2025.10.30
Webフィルタリングとは?仕組みや導入時の注意点も解説
インターネットは業務や学習に欠かせない一方で、不適切なサイト閲覧や情報漏えいなどのリスクも潜んでいます。
このような問題を防ぐ手段として注目されているのが「Webフィルタリング」です。Webフィルタリングを導入すれば、危険なサイトへのアクセスを自動的に制限でき、企業や学校、家庭などあらゆる場面で安全なインターネット環境を維持できます。
本記事では、Webフィルタリングの仕組みや機能をわかりやすく解説し、導入時の注意点についても紹介します。
Webフィルタリングとは
Webフィルタリングとは、インターネット上の特定のWebサイトやコンテンツへのアクセスを制限する仕組みです。
事前に設定したルールにもとづいて、危険性の高いサイトや業務に不要なサイトへのアクセスを自動的にブロックします。企業では従業員が悪意のあるサイトにアクセスして情報漏えいやマルウェア感染を防ぐために導入されます。
フィルタリングの判定基準には、ブラックリストやホワイトリスト、カテゴリー分類などがあり、環境に応じた柔軟な設定が可能です。Webフィルタリングを導入することで、セキュリティーの向上だけでなくWeb利用状況の可視化や業務効率の改善にもつながります。
Webフィルタリングは、安全なインターネット環境を維持するために欠かせない仕組みといえます。
Webフィルタリングが必要な理由
Webフィルタリングが求められる背景には、インターネット利用にともなう以下のようなリスクがあります。
- マルウェア(コンピューターを標的とした悪意あるソフトウェアの総称)感染や標的型攻撃による情報漏えい
- 従業員による内部不正や機密情報の持ち出し
- 業務に無関係なサイト閲覧による生産性の低下
たとえば、従業員がフィッシングサイトにアクセスして認証情報を入力してしまうと、企業の重要データが外部に流出する危険性があります。また、私的な動画サイトやSNSの閲覧が常態化すると、本来の業務時間が削られ組織全体の効率が落ちます。
こうしたリスクを未然に防ぐために、技術的な対策としてWebフィルタリングを導入してアクセス制限をかけることで、セキュリティー事故の発生を抑え、従業員が安心して業務に集中できる環境の構築が可能です。
WebフィルタリングとURLフィルタリングの違い
WebフィルタリングとURLフィルタリングは似た言葉ですが、制御の範囲に違いがあります。
URLフィルタリングは特定のURL単位でアクセスを制限する方式であり、Webフィルタリングはより広い概念として複数の判定基準を組み合わせてコンテンツ全体を制御します。
たとえば、URLフィルタリングでは「example.com/危険ページ」という個別のアドレスをブロックしますが、Webフィルタリングではドメイン全体やコンテンツのカテゴリー、ファイルの種類なども判定対象に含められるのが特徴です。
つまり、URLフィルタリングはWebフィルタリングの手法の1つという位置づけです。
実際の運用では、URLフィルタリングだけでは新たに作られる危険サイトに対応しきれないため、Webフィルタリングの導入が推奨されます。
Webフィルタリングの3つの機能
Webフィルタリングには大きく分けて以下の3つの機能があり、それぞれが異なるセキュリティー課題に対応しています。
- 内部不正・情報漏えい対策
- 標的型攻撃対策
- Web利用状況の把握
これらの機能を組み合わせることで、企業は包括的なセキュリティー対策を実現できます。
内部不正・情報漏えい対策
内部不正や情報漏えいを防ぐために、Webフィルタリングは従業員によるファイル共有サイトやクラウドストレージへのアクセスを制限します。
具体的には、業務に不要な外部サービスをカテゴリー単位でブロックし、許可されたツールだけを利用可能にする設定が一般的です。
また、特定のキーワードを含むファイルの送信を検知してアラートを出す機能もあり、意図しない情報流出を早期に発見できます。
このような対策により、悪意のある従業員による情報持ち出しだけでなく、人為的なミスによる情報漏えいも防止できます。
標的型攻撃対策
標的型攻撃とは、特定の企業や組織を狙って送られるサイバー攻撃です。Webフィルタリングは、攻撃の入り口となる悪意のあるWebサイトへのアクセスを事前にブロックします。
攻撃者は、メールに記載されたリンクをクリックさせてマルウェアを送り込む手口を使いますが、フィルタリングが有効であればそのリンク先が危険と判定された時点でアクセスが遮断されます。
また、既知の攻撃サイトだけでなく、新しく作られたフィッシングサイトもレピュテーション情報(Webサイトの信頼度を評価する仕組み)をもとに検知可能です。
Web利用状況の把握
Webフィルタリングには、従業員のインターネット利用状況の記録・分析も可能です。誰がいつどのサイトにアクセスしたか、どのカテゴリーの閲覧が多いかといった情報をレポート形式で確認できます。
Web利用状況を把握することにより、業務時間中の私的利用が多い部署の特定や、特定の従業員が危険なサイトにアクセスしている兆候の早期発見が可能です。
また、ブロックされたアクセス試行の記録を確認すれば、内部不正の予兆や標的型攻撃の痕跡を見つけられます。
さらに、利用状況のデータは社内のITリテラシー教育にも有効です。実際のアクセスログをもとに研修内容を改善し、従業員のセキュリティー意識を高める取り組みにもつなげられます。
Webフィルタリングの4つの方式
Webフィルタリングには、アクセス制限の判定基準によって以下の4つの代表的な方式があります。
- ブラックリスト方式
- ホワイトリスト方式
- カテゴリーフィルタリング方式
- レイティング方式
どの方式を選ぶかによって、セキュリティーの強度や運用の手間、業務への影響が変わってきます。
ブラックリスト方式
ブラックリスト方式とは、あらかじめ危険と判定されたWebサイトをリスト化し、該当するサイトへのアクセスを遮断する方式です。
この方式の利点は、リストに載っていないサイトには自由にアクセスできるため、業務への影響が最小限に抑えられることです。従業員が新しいツールを試したい場合でも、過度な制限がかかりません。
ただし、毎日のように新しい危険サイトが作られるため、リスト更新が追いつかない課題があります。そのため、ブラックリスト方式は、他の方式と組み合わせて使うことが推奨されます。
ホワイトリスト方式
ホワイトリスト方式とは、安全と確認されたWebサイトだけをリスト化し、それ以外のすべてのサイトへのアクセスを遮断する方式です。
この方式の利点は、セキュリティーレベルが高いことです。未知の脅威や新しく作られた危険サイトからの保護にも有効です。
一方で、業務で必要なサイトが増えるたびにリストへの追加申請が必要になり、運用の手間が大きくなります。そのため、従業員が多様なWebサイトを利用する環境には向いていません。ホワイトリスト方式は、機密情報を扱う部署での活用に適しています。
カテゴリーフィルタリング方式
カテゴリーフィルタリング方式とは、WebサイトをSNS・ショッピング・ニュース・アダルトといった内容ごとにカテゴリー分けし、カテゴリー単位でアクセスの許可・遮断を設定する方式です。
個別のサイトではなく、サイトのカテゴリーに応じて一括で制御できます。
カテゴリー判定は専門ベンダーのデータベースを利用するため、管理者が手作業でリストを更新する必要がありません。そのため、企業での導入に適した方式です。
レイティング方式
レイティング方式とは、Webサイトの危険度を段階的に評価し、一定の基準を超えたサイトへのアクセスを制限する方式です。「安全」「注意」「危険」のようにレベル分けされたスコアをもとに、セキュリティーポリシーに合わせて遮断ラインを設定します。
レイティング方式の特徴は、サイトの健全性を多角的に判断できる点です。運営歴やSSLの有無、マルウェア検出履歴などを総合して危険度を算出します。
また、完全に遮断せず、警告を表示したうえで自己判断に任せる柔軟な運用もできるため、従業員のセキュリティー意識向上にもつながります。
Webフィルタリングの4つの種類
Webフィルタリング製品は、導入形態によって以下の3つの種類に分類されます。
- プロキシアプライアンス型
- UTM型
- クラウド型
企業規模やネットワーク環境、コストに応じて適切な選択が求められます。
プロキシアプライアンス型
プロキシアプライアンス型とは、Webフィルタリング機能を持つ専用機器を社内ネットワークに設置し、すべてのインターネット通信をその機器経由で行う形態です。従業員の通信は必ずこの機器を通過するため、集中的な監視と制御が可能になります。
この形態の利点は、高速かつ安定した処理性能を発揮できることです。専用ハードウェアとして設計されているため、大量のアクセスが集中しても遅延が起きにくく、大規模組織でも円滑に運用できます。
ただし、初期導入時に機器の購入費用がかかり、オフィス外の端末には保護がおよびません。リモートワークが多い企業では別途対策の組み合わせが必要です。
UTM型
UTM型とは、「統合脅威管理」と呼ばれる、Webフィルタリングだけでなくファイアウォールやマルウェア対策、侵入検知などの複数のセキュリティー機能を1台の機器に統合した形態です。
UTM型の利点は、複数のセキュリティー対策をまとめて導入できるコストパフォーマンスの高さです。1つの管理画面ですべての設定や監視を行えるため、IT専任担当者が少ない中小企業に適しています。
ただし、すべての機能を1台で処理するため、高負荷時には性能が低下する可能性があり、十分な処理能力を持つ機器の選定が求められます。
クラウド型
クラウド型とは、自社で機器やソフトを管理せず、インターネット経由でフィルタリングサービスを利用する形態です。ベンダーが運用するクラウド上のサーバーで通信内容を判定し、危険なサイトへのアクセスを遮断します。
クラウド型の利点は、導入の手軽さと拡張性の高さです。専用機器の購入や設置工事が不要で、契約後すぐに利用を開始できます。端末台数の増減に柔軟に対応でき、最新の脅威情報も自動更新されるため管理者の負担軽減が可能です。
ただし、インターネット接続が前提のため、通信障害が発生した際にはサービスに影響が及ぶ可能性があります。あらかじめベンダーの障害対応体制を確認しておくことが重要です。
Webフィルタリングのメリット
Webフィルタリングを導入すると、企業にとっては以下の3つのメリットが得られます。
- セキュリティーリスクを低減
- 業務効率の改善
- 組織全体のコンプライアンス強化
セキュリティー面では、マルウェア配布サイトやフィッシングサイトへのアクセスを自動的にブロックすることで、情報漏えいやマルウェア感染を未然に防げます。
また、業務に無関係な動画サイトやSNSへのアクセスを制限することで、従業員が本来の仕事に集中できる環境を整えられます。
さらに、Web利用状況を記録・可視化できるため、不審な通信や内部不正の兆候の早期発見も可能です。セキュリティーインシデント発生時の原因究明や再発防止策の策定に有効です。
加えて、個人情報保護法やサイバーセキュリティー経営ガイドラインといった法令・ガイドラインへの対応を示す証拠としても活用でき、企業の社会的信頼性を高められます。
このように、Webフィルタリングは単なるアクセス制限ツールではなく、健全な業務環境を維持するための包括的なソリューションとして重要な役割を果たします。
Webフィルタリングのデメリット
Webフィルタリングには多くのメリットがある一方で、導入・運用における以下のデメリットにも注意が必要です。
- 誤判定によるアクセス制限
- 従業員の不満や反発
- 導入・運用コストの発生
もっとも頻繁に発生するのは、業務に必要なサイトが誤ってブロックされるケースです。たとえば、技術情報を調べるために海外のフォーラムにアクセスしようとしたら「掲示板サイト」として遮断され、業務が滞る可能性があります。
また、過度に厳しい制限をかけると、従業員が「監視されている」と感じてモチベーションが下がる恐れもあります。
加えて、フィルタリング製品の導入には初期費用やライセンス費用がかかり、定期的なメンテナンスも必要です。これらのデメリットを最小化するには、適切な運用ルールの策定と定期的な設定見直しが欠かせません。
Webフィルタリング導入時の注意点
Webフィルタリングを効果的に運用するためには、導入時に以下の2つの注意点を押さえることが重要です。注意点を無視して導入すると、セキュリティー効果が薄れたり、現場から反発を受けたりする恐れがあります。
- 自社業務に適した範囲に制限する
- 例外時の運用規定を策定する
注意点に留意して進めることで、セキュリティーと使いやすさのバランスを取った運用を実現できます。
自社業務に適した範囲に制限する
Webフィルタリングの制限範囲は、自社の業務内容や職種に応じて柔軟に設定する必要があります。すべての従業員に一律の制限をかけると、特定の部署で業務に支障が出る可能性があるためです。
たとえば、マーケティング部門ではSNSやニュースサイトへのアクセスが業務に不可欠ですが、製造部門では不要なケースもあります。
部署ごとに異なるフィルタリングポリシーを適用することで、セキュリティーを保ちながら業務効率を維持できます。
そのため、導入前には各部署の業務フローをヒアリングし、どのカテゴリーのサイトが必要かのヒアリングが必要です。そのうえで、時間帯別の設定やホワイトリストの併用を行うと、現場の納得感を得やすくなります。
例外時の運用規定を策定する
Webフィルタリングを導入すると、業務上どうしても必要なサイトがブロックされる可能性があります。こうした例外対応のルールを事前に明確にしておかないと、現場の混乱や業務停滞を招きます。
業務停滞を引き起こさないためにも、「誰に申請すればよいか」「承認までにどれくらい時間がかかるか」「緊急時の対応はどうするか」といった運用フローを整備しておくことが重要です。
具体的には、例外申請用のフォームを用意し、申請理由・アクセス先URL・利用期間を明記させるプロセスの作成が挙げられます。運用規定を整備しておくことで、セキュリティーを維持しながら柔軟な業務遂行を両立できます。
まとめ
Webフィルタリングは、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクを軽減し、安全なインターネット利用を支える仕組みです。導入すれば、自社ネットワークの安全性だけでなく、従業員の生産性や管理の効率化にもつながります。
一方で、制限のかけ方を誤ると業務の妨げになる場合もあるため、運用設計と教育体制が欠かせません。目的と環境を明確にしたうえで、適切な方式・種類を選び、継続的にルールを見直すことで安心してインターネットを活用できる環境を構築できます。
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