5S活動とは?目的や進め方、メリット・デメリットと活用事例も紹介

2022.04.19

5S活動とは?目的や進め方、メリット・デメリットと活用事例も紹介

5S活動とは?目的や進め方、メリット・デメリットと活用事例も紹介

職場環境の改善を目的に、5S活動が推進されています。工場から営業、病院や現場に至るまで幅広く導入されており、効果を発揮している活動です。一方で、5S活動には進め方があります。目標を見誤ると5S活動はうまく効果を発揮しないともいわれているのです。

今回は、5S活動の意味と目的、メリット・デメリットや進め方について詳しく解説します。5S活動を推進し、成功した事例や取り組みも紹介しています。ぜひ参考にしてください。

5S活動とは、5つのSから始まる、職場環境の改善を目的とした活動のことです。厚生労働省が掲載している用語集では「4S」として掲載されていますが、これに「しつけ」を加えて5Sとしたものです。5つのSの意味は、以下のようになっています。

  • 整理
  • 整頓
  • 清掃
  • 清潔
  • 躾(しつけ)

これらはそれぞれが独立しているわけではなく、下図のように階層になっています。つまり、何かひとつができていれば良いわけではなく、段階を踏んで取り組む必要があるのです。

5Sの階層構造

5Sの階層構造

昔は製造業や建築業、病院などを中心に取り入れられていました。特に工場では、5Sの徹底を合言葉に掲げている場合もあります。近年では、製造業や病院だけではなく、さまざまな業種の企業で5S活動が推進されています。

整理

「整理」は、職場に必要なものを残し、不要なものは処分・片付けを行うことを指します。言い換えれば、職場には無駄なものがない状態のことであり、業務効率化が期待できます。

必要なものとそうでないものの線引きを明確にし、企業全体で取り決めたルールを徹底。工場などの現場においては、必要なものの量や保管場所が適切かどうかを検証します。もし、改善するに足るアイデアや必要性が出れば、それに基づいて新たな基準を設けるという意味での整理としても使用されます。

整頓

5Sにおける「整頓」とは、決められた場所に決められたものを、決められた量だけいつでも使用できるようにすることです。オフィスであれば資料や備品が、看護や工場の現場であれば道具や用具が該当します。

特に工場の場合、整頓する場所や置き方には安全性が求められます。整頓をしたにもかかわらず、現場での事故やケガにつながってしまっては意味がありません。また、オフィスでも誰もが資料や備品を取り出せるような工夫とともに、情報流出に配慮した管理体制が求められます。

清掃

「清掃」は、読んで字のごとく、職場環境や身のまわりを常にきれいに維持することを指します。あわせて、必要な道具や用品の保守管理、いわゆるメンテナンスもこれに含まれます。

清掃は、先に触れた整理・整頓がなされて初めてできるものです。清掃をすることで職場全体がきれいになるだけではなく、浮かび上がる問題点を発見しやすくする意味も込められています。事故やケガなどのリスク回避の意味もあり、清掃の習慣化によって得られる効果は計り知れません。

ちなみに、整理・整頓・清掃までをセットにした「3S」と呼ばれる動きもあります。

清潔

清潔とは、整理・整頓・清掃を行った結果、きれいな状態を保てていることです。自身の身なりや服装、身の回りがきれいになった状態でもあります。

ポイントは、常に清潔な状態が維持されていることです。定期的に整理・整頓・清掃をチェックして管理・見直しを行うことで、清潔な状態を維持し続けることができます。企業によってはチェックリストを作成しているところも存在しているようです。

また、そのほかの挨拶や言葉遣い、作業基準の徹底をすることも躾(しつけ)に含まれます。工場などの現場では、さらに踏み込んで、機械の使い方を指導する教育の意味も持ち合わせているのです。

躾(しつけ)

職場をきれいな状態に保てるよう、仕組みづくりや教育・指導を行うことを躾(しつけ)と呼んでいます。職場で働く全員が4Sを意識できるようにするためのもので、仕組みづくりに相当します。

また、そのほかの挨拶や言葉遣い、作業基準の徹底をすることも躾(しつけ)に含まれます。工場などの現場では、さらに踏み込んで、機械の使い方を指導する教育の意味も持ち合わせているのです。

5S活動の目的は、次の3点に集約されます。

  • 業務効率化
    どこに何があるかわかる状態にすることで、タイムロスを削減する。結果的に業務効率化につながる。
  • 職場環境の改善
    きれいな環境を維持することで、ストレスが少なくなる。モチベーションの向上にもつながり、離職率の低下も期待できる。
  • 安全性の確保
    不足の事故を未然に防止できる。特に製造業・建設業で5Sの徹底がなされている理由でもある。

躾(しつけ)まで含まれた理由は、これを個人単位ではなく企業や病院などの職場全体で取り組むためです。ひとりだけが徹底したところで、上記のような目的は達成されません。組織全体で5S活動に取り組むことで初めて、目的達成へとつながるのです。

5S活動では、次のようなメリットを享受できます。目的と共通する箇所もあります。

  • 業務効率化が期待できる
    無駄な時間の削減のほか、業務がスムーズに行える環境が維持されるため生産性も高められる。
  • コスト削減につながる
    業務効率の向上で人員の採用をなくすことができるほか、在庫管理を徹底することで不要な買い物が発生しなくなる。
  • 職場の安全性が良くなる
    常に清潔な状態を心がけることにより、事故の発生率を下げられる。また、その環境の維持にもつながる。
  • 商品・サービスの質が向上する
    ルールの徹底が基本となり、結果的に業務上のエラーやムラの削減につながるため、安定した品質の商品・サービスを提供しやすくなる。
  • チームワークの向上が期待できる
    5Sを徹底することで結束力が強くなる。コミュニケーションの活性化の期待もでき、職場環境の改善にも期待できる。

このほかにも作業に集中できる時間が増える、ストレスが減るなどの効果も期待できます。5Sに徹底によるメリットは、数え上げればきりがありません。

5S活動は、導入したからといって必ず効果が出るものではありません。冒頭でも触れたとおり、5S活動は階層構造になっており、正しく進めなければ何の効果も得られないでしょう。それどころか、かえって非効率になり、無駄な作業やストレスの原因になってしまう可能性もはらんでいます。

5S活動を行うのであれば、まずは正しい進め方を理解するところから始めましょう。整理・整頓・清掃の3Sからはじめ、清潔を加えた4Sへ進めて、最終的に躾(しつけ)を含む5Sまでの手順を踏んでいくことが重要です。時間はかかりますが、導入したからといってすぐに効果が出るものではないことを事前に理解しておかなければなりません。

5S活動を開始するにあたって、具体的な進め方を決めておく必要があります。いきなり5S活動を始めるといったところで、うまくいく可能性は低いでしょう。目的・目標と実施計画を練って、5S活動がスムーズに始まるようにしましょう。

目的の明確化と認識共有

まず必要なことは、目的の明確化と認識共有です。何のために5S活動を行うのか、最終目標は何かを検討します。同時に5S活動を行う意味を全社で共有し、認識を統一します。5S活動を無駄な活動に終わらせず、正しく進めるために必要な工程です

業務の可視化

現在の業務を可視化しましょう。職場を整理・整頓するには、何が必要で何が不必要なのかを明確にしなければなりません。そのために業務の可視化は必須であり、整理・整頓の正しい判断材料となります。5S活動の開始にともなって、現在の業務フローやプロセスを再構築するのではありません。今あるものを可視化して5S活動を実施した結果見えてくる「職場の理想像」を思い描くことが重要です。

5S活動計画の策定・実施

職場の理想像が思い描けたのちに、活動計画の策定と実施に移ります。必要であれば新たにルールを策定する必要があるでしょう。

5S活動実施後は、定期的な振り返りと改善を繰り返しましょう。5S活動の担当をつけ、レポートなどを作成し、現状を共有できるようにすると良いでしょう。実施して終了とせず、検証と改善を繰り返すことが、5S活動を運用するうえでもっとも重要なポイントと言っても過言ではありません。

5S活動を取り入れた事例は、さまざまな業種で存在します。ここでは製造業、サービス業、医療の領域において5S活動がどのような結果を生んだのかを簡単に紹介します。

  • 製造業における5S活動の事例
    製造ラインの業務改善を目的に開始。清潔のフェーズを「誰が見てもどこに何があるかわかるようにし、かつ簡単に取り出せる」ようにしたことで、工員の動きの無駄まで改善することに成功する。
  • サービス業における5S活動の事例
    抱えていた在庫を思い切って処分することから始まり、その結果生まれたスペースを活用して整理・整頓ができるようになった事例。職場の快適さ向上にも貢献している。
  • 医療の現場における5S活動の事例
    組織活性化や人材育成を目的に導入。上半期・下半期に院内の結果をまとめたレポートを発表するとともに、活動報告会で共有を行い、組織の活性化につなげる。

5S活動は、業務改善に多額の費用がかからず、誰でもできるという特徴があります。しかし、誰でもできるからこそ5S活動を通じた目標設定や共有は必要不可欠です。

トップダウンであったり、従業員の認識統一ができていなかったりすれば、せっかくの活動も水の泡になってしまうかもしれません。ただ導入・推進するだけではなく、なぜ導入するのか、その目的は何なのかを全員で共有しておく必要があるでしょう。