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日本
動物医療コラム

悪質な口コミ対策:相手方に直接連絡して解決へ導く2つのアプローチ

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

以前のコラムで、動物病院における悪質な口コミ対策として、以下の3つの方法をお伝えしました。

  1. 発信者情報開示請求および損害賠償請求(法的措置)
  2. 口コミの返信機能を利用し、第三者からの見え方を整える
  3. 投稿者に対して直接連絡する

今回は、この中の「3. 投稿者に対して直接連絡する」という方法について、具体的な実践ステップと注意点を解説します。

この手法には、大きく分けて「誤解を解くアプローチ」と「カスハラ(カスタマーハラスメント)を行う飼い主に転院を促すアプローチ」の2つの目的があります。

① 投稿者が特定できている場合に「誤解」を解く方法

口コミの書き込み内容から投稿者(飼い主様)が特定できている場合、まずはカルテ等から事実関係を正確に確認します。

「2. 第三者からの見え方を整える(公開返信)」の際も投稿者にメッセージを送る形をとりますが、今回の目的はあくまで「飼い主様自身の誤解を解き、ご納得いただいたうえで口コミを自主的に削除していただくこと」です。

そのため、公開の場での反論ではなく、直接の連絡を通じて相手の心情により一層寄り添う内容を心がける必要があります。必要に応じて、当時の対応に関する医学的な「知見」や根拠を丁寧に説明することも有効です。

もちろん、誠実に対応しても削除に応じてもらえない場合は、第三者の目を意識した公開返信へ方針を切り替えたり、悪質な権利侵害であれば法的措置(裁判手続き等)へ移行することも可能です。

② カスハラ飼い主へ「転院」を促す方法(応招義務との兼ね合い)

もう一つの重要なアプローチが、度を越えたクレームや迷惑行為(カスハラ)を行う飼い主に対し、角を立てずに転院を促す方法です。

動物病院(獣医師)には獣医師法に基づく「応招義務」があるため、原則として正当な理由なく診療を拒むことはできません。しかし、カスハラを行うような飼い主に対しては、例外的に応招義務が免除(診療のお断りが可能)となる場合があります。

【参考資料】 応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について

「応招義務違反になるかどうか微妙なライン」のケースであっても、転院を促すことは可能です。

動物病院の飼い主様は、人間の医療機関や歯科医院と比べて「強いクレームを言いながらも、引き続き自分のペットを診てほしい(病院を変えたくない)」と考える方が多いという特有の傾向があります。そのため、病院側から毅然とした態度で「転院の打診」を行うことが役に立つ機会も多いのではないでしょうか。

③ 診療拒絶にならない「転院を促す連絡」の4ステップ

カスハラを行う飼い主に対し、「もう診ません」と直接的な診療拒絶をするのではなく、応招義務違反を回避しながら転院を促すための「基本的な文章構造(4つのステップ)」をご紹介します。

ステップ1:困っている事実の明示

「Googleマップにて〇〇とご記載されている件」や「〇月〇日のご来院時に〇〇と仰られた件」など、病院として看過できない具体的な言動や書き込み内容を客観的に指摘します。

ステップ2:病院側の見解・事実経過の説明

ステップ1の事実に対する、病院としての見解や、カルテに基づく正しい事実経過を冷静に述べます。

ステップ3:信頼関係の喪失とペットへの影響

「当院の対応について誤解が生じていること」を伝えたうえで、「書き込みを削除し、今後〇〇のような行為をしないとお約束いただけない限り、当院としても安心して診療を行うことができません。飼い主様との基本的な信頼関係が崩れた状態での診療は、大切なペット(動物)にとっても決して良いことではありません」と毅然と伝えます。

ステップ4:転院の提案と医療記録の提供

「現在の関係性のままではペットのためにも良くありませんので、他院への転院をご検討ください。転院されるのであれば、これまでの医療記録(カルテ等)はすぐに郵送等でご提供いたします」と提案して結びます。

最後に

日々の診療を安心して行うためには、こうした悪質クレームへの対応策を「属人的なもの」にせず、組織として準備しておくことが重要です。

厚労省のガイドライン等を参考に、スタッフ向けの「カスハラ対応マニュアル」を完備し、最終的には「誤解を解く」か「カスハラとして来院を拒絶する」かの基準を明確にしておくことで、獣医師もスタッフも安心して動物の命と向き合うことができます。(このマニュアル整備については、また別の機会に詳しくお伝えいたします)

なお、上記でお伝えした「転院を促す連絡」の具体的な文面(雛形)や実践的なサポートについては、フラクタル法律事務所が開発したオンライン同意書システムにて提供しております。お困りの方はぜひご活用ください。

【2026年5月/文責:弁護士法人 フラクタル法律事務所 弁護士 田村勇人(東京都獣医師会・横浜市獣医師会・千葉県獣医師会顧問弁護士)】