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日本
一歩進んだクリニック経営

クリニック経営における財務諸表の読み方

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

日頃から財務諸表をチェックすることは、クリニックの経営状況を把握する上で欠かせない作業です。“クリニックの健康診断”とも言うべき財務諸表の確認は、税理士任せにせず、院長の責務と考えて取り組む必要があります。 

損益計算書はクリニック経営の“成績表” 

財務諸表とは一般に、損益計算書(PL)貸借対照表(BS)キャッシュフロー計算書(CF)の3つを指します。以下に、それぞれの概要とチェックすべきポイントを解説します。 

損益計算書は、クリニックの収入と支出を示すことにより、どれだけの利益を上げたかを明らかにする書類です。クリニックの経営が順調かどうかを表す“成績表”のようなものと考えればよいでしょう。月ごとや四半期ごと、半年あるいは年間の損益計算書をチェックすることで、クリニックの収支動向の変化をつかめるようになります。 

ただし、総収入と総支出を元に利益を示すだけでは、その利益が事業によるものなのか、不動産取引など他の要因によるものなのか判断がつきません。そこで損益計算書ではクリニックの利益を、診療や検診などによって稼いだ「事業利益」と、借入金の支払利息なども加味した「経常利益」、さらに固定資産の売却など臨時の損益を加減した「税引前当期純利益」、そこから法人税や住民税などを差し引いた「当期純利益」──に区分しています。 

このうち、クリニックの院長が継続的に確認すべき数字が、本業の儲けに相当する事業利益です。例えば事業利益が減少した場合、その原因が、患者減による収入減少にあるのか、あるいは人件費増などの経費増加にあるのかが、損益計算書を見れば判断できます。その分析によって、適切な対策を打つことが可能になるわけです。 

クリニックの“基礎体力”示す貸借対照表 

貸借対照表は、クリニックが資金調達をどのように行い、どう運用しているかを明らかにした書類で、クリニックの“基礎体力”に相当する財政状態を示します。損益計算書が一定期間の経営状況を反映するのに対し、貸借対照表は決算日など、ある時点の経営状況を表すのが特徴です。 

貸借対照表は「資産の部」という左側の表と、「負債の部」「純資産の部」からなる右側の表で、数字が必ず一致する(=バランスする)ことから「バランスシート」とも呼ばれます。資産の内訳は現預金や建物、医療機器、ソフトウエア、未収金などで、負債の内訳は借入金、買掛金などです。純資産には、設立時の出資金や剰余金などが含まれます。 

クリニックの院長が貸借対照表をチェックする際には、まず純資産に着目します。右側の表の総額(総資産)に占める純資産の比率を「自己資本比率」と呼びますが、これが20%を切るようだと危険水準と言われますので注意しましょう。また、近年は未収金の増加に悩まされる医療機関が増えています。資産のうち未収金が増えていないかを確認することも重要です。 

一方、クリニックの会計と院長個人の会計が明確に区分されていない場合、貸借対照表の現金残高とクリニックの現金残高が一致しなくなることがあります。その額が大きいと税務調査の際に不利な扱いを受けることにもなりかねませんので、必要に応じて立替金として処理するなど適切に対応する必要があります。これとは別に、現金残高が一致しない原因を調べたところ、職員による着服が発覚したという事例もあります。いずれにせよ現金残高の不一致は要注意です。 

キャッシュフロー計算書は“財布の内訳” 

キャッシュフロー計算書は、一定期間におけるクリニックの現金の収支を示す書類です。クリニックの“財布の内訳”と考えると分かりやすいかもしれません。診療報酬や給与支払いなどの「業務活動」と、設備投資や株式売買などの「投資活動」借入金返済などの「財務活動」の3つに区分して、資金の増減を表します。 

キャッシュフロー計算書をチェックすれば、上記の各区分ごとに資金繰りの現状や将来予測が立てられるようになります。「資金繰り倒産」という言葉があるように、本業が黒字であるにもかかわらず、決済タイミングの関係で経営危機に陥るケースは少なくありません。新規の医療機器導入など設備投資を考える際には、必ずキャッシュフロー計算書を確認してから計画を立てるようにしましょう。 

財務諸表の種類と特徴


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【企画・編集 日経メディカル開発】