なぜなぜ分析とは?問題の再発を防いで企業の質・評価を高めるポイントを解説

2022.01.20

なぜなぜ分析とは?問題の再発を防いで企業の質・評価を高める

なぜなぜ分析とは?問題の再発を防いで企業の質・評価を高める

『なぜなぜ分析』は製造業において、問題の再発を防ぐための検証方法として最も効率的な方法ですが、原因の特定が適切なものでないと効果的な対策方法を得ることができません。このコラムでは分析シートの作り方、『なぜなぜ分析』のやり方・手順、意識するべき4つのポイントを解説します。

製造業において不良品が市場に流出することは企業に大きな損害を与えることに繋がります。ましてや、それが再発するといった事になると、企業の信頼低下にも影響するため何としても再発は防がなくてはなりません。

そこで、重要となってくる検証作業が『なぜなぜ分析』です。これを行うことによって不良品の発生原因・流出原因の根本的な部分を改善することができ、企業の生産体制を盤石なものへと向上させていくことができます。

企業の不良発生・流出の再発が課題となっている企業は、当記事で『なぜなぜ分析』とは何かを知り、実際に導入するかどうかを検討してみてください。

『なぜなぜ分析』とは、発生した問題の根本的な原因を探るために、『なぜ?』を5回(状況に応じて複数回)繰り返して分析を行う手法のことを言います。

『なぜなぜ分析』は『カイゼン』と呼ばれる現場の効率や安全性の確保を見直す活動の1つで、現場の作業者が中心となって意見を出し合うことで『なぜ?』の原因を追究します。そうすることで、中小企業でありがちな管理者の考えのみが反映された対策書が作られるようなことは無くなり、多角的に問題の本質を捉えた対策書が作られるようになります。

また、『なぜ?』を繰り返すことで、それまで解決方法が見出せなかった問題に対しても、新たな解決方法が見つけ出せる可能性が高くなります。

『なぜ発生したのか?』『なぜ流出したのか?』『なぜその担当者はミスをしたのか?』というように、『なぜ?』を何回も繰り返すことで「今まで最善の対策方法と考えていたが、実はもっといい方法があった」と新たな発見につながります。

製造業における『カイゼン』とは

『カイゼン』とは、現場の作業者が中心となって意見や知恵を出し合うことで、工場の効率性や安全性の確保を見直す活動のことを言います。この『カイゼン』という考え方は日本の製造業界で誕生したもので、今では海外の製造業界においても『Kaizen』と呼ばれ重要視されています。

『カイゼン』を行うことは企業の発展に大きく影響すると言われているのですが、その大きな理由として以下のような3つの向上があることがあげられます。

  • 品質向上:仕事のプロセスの質を向上する
  • 顧客の信頼度向上:素早い対応で信頼を確保する
  • 人材の質向上:カイゼンで人を育てる

カイゼンを行うことで品質が向上し、そうすることで不良が減るので顧客からの信頼度が上がります。そして、カイゼン自体は作業者や管理者など関わる人全員で意見を出し合うので、自然と人材の成長に繋り、最終的には企業の発展に大きく影響するのです。

つまり、『カイゼン』とは「単純に、生産性や品質を高める」ことではなく、「全従業員が一体になって問題発生を最小限に抑える仕組みを作ることで、品質・顧客・人材の質を高め企業全体の質を向上する」ことになります。

基本的に分析シートの作り方は自由です。このため、会社によって『なぜ?』の後に何を重要視するかで表の作り方を変えた方がいいでしょう。

例えば、解決策が重要なら解決策の案を複数出せるように広めの枠を取ったシートにしたり、『なぜ?』をたくさん挙げることが需要なら『なぜ?』の枠を増やしたりして企業の不良対策などの特徴に合わせて作成します。

ちなみに、以下はサンプルとして作成した分析シートなので、参考にしつつ自社のオリジナル分析シートを作ってみてください。

なぜなぜ分析シート

なぜなぜ分析シート

『なぜなぜ分析』は正しい手順を踏んで分析を行っていかないと、問題に対する正確な原因を追究することができません。『なぜ?』を5回繰り返すだけの簡単な作業に見えますが、何に対して『なぜ?』を繰り返しているのかを把握しておかないと結果的に見当違いな対策を立てていることになってしまいます。

初めて『なぜなぜ分析』を行う方は、まず以下の手順を参考にしてください。

【なぜなぜ分析の手順】
  1. 分析対象の設定
  2. 『なぜ?』を繰り返して原因を洗い出す
  3. 解決策を設定する

手順を知っておくことですべての問題に対して、安定した原因追及をすることができます。手順がバラバラだと対策の質にムラが出てしまうので、手順は会社内で固定しておくことをおすすめします。

分析対象の設定

『なぜ?』を追求する対象の設定は具体的にする必要があります。なぜなら、抽象的で漠然とした設定を行うと、『なぜ?』の内容も同じように抽象的な内容になってしまい、本質的な原因にたどり着けない可能性が高まるからです。

そのため、分析対象を設定するときは『5W1H(何が・誰が・いつ・どこで・なぜ・どのように)』を意識して分析対象の具体性を高めていくことが重要です。

また、分析対象を設定したら文字に起こして一緒に検討する担当者全員と内容を共有できるようにしましょう。そうしないと、口頭だけで分析対象を話し合った場合、担当者間で認識のずれが発生する可能性があります。

『なぜ?』を繰り返して原因を洗い出す

分析対象の設定が完了したら、その対象に対して『なぜ?』を繰り返していきます。

基本的に『なぜ?』の繰り返しは5回とよく言われますが、なぜなぜ分析の最終目的は根本的な原因の追究なので、そこまでたどり着ければ2回でも問題ありません。

なぜなぜ分析の具体例

なぜなぜ分析の具体例

このように、『なぜ?』を繰り返すことで、問題の根本的な部分へ追及を重ねていくのです。

解決策を設定する

『なぜ?』を繰り返した末にたどり着いた根本的な原因に対して解決策を設定します。

たとえば、ひとつ前で行ったなぜなぜ分析で出た根本的な原因は『配送待ちの荷物を置いておく場所が定められていなかった』ことでした。これに対して適切な解決策を設定すると、『配送待ちの荷物を置いておける固定の荷物置き場を作る。ただし、安全が確保できる場所とする』となります。

もし、これが『なぜ1』の段階で解決策を設定すると『現場入り口付近を整理整頓するように心がける』にとどまってしまい、荷物が増えた際にまた同じことが起きる可能性が残ってしまいます。なので、根本的原因までなぜを追究することが重要なのです。

また、解決策設定時の注意点として、解決策は属人的なものにならないようにしましょう。『作業員が真剣に取り組んでいなかったので厳重注意をする』や『作業員が腕をケガしていたため、ケガが治るまで休職とする』といった解決策は、他の作業者でも同じようになる可能性が高いので根本的な解決策とは言えません。

『なぜなぜ分析』をする際のコツとして以下の4つを意識すると、より有意義な分析を行うことができます。

  • 問題発生の裏には数百もの要因があることを前提に原因追求する
  • 分析対象は具体的にする
  • 『なぜ?』の回数にこだわらない
  • 感情的な内容で原因追求をしない

『なぜ?』を追求するにあたり、初めはどんな結論になるか予想もつきません。なので、深堀すればするほど多くの要因が出てくる可能性があることを踏まえて原因追及をしてください。

問題発生の裏には数百の要因があることを前提に原因追求する

ある問題が発生した際は、その問題に対する対策を考えるために『なぜなぜ分析』を行います。この時に重要なことは『1つの問題発生の裏には数百の要因があり、それらが積み重なって問題が発生したということを前提に分析作業を行う必要があるということです。

これをハインリッヒの法則といい、1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハットが隠れているというものです。

ハインリッヒの法則でも言われているように問題には数百の隠された要因があります。それらを認識できるようにする作業がなぜなぜ分析です。

分析対象は具体的に

分析対象は具体的に文字としてまとめることで『なぜ?』の質が高まると同時に、担当する全員が問題に対する認識の統一が行えるのでなるべくわかりやすく且つ具体的にするようにしましょう。

対象を抽象的で漠然とした内容でまとめてしまうと、『なぜ?』に対する解決策も漠然としたものになりやすく、根本的な解決に繋がらない可能性が高まります。以下の具体例を参考に、何が良くて、何が悪いのか確認してください。

【悪い例】
  • 客先に送る商品を間違えた
  • 先月の売り上げが低かった
  • 作業者が組み立て方法を間違えた
【良い例】
  • 本来送るはずの商品は〇〇だったが、間違えて△△を送ってしまった
  • 先月の売り上げ目標は〇〇万円だったが、△△%下回る××万円となってしまった
  • 作業者が○○商品の組み立てを作業書通りに行わず違う組み立て方法で行ってしまった

数字(日付・個数・人数)などが分かる場合は細かく数値を記載して、作業の標準化を図る資料があるようであればそれも記載するようにしましょう。

『なぜ?』の回数にこだわらない

大前提として押さえておくべきことは、『なぜを繰り返す本質は、問題の根底にある原因を追求するため』です。

このことから、原因を追究できれば『なぜ?』の回数が1回でも10回でも問題ありません。あくまでも一般的に「5回で原因追及が可能」と言われているだけで、問題の規模や重要度によって回数は変化します。そのため、無理に回数を増やそうと意識するのではなく、『根本的な原因に近づいたか(到達したか)?』を意識して分析を行うことが重要です。

属人的な原因の追求をしない

『作業員によってミスが起きたので原因は作業員にある』という風に、人を疑うだけで終わるような原因の追究をしないようにしましょう。作業員のミスのせいにした原因追求は、その作業員の意識を変えるだけで良くなるので会社としては対策がラクになりますが、会社全体での成長に繋がりません。

あくまでも、根本的な原因は『作業員がミスをしてしまったのはなぜか?』というところにあることを意識しましょう。つまり、人ではなく『組織・仕組み・環境』など人以外のところに原因があるのではないかと疑って『なぜ?』を深堀することが重要です。

『属人的な原因追及をしない』という点について触れましたが、その理由として『人のミス(=ヒューマンエラー)には感情が入り込みやすい』ということが挙げられます。

『なぜなぜ分析』では客観的に原因追及をすることで、どんな状況においても問題が再発しないようにすることができます。それなのに感情が入り込んでしまうと「あの人のせいで問題が発生した」などのように、原因の追究ではなく個人に感情が向いてしまいます。

そうならないためにも、なるべく多くの人を交えて『なぜ?』の追究をして意見を出し合う、という考え方が重要になってきます。

また、社内の人間だけで分析を行っても感情が入り込んでしまう可能性があると懸念する場合は、中小企業診断士のような外部の人に分析を依頼するのも一つの方法です。

『なぜなぜ分析』は製造業において、問題の再発を防ぐための検証方法として最も効率的な方法です。

問題の再発を防ぐには根本的な原因を特定して対策を立てる必要があるのですが、その特定する原因が適切なものでないと効果的な対策方法を得ることができません。なので、適切な原因を追究するために正しい手順を知っておかなくてはなりません。

また、よくありがちなミスとして原因追及時に感情が入り込み『作業員のミス』を作業員自体の責任としてしまうことがあります。これをしてしまうと、問題が再発する可能性が高くなるだけでなく企業の成長に繋がらないというデメリットがあるので、なるべく多くの人数で検証したり、外部の人に検証の依頼をしたりすることで客観的な原因追及が行うようにしましょう。