が課題となっており、データを適切に解析し、橋梁の現状を的確に評価するためには高度な技術と膨大な工数が必要でしたが、近年はAIによる画像診断サービスが発達しています。富士フイルムの画像診断AI「ひびみっけ」なら、データ解析の効率化が可能となります。1フォルダ(対象面1面)あたりおよそ1時間前後で、バラバラに撮影した画像を1枚に合成し、ひびわれの正確な解析を自動で実施します。フォルダ毎の解析時間となりますので、点検対象面のフォルダを複数アップロードしても、各フォルダ毎に1時間前後と変わりません。また、ひびみっけはNETISのVE判定(今後調査が不要と評価された技術)、1,500社以上の使用実績のある新技術で安心です。
ひびみっけ用画像を撮影するためには、デジタル一眼カメラと三脚が必要ですが、ドローンでも診断に必要な画像を取得することができます。ドローンの機種にもよりますが、多くの普及機であれば、幅0.2mm以上のひびを撮影できます。ひびわれを正確に画像化するには精細な撮影が重要になりますが、その精度はドローンが構造物にどれだけ近づけるかにかかってきます。幅0.1mmのひびを撮影するには、ドローンをかなり近づけるか、望遠レンズを使う必要があります。この場合、撮影は高度になり、かつ撮影エリアが狭くなるため、撮影する画像の総数が増えます。正確な画像を取得する為には、ドローンのカメラ設定も
弊社では登録ユーザー様を対象に、更に詳しい撮影のヒントやコツがわかるドローン撮影ガイダンスをご用意しています。また、これからドローン導入をご検討中の方も、ドローン機種ごとの撮影距離が記載されておりますので、是非購入の参考にしてみてください。
ドローン撮影とひびみっけを使用した活用事例は近年増加しており、弊社ではその一部を活用事例として公開しています。実際の使用状況のイメージをいただく事が可能となりますので、是非ご覧ください。
ドローン技術の進歩により、橋梁点検の方法が大きく変わろうとしています。その利点は多岐にわたり、安全性の向上やコスト削減、高精度なデータ収集が期待できます。一方で、バッテリーの持続時間やデータ解析の難しさ、天候の影響といった課題もありますが、それらを克服する技術もまた進化を遂げています。画像診断技術「ひびみっけ」を活用することで、データ解析の効率が飛躍的に向上する点も見逃せません。
将来的には、ドローン技術とAIを融合させた「スマート点検システム」が一般的になることで、橋梁の保全がより効率的かつ効果的に行われることが期待されます。このような技術革新は、人々の安全を守り、持続可能なインフラの維持に大いに貢献するでしょう。