生産管理とは?目的や課題、効率化する方法をわかりやすく解説

2023.07.20

生産管理とは? 目的や課題、効率化する方法をわかりやすく解説

生産管理とは? 目的や課題、効率化する方法をわかりやすく解説

生産管理は一つの製品を製造するために必要な管理全般を請け負う業務です。必要な資材の調達や製造現場の管理、納品予定などを管理して取引先に納めるまでをきっちりまとめるため、重要な業務内容として認識されています。

生産管理について把握することは、製造工程の全てを把握することに繋がると言っても過言ではないほど重要です。製品を製造から納品まで行う企業は必ず押さえておくべき内容と言えるでしょう。

以下では、生産管理の基本的な内容と効率化する方法について解説します。現場運営を滞りなく円滑に進めるためにも、しっかりと把握しておきましょう。

生産管理とは、現状の製品在庫や稼働状況を把握しつつ、受注から納品までの業務全般を管理することを指します。基本的に作業員レベルまで細かく指示をすることはありませんが、生産がストップする可能性があったり、大きな損失を出す可能性があったりする場合には、指示や調整をして円滑に進める役割を果たしたりもします。

また、現場に特化して業務を行うイメージもある生産管理ですが、生産管理の基本的な役割は生産を円滑に進めることであるため、必ずしも現場に目を向けなければいけないものではありません。現場に干渉せずとも、部門間で協力を促して生産が滞りなく進めば、生産管理の役割はそれで果たしていると言えます。

ただし、生産管理の部門は製造工程において、「どの部分が重要なのか?」「どの部分は気を付けておくべきなのか?」など全体の細かい部分まで把握しておく必要があるため、干渉はしなくても業務全般を把握しておくことが求められるのです。

生産管理の目的

生産管理は受注から納品までの工程を円滑に進めることが役割としてありますが、それらに取り組む根本には「QCDの最適化」が目的としてあります。QCDとは、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の頭文字をとった用語で、生産管理ではこれら3つの要素を維持・向上させることが目的とされています。

ちなみに、QCDの最適化は主に以下で示すような取り組みのことを指します。

【QCDの最適化】

  • 品質(Quality):品質の向上を目的とします。製品の品質だけでなく、作業の品質などにも注目して、高品質な製品を安定して供給できる現場づくりを目指します。
  • コスト(Cost):コストは最低限の予算で最大限の利益を創出することを目的とします。日々変動する材料費や人件費を踏まえて、その都度コストに見合った生産ができるように調整・交渉を進めていくのが生産管理の役割です。
  • 納期(Delivery):取引先から発注された納期を守ることを目的とします。資材の発注から加工にかかる工期など、全てを把握したうえで納期を遵守できるような管理をするのが役割です。場合によっては、納期交渉なども生産管理の業務に含まれます。

生産管理と工程管理、製造管理との違い

生産管理と勘違いされやすい業務で、工程管理と製造管理というものがあります。それぞれの違いをしっかりと把握しておかないと、業務に関与する範囲が曖昧になりやすくなるため、ここでそれぞれの違いを把握して明確な業務分担をできるようにしておきましょう。

【生産管理・工程管理・製造管理の違い】

  • 製造管理:製造現場における、工程の管理業務を行う。その他の部分、すなわち資材調達などは管理業務に含まれない。製造管理は生産管理の一部として認識されています。
  • 工程管理:生産活動の流れや製造工程を管理する業務です。納期を守るために行なう業務で、外注などを利用している場合は、そこの納期管理も含まれます。工程管理も生産管理の一部として認識されています。
  • 生産管理:生産ラインに関わる全ての管理が業務内容となっています。そのため、製造管理・工程管理も生産管理の一部であり、全てを管理することが求められます。

結論として、それぞれ請け負う業務の範囲に違いがあります。製造管理・工程管理は決められた範囲内の一管理でしかありませんが、生産管理はそれらも含めてすべて請け負います。

ここまで、生産管理・工程管理・製造管理の違いで、請け負う業務の範囲が違うといった内容を解説しました。生産管理は、請け負う業務の範囲が広いため、さまざまな管理業務が細かく分けられています。以下では、それぞれの管理業務の業務内容について解説するので、具体的にイメージできるようにしてみてください。

【生産管理における主な業務内容】

業務 詳細
受注管理 顧客からの受注情報を管理します。製品情報や数量、納期といった生産計画を行う上で必要な情報を整理して、現場に展開するのが主な業務です。
生産計画 受注した内容に沿って、納期までの生産計画を行います。在庫品や仕掛品の把握も行なって、計画通りに出荷できるようスケジュール調整をするのが主な業務です。
調達・購買 部品や材料などの調達を行います。生産計画や納期を考慮し、次工程に影響が出ない最適なタイミングで手配を行うのが主な業務です。
工程管理 生産計画で立てた計画に沿って、製造現場の進捗や工程納期を把握します。ただ把握するだけではなく、各工程の進捗や設備の稼働状況などを随時管理することで、納期を守れるように管理するのが主な業務です。
品質管理 不良品等が納品先へ流出しないように管理します。各工程が決められた手順で行われているか、検査工程で見落としが発生していないか、不良率は高くなっていないかなどを把握して、安定した品質を供給することに努めるのが主な業務です。
在庫管理 現状の在庫状況を管理します。業種によって管理方法はさまざまで、注文に対して丁度の製造を行う場合もあれば、1ロット余分に所持するケースもあり、取引先や自社の業務形態に合わせて適切な在庫管理を行うのが主な業務です。
原価管理 製品の製造に必要な材料費や加工費などのコストを把握・管理します。見積もり時と比べて、仕入れ材料などの単価が変わっていないかなどを把握し、利益を最大化するための対策立案を行うのが主な業務です。

生産管理は全体を管理する業務であるが故に、対象範囲も広いことから抱える課題も多くなりがちです。企業の規模や体制によって抱える課題はさまざまですが、以下では特に発生しがちな課題をご紹介していきます。

【生産管理が抱える課題】

  • 現状把握ができていない
  • 部門間の連携ができていない
  • 人材不足

幅広く管理を行うが故に、全体の把握や部門間の連携の難しさや人材の確保といった部分で課題が発生しやすいです。これらの課題を解決できないと、一部に負担が集中してしまったり、円滑な製造ができなかったりといった事態が発生する可能性が高まるでしょう。

現状把握ができていない

生産管理では全体の状況を正確に把握することが重要です。それができないと、生産数や生産が完了するまでの日程などを正確に算出できなくなり、曖昧な製造工程を作ることに繋がります。長年、生産管理の業務に携わっており、社内の状況やルーティンといったものがすべて把握できたうえで管理しているケースでは問題ありませんが、生産管理業務を引き継いだりした場合にはそうはいかないでしょう。

また、現状把握が正確にできていないと、納期遅れを招いたり、急ピッチな作業となって品質の低下を招いたりする可能性もゼロではありません。このようなリスクを理解したうえで現状を把握しておくことが大切です。

部門間の連携ができていない

生産管理は、各部門の協力無くしては実現しません。購買部や品質管理部などさまざまな部門と連携していくことで健全に運営されていくため、必須といえます。もし、部門間の連携が取れていなければ、急な納期調整などが必要になる可能性も否めないでしょう。

また、部門間の連携が取れていないと各部門に従事する担当者から不満の声が上がってくることも考えられます。円滑な現場運営を実現するためにも、生産管理の担当者が、各部門の意見などを汲み取る調整役としての役割を果たしましょう。

人材不足

生産管理は幅広く業務に携わることが求められるため、企業の規模に応じて相応の人材が必要となります。しかし、企業内において生産管理は重要なポジションでありながらも、製造現場などに比べると人材が割り振られにくい傾向があり、慢性的に人材が不足しがちな企業も少なくありません。

人材が不足すると管理が十分に行き渡らなくなり、部門間の連携が円滑に進まない可能性が高まったり、納期を遵守した製造計画が立てられなくなったりするでしょう。生産管理を円滑に進めるためにも、最低限必要な人員数の算出を定期的に行ない、業務や受注の規模に応じた人数把握を欠かさないことが大切です。

生産管理を効率化することができれば、品質が安定した製品を確実な納期で取引先に提供することができるでしょう。また、取引先に対するメリットだけでなく、現場の負担が軽減するといった対内的なメリットも見込めます。効率化を進めることは、前述の課題の改善にも繋がるので、しっかりと把握しておきましょう。

【生産管理を効率化する方法】

  • 進捗状況を可視化する
  • 業務を標準化する
  • 部門間での連携を強化する
  • 生産管理システムを導入する

進捗状況を可視化する

進捗状況とは、資材の発注状況や製品の製造状況まですべての進捗状況のことを指します。進捗状況を可視化することで、製造管理に携わる部分の全てを把握することが容易となるため、管理効率がアップするでしょう。

具体的には、部門ごとの進捗状況を可視化したデータを定期的に生産管理の方へ提出させたり、生産管理システムを導入して可視化したりする方法が挙げられます。システムを導入することが最も簡単な方法ではありますが、コスト的にも負担が大きくなりやすいため、規模的に可能であればExcelで一元管理するのも一つの方法です。

業務を標準化する

業務の標準化とは、生産管理に関わる各部門での管理方法を統一することなどを指します。そうすることで生産管理の業務内容も統一されるため、業務を効率化させることが可能です。

標準化するには基本的にマニュアルの作成が効果的といえます。マニュアルを作成すれば属人化を防げるため、担当者を変更することになっても問題なく管理業務の運営が遂行できるでしょう。また、マニュアルを作成するのであれば、業務フローの作成も並行して行えば、業務の可視化にも繋がるため非常に効果的といえます。

部門間での連携を強化する

生産管理で抱える課題でもあったように、部門間の連携無くして生産管理の効率化は図れません。情報共有が不十分で、部門間の連携に支障をきたすと、生産に関わる全ての部門で悪影響を及ぼす可能性もあるため気を付けましょう。

部門間の連携を図る具体的な方法としては、情報共有が容易となるツールを導入したり、定期的な部門間会議を導入したりといった方法が挙げられます。定期的な会議を導入する場合には、会議で報告する書面の書式を統一するなどしておくことで、さらに効率化を図れるでしょう。

生産管理システムを導入する

生産管理システムとは、生産管理におけるQCDや部門間の情報を一元化して業務効率化を図るシステムです。生産管理システムを導入すれば、各部門の連携が容易になるだけでなく、業務の標準化や進捗状況の可視化といったことも実現するでしょう。費用面の負担はありますが、効率的な生産管理を目指すうえでは生産管理システムの導入は必ず検討したい内容の一つといえます。

生産管理とは、現状の製品在庫や稼働状況を把握しつつ、受注から納品までの業務全般を管理することです。生産管理では「QCDの最適化」が目的とされています。QCDの最適化を目指すことで、受注から納品までの工程を円滑に進めていきます。

また、生産管理は、全体を把握して管理をする業務であるにも関わらず、現状を把握しにくかったり、人材が不足しがちだったりと課題が多い傾向にあります。そのため、生産管理を効率化するためには課題を解決しつつ、効率化するための手段を実施していく必要があるでしょう。

当記事では、課題を解決しつつ効率化を図る方法として、生産管理システムの導入をおすすめしています。生産管理システムなら、可視化や効率化が図れるため、課題の解決と並行して生産管理の効率化を図れるでしょう。