2026.01.15
AI開発に必要な知識・技術とは?開発の流れや方法、注意点なども紹介
AI開発とは、人間と同様に知的活動を行える人工知能を開発することです。自社でAI開発を進める場合は、AIやデータに精通した人材確保に加え、開発環境を構築しなければなりません。開発の際は情報漏えいや著作権侵害を引き起こさないよう、注意も必要です。
本記事ではAI開発の流れや必要な知識・技術、開発時の注意点などを紹介します。業務効率化や人手不足解消の手段にAIの導入を検討している方は、最後までご覧ください。
AI開発とは
AI開発とは、人間の代わりに知的活動全般を行う人工知能を開発することです。AIは人間の言葉を理解したうえで、論理的な推測や判断を下せるだけでなく、経験による学習能力も兼ね備えています。
また、AIは機械学習の働きによって、膨大なデータから必要な情報を抽出するのが得意です。大量のデータを素早く処理できるため、データ分析にかかる工数を大幅に削減できます。
さらに、AIは決められた手順やルールにもとづき、作業を正確に再現する能力に優れています。人間と異なり、業務量や当日の体調、労働時間の長さでパフォーマンスが変わる心配もありません。
業務効率化や人手不足を解消する手段として、AIの導入・開発への注目度が高まっています。
機械学習とは
機械学習とは大量に学習したデータから規則性や傾向、特徴を見出し、分析や予測に活用する技術です。学習するデータの量と質が高まるほど、傾向を見出しやすくなり、分析や判断の精度が高まります。
データの学習量が業務の効率性や正確性に大きく影響するため、機械学習はAIを構成する重要な技術と位置付けられています。
ビッグデータとの違い
ビッグデータとは人間では全体像の把握が難しいほど、巨大なデータ群を指します。どのレベルのデータからビックデータと判断するのか、明確には定義されていません。
一般的には以下5つの要素を高いレベルで満たしているデータが、ビッグデータとみなされています。
- Volume(量)
- Variety(多様性)
- Velocity(速度あるいは頻度)
- Veracity(正確性)
- Value(価値)
上記の要素を満たしている例には、WebサイトやSNS上のデータ、CRM(顧客管理システム)上に蓄積された顧客情報などが該当します。ビッグデータを活用すると、顧客ニーズや市場の動向をリアルタイムで把握できる点がメリットです。
たとえば、Webサイトでの閲覧履歴やSNSでの投稿などをもとに、ユーザーがどのような情報や商材に興味があるか、把握できます。ビッグデータの分析結果から顧客ニーズを反映した提案につなげられ、成約率やリピート率の向上が期待できるでしょう。
AI開発の流れ
AI開発の流れは大きく以下4つのフェーズに分けられます。
- 構想フェーズ
- PoCフェーズ
- 実装フェーズ
- 運用フェーズ
フェーズごとに取り組む内容を見ていきます。
構想フェーズ
AIによって解決したい課題を明確化し、AI開発の方向性を決めていくフェーズです。構想フェーズで検討しておくべき主な内容を以下に記載しました。
- 開発するAIのモデル
- AIの学習方法
- AI開発に必要なデータ
- AIの活用方法
- AIを活用する分野や領域
- 課題解決の実現性
上記に加えてAI開発にどのくらいの予算が必要か、投資費用を回収できるかといった点も、確認が必要です。多額の費用発生が予想されるため、決裁権をもつ管理職や経営層の一部を含んだプロジェクトチームを作りましょう。
また、AI開発には幅広い分野での専門知識が求められるため、プログラミングや統計学などに精通した人材もチームに加えましょう。不在の場合は外部のセキュリティーパートナーに相談し、開発を進めます。
PoCフェーズ
PoCフェーズは、構想段階で検討したAI開発が技術的に実現できる内容なのか、実際に検証していくプロセスです。
まずは仮のAIモデルを開発する作業から始めます。仮のAIモデルはモックアップと呼ばれ、機能を実装していないサンプル品の位置づけです。
仮のAIモデルにデータを実際に学習させたうえで、質問内容に適切な回答を提示できているか、データ処理の速度は問題ないかなど、動作検証を実施します。
また、回答に誤りが生じた際の対応、AIの回答精度向上に必要なデータ量なども、検証内容を通じて見極めます。
AIは事前に学習したデータと質問内容を照らし合わせ、データ分析の結果や質問への回答文を提示する仕組みです。PoCフェーズでの検証が不十分だと、運用時にユーザーが望んだ回答が得られない可能性が高まるため、何度も検証を繰り返しましょう。
実装フェーズ
想定しているAI開発の内容が技術的に可能かどうかを検証したら、モックアップ(試作品)の内容をベースに、AIモデルを実装するシステム開発に移ります。
実装フェーズでは通常のシステム開発と同様、まずAIモデルのプログラムに関する設計書を作成します。機能の役割や目的、他機能との連携性など、実装予定の機能一つひとつの詳細を記載するため、設計書は時間をかけて丁寧に作成しなければなりません。
設計書が完成したら記載内容にもとづき、AIモデルや機能の実装を進めます。実装が終わったら設計書通りにAIモデルが正しく稼働するか、入念にテストを繰り返します。
テストでは動作検証とともに、エラーやバグが含まれていないか、確認することが重要です。確認が不十分のままAIの運用に踏み切った場合は、導入後に不具合が頻繁に発生し、通常業務への支障や顧客からの信頼低下を招くおそれが生じます。
運用フェーズ
メンテナンスと改善も含め、AIを実装したシステムを運用していくフェーズです。リリース前に大量のデータを学習していても、すべての質問に対して正確な回答ができるとは限りません。
場合によってはユーザーから想定外の質問を投げかけられ、答えられないケースもあるでしょう。回答精度を高めるには、追加学習や自分たちの目的に合わせてカスタマイズするなど、AIのメンテナンスをこまめに行う必要があります。
AI開発に必要な知識と技術
自社でAIを開発するには、以下4点に関する知識や操作スキルの習得、環境整備が必要です。
- プログラミング言語
- 数学と統計学の基礎知識
- ライブラリーとフレームワーク
- 開発環境
また、開発環境はタイプごとに特徴が異なるため、事前に違いを理解しておくことが重要です。
プログラミング言語
複数のプログラミング言語に精通した人材がいないと、自社でAI開発を進めるのは困難です。AIを実装したシステム開発やデータベースとの連携などには、プログラミング言語の知識が求められます。
AI開発ではPythonやSQL、C++など、複数のプログラミング言語を活用します。Pythonは文法が覚えやすく、コードの読み書きがしやすい点が特徴です。画像処理や音声処理、数値計算など、AI関連のライブラリーも多く、AI開発や機械学習によく使用されています。
一方、SQLとはデータの検索や抽出、格納など、データベースの構築・操作で活用する言語です。AIの事前学習や追加学習を行う際に不可欠といえます。
また、C++は汎用性と処理能力に優れたプログラミング言語です。AIが大量のデータをリアルタイムで正確に処理するために必要な言語です。
数学と統計学の基礎知識
自社でAIを開発する場合は、数学や統計学の基礎を理解しておくことが大切です。
AIは大量のデータをもとに学習して動くため、データの平均やバラツキ、特徴の傾向などを正しく読み取る力が必要になります。こうした考え方を支えているのが、確率や正規分布、仮説検定といった統計の知識です。
また、AIの学習には線形回帰やロジスティック回帰など、統計をもとにしたアルゴリズムが多く使われています。開発担当者が統計の基礎を理解していれば、どのモデルを使うべきか判断しやすくなり、精度を高めるための調整もしやすくなります。
ライブラリーとフレームワーク
AI開発では、ライブラリーやフレームワークを活用すると、実装作業を効率的に進められます。ライブラリーは、数値計算・画像処理・データ操作など、開発で利用頻度の高い機能がまとめられたコードの集合です。必要な処理を一から作成する手間を省くことができます。
一方、フレームワークはアプリケーション開発に必要な機能があらかじめ組み込まれた構造です。データベースとの連携やセキュリティー対策などが統合されており、一定のルールに沿ってコーディングすることで、品質を保ちながら開発を進められます。
なお、PythonではTensorFlowやPyTorch、Web開発ではDjangoなど、言語ごとに利用されるライブラリー・フレームワークが異なります。使用する言語に応じて、種類や特徴を把握しておくことが重要です。
開発環境
開発環境とはデータ収集や事前学習、AIモデルの開発など、AI開発に必要な作業全般を行う場所です。AI開発の開発環境を構築する方法は、オンプレミス型とクラウド型、ローコード型の3種類に分けられます。
タイプ別の概要を以下の表にまとめました。
| タイプ | オンプレミス型 | クラウド型 | ローコード型 |
|---|---|---|---|
| 概要 | ・ハードウェアを自社で用意し、AI開発を進める | ・クラウドサービスを使用し、開発環境を構築する | ・最小限のコーディングで、開発環境を構築する |
| メリット | ・セキュリティーレベルが高い ・カスタマイズ性が高い |
・初期費用が安い ・環境構築をせずに済む ・導入期間が短い ・拡張性が高い |
・初期費用が安い ・専門知識がなくても構築できる ・導入期間が短い |
| デメリット | ・初期費用が高い ・開発環境の構築に時間がかかる ・拡張性が低い |
・大規模開発には向いていない ・カスタマイズ性が低い ・セキュリティーや機能性はサービスによって変動する |
・カスタマイズ性が低い ・高度な処理にはプログラミングの知識が必要になる |
| 使用するサービス例 | - | ・AWS ・Azure ・GCP |
・Dify ・Jinbaflow ・Create |
どのタイプを選択するかは、AIの開発規模や予算、専門知識をもつ人材の有無などと照らし合わせて、判断しましょう。
AI開発の方法
AI開発の方法には以下3つの選択肢があげられます。
- AI SaaSを活用
- AI開発に強いシステム開発会社に依頼
- AIを一から開発(フルスクラッチ開発)
開発費用や手間を抑えるには、AI SaaSを活用するのがおすすめです。ChatGPTやGeminiなど、利用したいサービスを選択したうえで、サイト上で必要事項の入力と料金プランを選択すれば、すぐに運用を始められます。
AI SaaSを活用
AI SaaSとはインターネット経由で、生成AIや機械学習機能を搭載したソフトウェアを利用できるサービスです。AI SaaSにはChatGPTやGemini、Copilotなどが該当し、AIに作業してほしい内容を文章で伝えるだけで作業の自動化が可能です。
すでにAI SaaSを導入している企業では、売上分析や報告書の作成、顧客からの問い合わせ対応の自動化など、さまざまな場面で利用されています。
AI SaaSを利用するメリットは、自社でAI開発を進めるよりも開発費用と開発期間を大幅に削減できる点です。サービスサイト上で必要事項の入力と料金プランを選択するだけで、利用を始められます。開発環境を構築する必要はありません。
また、通常のSaasと同じくメンテナンスやアップデートなどは、ベンダーへ任せられるため、運用負担を軽減できます。
AI開発に強いシステム開発会社に依頼
AI開発を得意とするシステム開発会社に依頼するメリットは、完成度の高いAI開発が望める点です。AI開発に関する豊富な知識や経験を兼ね備えた人材に作業を任せられるため、自社の要望が反映された仕上がりが期待できます。
また、自社でAIモデルの開発や動作検証などを行う必要がなくなり、従業員が担当業務に集中して取り組める環境を整えられます。AIの開発環境を構築せずに済むため、手間と費用を大幅に削減できる点も魅力です。
システム開発会社を選定する際は、3~5社ほど候補となる企業をあげておき、見積と提案内容を比較しながら絞り込みをしましょう。
AIを一から開発(フルスクラッチ開発)
AIを一から開発する場合、AIに精通したエンジニアやデータサイエンティストなど、AI開発に必要な人材の育成または採用が必要です。専門知識をもつ人材を確保できてはじめて、開発の構想~運用までを自社で手がけられます。
自社でAIを一から開発するメリットは、開発を通じてAIや機械学習への理解を深められる点です。AIモデルの開発や事前学習に使用するデータ収集、開発環境の構築など、開発を通じて得られたノウハウは自社の資産となります。
ただし、AIを一から開発する場合は資金や人材など、多額のリソースが必要になります。
AI開発の注意点
AI開発を進める際は以下4点に注意が必要です。
- 回答内容の精度はデータの量と質に左右される
- 強固なセキュリティー対策が求められる
- 法的リスクへの対応が求められる
- フルスクラッチ開発はハードルが高い
学習するデータ量が少ないと、データ分析で偏った結果が出るだけでなく、ハルシネーションを招くおそれが高まります。
回答内容の精度はデータの量と質に左右される
AIのデータ分析や回答の精度は、質の高いデータを多く学習するほど高まります。ただし、すべての質問に対して常に正しい回答を提示できるわけではありません。
また、「データの量が足りない」「古いデータを参照している」「質問内容がわかりにくい」といった事態が重なると、ハルシネーションを招く可能性が高まります。
ハルシネーションとは現実には存在しない内容にもかかわらず、AIが事実ではない情報や回答をもっともらしく提示する現象です。
仮にAIの回答にハルシネーションが混じっていたにもかかわらず、内容を確認せずにデータ分析へ使用すると、偏った結果が出る可能性が高まります。文書やメールに使用した場合は顧客に間違った情報を伝えることになり、自社の信頼を失いかねません。
ハルシネーションを防ぐため、AIが提示した回答内容や情報は、最終的に人間が確認することを徹底しましょう。
強固なセキュリティー対策が求められる
AIに学習させるデータには顧客情報や販売実績など、機密情報が多数含まれます。サイバー攻撃や内部不正が原因で機密情報が流出しないよう、アクセス制限やログデータの取得など、強固なセキュリティー対策を講じなければなりません。
仮にセキュリティー対策の不備が原因で顧客情報が流出した場合、顧客からの信頼を失い、今後の取引に悪影響が及ぶでしょう。場合によっては損害賠償を請求され、多額の損失を被ります。
システム開発会社にAI開発を依頼する際は情報漏えいを防ぐため、どのようなセキュリティー対策を取っているか、確認が必要です。
法的リスクへの対応が求められる
自社内にデータが少ない場合、外部のデータベースやWebサイト、SNSなどからデータを収集する場合があります。データの内容によっては、著作権や肖像権侵害に該当するおそれがあるため、必ず情報源の確認が必要です。
情報源や著作権に関する情報を確認せず、収集したデータを使って文章や画像などを制作した場合、著作権者から訴えられる可能性があります。
外部の情報源を利用する場合は、利用制限や著作権の範囲などを確認し、必要に応じて利用許諾を取得しましょう。
フルスクラッチ開発はハードルが高い
AI開発を一から行うフルスクラッチ開発は、非常にハードルが高いといえます。まずAIの開発には多額の費用が必要です。AIの開発にはライブラリー・フレームワークの用意、開発環境の構築など、開発工程を自社ですべて対応できる環境を整えなければなりません。
AIエンジニアやデータサイエンティストが不在の場合は、人材育成や新たに採用する必要があります。ただし、どちらを選んでもすぐに開発へ移れる可能性は低いといえます。
また、AIモデルの開発には大量のデータを集めなければなりません。仮に十分なデータが集まったとしても、質問内容に応じた回答を提示できるまで、テストやチューニングを繰り返す必要があります。
AIのフルスクラッチ開発は多くのリソースが必要になるため、資金力や人材が豊富な大企業向けの選択肢といえるでしょう。
まとめ:AI開発前に必要な知識や技術を理解しておこう
自社でAIを開発するには、数学や統計学、プログラミングの知識など、幅広い専門知識をもつ人材が必要です。AIモデルの開発や動作検証など、AI開発に必要な作業を行う開発環境も用意しなければなりません。
ただし、AIやデータに精通した人材がおらず、開発環境の構築に不安を抱えるケースも考えられます。自社だけでAI開発が難しい場合は、外部の開発会社へ相談するのがおすすめです。
豊富な知識や経験を兼ね備えた人材が多数在籍しており、自社の要望を踏まえたAI開発が期待できます。
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