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日本
動物医療コラム

スタッフが飼主からストーカー行為を受けている!

動物病院経営トラブル対応シリーズ

このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。

昨今では動物病院においてもカスタマー(顧客)ハラスメント、ペイシェント(患者)ハラスメントが増えており、過去のコラムでもその類型や対策について紹介しました。飼主さまからのハラスメントの中でも最も悪質なものの一つがストーカー行為です。当社のクライアントの動物病院さまでもスタッフが飼主さまからストーカー行為やそれに近い行為を受けたという実例は少なからず発生しています。もちろんスタッフだけでなく院長先生がそのような行為のターゲットになることもあり得ます。

動物病院は動物を介してスタッフと利用者である飼主さまの距離が近くなりがちで、それがきっかけで恋愛感情や執着が生まれ、ストーカー行為や犯罪行為にまで発展することも十分にあり得る職場です。また昨今は動物病院での事象に限らず、恋愛感情のもつれやストーカー行為をきっかけとする痛ましい事件の報道が後を絶ちません。今回のコラムでは動物病院における飼主さまからのストーカー行為の危険性や対処法について紹介します。

1. ストーカー行為とは何か

「ストーカー規制法」という法律では、以下のような行為を「つきまとい等又は位置情報無承諾取得等」と定義し、その行為を同一の者に対し繰り返して行うことを「ストーカー行為」と規定して、罰則を設けています。

  • つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
  • 監視していると告げる行為
  • 面会や交際の要求
  • 乱暴な言動
  • 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS・文書等
  • 汚物等の送付
  • 名誉を傷つける
  • 性的しゅう恥心の侵害
  • GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為
  • GPS機器等を取り付ける行為等

動物病院で発生した実例としては、以下のようなものがあります。

  • しつこく連絡先を渡されたり聞かれたりした
  • 病院への無言電話を繰り返しかけてきた
  • SNSのアカウントを見つけてしつこく連絡してきた
  • 病院の外で待ち伏せをされた
  • 仕事帰りに車で後をつけられた

被害者がいらっしゃるので具体的に書きづらい問題ですが、ニュースになったものも含め、とても痛ましい悲惨な事件も少なからず発生しています。このようなことが決して他人事ではなく、ご自身やスタッフの身に起こり得ることなのだということをまずは認識することが大切です。

2. ストーカー行為は予防が大切

動物病院で働くスタッフは、いわば「最初から職場がバレている」状態であり、一度ストーカー行為のターゲットになってしまうと逃げ場がなく対処が困難です。大変残念なことですが、そのような出来事がきっかけで職場に行くのが怖くなりスタッフが退職してしまうという事例もあります。そこでそもそもストーカーのターゲットにならないことが重要になりますが、そのためには以下のようなことが大切です。

飼主さまとは一線を引いて対応する

飼主さまに気さくな対応をすること自体は良いことですが、あくまでスタッフと飼主の間柄であることを忘れず一線を引いて対応をすることが大切です。例えばプライベートな話題(「どこに住んでいるのか」「彼氏・彼女はいるのか」など)には、安易に乗らないようにしましょう。過度にフランクな対応は、「自分に気があるのかも」などと相手を勘違いさせることにもつながりかねません。

飼主さまと連絡先を交換しない

顧客とプライベートの連絡先(SNS含む)を交換しないことは接客業務の基本です。注意したいのは動物病院の場合は飼主さまに特に恋愛感情や下心がない場合でも「動物のことを教えてもらいたい」「情報交換したい」などの理由で連絡先を聞かれるケースがあることです(同姓の飼主さまからのアプローチも少なくありません)。仮にそのようなケースであっても、勤務時間外に連絡が来たり、その連絡を無視すると逆恨みをされたりと、感情のもつれやトラブルにつながることがありますので、連絡先は安易に交換しないことが大切です。

3. ストーカー行為を認識したら
事象を軽視せず、正確に把握する

ストーカー行為やそれに類する行為をスタッフが認識したらまずは速やかに上司、院長に報告し、起きていることを正確に把握することが大切です。明確なつきまとい行為はもちろんですが、例えば連絡先を聞かれたとかセクハラ的な言動を受けたなど、ストーカー行為につながる兆候のような出来事でも必ず報告・相談をするように日頃から指導を徹底しましょう。小さな兆候を放置すると、エスカレートし取り返しのつかないことにもなりかねません。

必要に応じて対応を行う

起きている事象がストーカー行為とまでは言えず、「好意を持たれているかもしれない」といったレベルであれば、シフトを調整したりそのスタッフを当該の飼主さまの担当からはずすなど、物理的に距離を取るような配慮をするのもよいでしょう。
一方で既に連絡先を聞かれているとかセクハラのような言動を受けている場合は、より危機感をもって対応する必要があります。当該スタッフと飼主さまが極力接触しないようにし、行為が収まらない場合は病院(院長)から明確にそのような行為を慎んでいただくよう警告したり、それでも収まらなければ病院のご利用をお断りすることも視野に入れて対応すべきです。

警察等への相談は躊躇なく

忘れてはいけないのは、上記「1」で述べた通り、ストーカー行為はストーカー規制法に違反する犯罪行為だということです。明確な行為が確認できた場合はもちろん、スタッフ本人が危険を感じた場合などは警察などへの相談も視野に入れましょう。「警察は事件化しないと動かない」ということが言われがちですが、必ずしもそんなことはなく、当社のクライアントの動物病院においても警察にストーカー行為を相談したところ即日加害者宅を訪問して警告をしてくれ、ストーカー行為が止んだということもありました。スタッフに危険が迫っていることを認識した場合は、躊躇なく速やかに行動することが大切です。

まとめ:ストーカー行為とは何か/ストーカー行為は予防が大切/ストーカー行為を認識したら

【2025年10月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】